佐々木税理士事務所

2018年度診療報酬プラス改定の恩恵とは?

18.01.05
業種別【医業】
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昨年末、2018年度診療報酬改定の本体改定率が+0.55%に決定しました。
これは、2016年度改定の+0.49%を上回ります。 

社会保障費の伸びを抑えるため、財務省や経済界はマイナス改定を主張していました。 
しかし、団塊の世代が後期高齢者になる2025年に向け、医療従事者の人件費確保や地域医療の充実の観点から、前回を上回るプラス改定が不可欠と判断されたようです。
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プラス改定の恩恵には偏りが 

医療報酬がプラス改定されたものの、+0.55%(600億円)のプラス分がすべての医療機関へ平等に配分されるわけではありません。 

診療所の収入のベースとなる基本診療料に関して、1998年から2016年の約20年の推移を見てみると、初診料は270点から282点へと12点増加していますが、再診料は74点から72点へと減少しています。 

国が描く医療提供体制の構築、あるいは推奨する診療等に積極的に取り組んでいかないと、プラス改定の恩恵を受けることはできないのです。 

そこで、昨年末までの中央社会医療協議会(以下、中医協)の議論や資料をもとに、2018年度改定のインパクトが大きい3項目について、見ていきましょう。 


①生活習慣病の重症化予防を推進 

まず、診療所にとって大きなトピックは“生活習慣病の重症化予防”です。 
糖尿病や高血圧などの生活習慣病が外来患者の2割を占めているのに加え、生活習慣病を引き金とした“心・脳血管障害、腎不全などの合併症”の増加が、日本の医療費を押し上げる元凶となっています。 

今回の改定では、この生活習慣病の重症化予防を推進するため、現在は記載欄のない“血圧の目標値”や“特定検診・特定保健指導の受診勧奨等”を『生活習慣病管理料の療養計画書』に盛り込み、さらに『ガイドラインやデータに基づく診療支援』を算定要件に加え、同管理料を見直していく方針です。 

中医協の議論では、診療側・支払側ともに異論がなかったことから、管理料の引き上げなど何らかの形で評価されていくのは、ほぼ確実です。 
特に特定検診・特定保健指導の受診勧奨は、保険者よりも医師からの勧奨のほうが患者に響くため、医師と保険者のより密な連携が今後求められてくるでしょう。 

なお、生活習慣病の重症化予防では、専門医との連携を評価する案も出されています。 


②かかりつけ医の普及のために 

厚生労働省が推進する地域包括ケアシステムの構築を進めていくうえで、かかりつけ医の普及・定着は欠かせません。 
その要となる点数が『地域包括診療料・認知症地域包括診療料』と『地域包括診療加算・認知症地域包括加算』ですが、2016年7月現在の届出施設数は前者が171施設、後者も5,238施設にとどまっています。 

日本医師会が行った、かかりつけ医に関するアンケート結果では、診療所に負担の大きい業務として、 
①在宅患者に対する24時間対応 
②患者に処方されているすべての医薬品の管理 
③患者が受診しているすべての医療機関の把握 
がトップ3を占め、いずれも上記点数の算定要件となっています。 

このため、今回の改定ではこれらの要件を緩和し、地域包括診療料等の届出を容易にしていくことが見込まれています。 

これらの点数が示すように、国は“重複受診や多剤投与の抑制”に力を入れています。 
自院だけでなく、患者一人ひとりの受診や処方の状況を確認していくことが、地域医療の最前線に立つ診療所に求められているといえます。 


③遠隔診療も評価していく方針 

最後は、ICTを駆使した遠隔診療に対する新たな点数の新設です。 
厚労省は“働き盛り世代で通院が難しい生活習慣病の患者”や“在宅療養が中心で通院が困難な患者”への遠隔診療を評価していく方針です。 

ただし、対面診療の原則は崩さず、あくまで“計画的な診察であること”などの要件を課し、点数も対面診療時の医学管理料よりも低く設定することが見込まれています。 

とはいえ、対面診療と遠隔診療を上手く折り合わせることで、生活習慣病患者の受診中断防止や患者の重症化予防、患者数の減少を食い止める切り札になるとも期待されています。 

現代は、スマホやアプリの普及で遠隔でも簡便にお互いの顔を見ながらコミュニケーションが図れる時代です。 
こうしたICTの進展で診療のスタイルやあり方は今後も変わり続けていくでしょう。 



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