佐々木税理士事務所

逆紹介が地域連携の要に

14.05.11
業種別【医業】
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これまでの「地域連携」といえば、
入院や高度医療が必要な患者さんを、
開業医が病院に紹介するという形が主なものでした。
しかし、これからは「逆紹介」が連携の主役です。
 
今後、地域の病院の急性期病棟が減少すると、
慢性期に移行しつつある患者さんが
自宅や施設に移ることになります。

しかし、これは病院スタッフにとって
なかなか大変な労力がかかりそうなのです。
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選ばれるクリニックへのナビゲーション

そもそも長期入院に至る理由のひとつとして、
家族の退院への同意が得られないことが挙げられます。
病院としては早く退院してベッドを空けてほしい。

しかし、家族は自宅介護には不安があり、施設にも空きがない。

双方の思いに隔たりがあると、家族は「病院に追い出された」
「ここではもう診てくれないようだ」
と不満を募らせるばかりでコミュニケーションに支障をきたし、
退院調整はますます難航します。

家族が退院に抵抗する背景としては、
「自宅介護」という「未知」への不安が大きいのです。

特に患者さんが高齢の場合、概ね家族もまた高齢者。

体力的な不安、急変時にどうしたらいいのか、
何かあったらひとりで対応できるのか。
日本人の性格上、決して口に出すことはなくても、
「死」への恐怖が頭をよぎります。

自宅で最期を迎えたいと思う人が多くても、
家族には「最期は病院で」と考える人が少なくないのは、
未知なる「死」への恐怖だと言ってもよいかもしれません。

不安から、自宅介護に踏み出せずにいる家族にとって、
往診をしてくれるクリニックの存在は非常に心強いものです。
実際の往診回数がそう頻繁でなくても、
いざという時に相談できる人がいるという安心感は、
何にも代えがたい救いになります。

できれば、
クリニックの医師が病院の退院調整カンファレンスに参加し、
患者さんや家族と事前に会う機会を得られれば、
現在の病院との連携が家族にも伝わり、安心が得られます。

そして、家族が首尾よく退院に同意すれば、病院には喜ばれる。

つまり、クリニックは病院から感謝されつつ逆紹介を受けるという、
非常に有利な連携関係をつくることができるのです。
 
ただ、スムーズにいかないケースも当然あります。
東京都内のある急性期病院の医師の話では、患者さんが高齢の場合、
患者さんの治療にかかわろうとしない家族が多いそうです。

見舞いにも来なければ、
主治医が説明したいと電話で呼び出しても
「お任せします」というだけで病院には来ない。
そんな家族が「7割方」だと、医師は怒り含みに話していました。

家族が無関心では退院調整も何もあったものではありません。
急性期病院にとっては頭の痛い話になりそうです。


次回の「選ばれるクリニックへのナビゲーション」は、
「規制緩和は集患のチャンス」をお届けします。


[プロフィール]
中保 裕子(なかほ・ゆうこ)
医療ライターとして全国のがん医療、地域医療の現場を中心に医療者、患者、家族へのインタビューを行うほか、新聞広告等での疾患啓発広告制作、製薬企業等のマーケティング調査の実績も多い。有限会社ウエル・ビー 代表取締役。 
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