税理士法人笠松・植松&パートナーズ

作業員の『不安全行動』に注意! 防ぐために事業者ができること

24.06.04
業種別【建設業】
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建設現場における事故は、その多くが作業員の『不安全行動』に起因します。
不安全行動とは、作業員が本人や仲間などの身に危険が及ぶような行動を意図的に行うことです。
その多くは「このくらいは大丈夫だろう」「面倒くさい」「作業を早く終えるためには仕方がない」といった気の緩みなどから起きてしまいます。
また、不安全行動は作業員だけの問題ではなく、不安全行動を起こしてしまう環境や管理・監督ができていない事業者側の問題でもあります。
不安全行動を防ぐために、事業者として何ができるのか、考えていきましょう。
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建設現場での労災事故は減りつつあるが……

建設業における2023年の死亡災害の死亡者数は、厚生労働省の報告によると212人と、前年の272人と比べて、22%ほど減少し、過去最少となる見込みです。
一方で、依然として全産業のなかでの死亡割合は高い数字を示しており、同年には一度に多数の労働者が被災する重大な事故もいくつか発生しています。

こうした建設現場での事故をなくすためには、作業員が故意に本人や関係者の安全を脅かす『不安全行動』を防ぎ、機械や資材の『不安全状態』を解消することが大切です。
不安全状態とは、建設現場の機械や資材などが事故の発生しやすい状態にあることを指し、たとえば、安全装置が壊れていたり、危険な場所に置かれていたりといったケースが該当します。

実は、建設現場における事故は、この不安全行動と不安全状態によって引き起こされるものがほとんどです。
少し前のデータですが、2010年に厚生労働省が公表した『労働災害原因要素の分析』によれば、労働災害の発生原因として最も高かったのは、「不安全行動及び不安全状態に起因する労働災害」で、94.7%でした。
一方で、「不安全行動のみに起因する労働災害」は1.7%で、「不安全状態のみに起因する労働災害」も2.9%と、割合としては決して高くありませんでした。
このことから、不安全行動、不安全状態のそれぞれが単独で事故を引き起こすのではなく、作業員が不安全行動を取ることで、機械や資材が不安全状態となり、その結果として事故が発生するという、不安全行動と不安全状態が密接に結びついていることが推察できます。

労働災害が起きてしまうと、事業者は作業員から損害賠償請求をされたり、行政処分を受けたりする可能性があるばかりか、場合によっては刑事罰や社会的信用度の低下などのダメージを受けることもあります。

不安全行動が起きてしまう要因とは

厚生労働省は、不安全行動の類型として、以下の12項目をあげています。

(1)防護・安全装置を無効にする
(2)安全措置の不履行
(3)不安全な状態を放置
(4)危険な状態を作る
(5)機械・装置等の指定外の使用
(6)運転中の機械・装置等の掃除、注油、修理、点検等
(7)保護具、服装の欠陥
(8)危険場所への接近
(9)その他の不安全な行為
(10)運転の失敗(乗物)
(11)誤った動作
(12)その他

これらの不安全行動は、なかでも新規入場者や業者の出入りの激しい現場で、特に起きやすいとされています。
新規入場の現場ではどうしても慌ててしまい、意識も散漫になり、その多くの行動を「不安全行動だと思わずにやってしまう」傾向にあります。
出入りする人が多ければ必ずしも管理・監督が行き届くとは限らず、不安全行動について咎めることのできない状況が起きてしまいがちです。

ほかにも、雨が降っていたり、暑さや寒さが厳しかったりといった『作業環境』が悪い現場や、整理整頓がなされていなかったり作業工程に無理があったりする『組織』に問題がある現場、単調作業が続いたり不慣れな作業を任されたりする『作業方法』が適切ではない現場などで、不安全行動は起こりがちです。

こうした現場では、どうしても作業員に「いつもやっているから」「あいつもやっているし」「急いでいるから」「慣れているから大丈夫」などの気持ちが生まれやすく、不安全行動につながってしまいます。

不安全行動は、一つの要因によって引き起こされるというよりも、作業環境や組織、作業方法といった複数の要因が絡み合って起きてしまうものです。
事業者として不安全行動を防ぐためには、建設現場における教育・指導・管理・監督を徹底し、不安全行動が起きる雰囲気を作らないことが重要です。
また、作業現場における良好な人間関係の構築や、労働時間や休憩などを含めた労働条件の適正化にも取り組んでいかなければいけません。

作業工程にゆとりがあり、整理整頓がされ、作業員同士が声をかけあえる現場では、ほとんど不安全行動が起きることはないでしょう。
事業者は絶対に労働災害を起こさないという強い意思で、作業員の不安全行動を防いでいきましょう。


※本記事の記載内容は、2024年6月現在の法令・情報等に基づいています。