税理士法人笠松・植松&パートナーズ

もし『カスハラ』を受けたら? 事前に考えておきたい対応策

21.08.24
ビジネス【企業法務】
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2021年6月に、男性2人組が東京の亀戸にある24時間営業の弁当屋に来店し、店員を怒鳴ったり、小銭を投げつけたりする様子が動画で配信され、大きな話題になりました。
近年、このような『カスタマーハラスメント』(以下、カスハラ)がたびたび話題に上っています。
企業としては、万が一従業員がカスハラ被害に遭ったときのため、対応策を考えておいたほうがよいでしょう。
今回は、カスハラとはどのような行為を指すのか、基本となる対応策はどのようなものかについて、説明します。
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どのような行為がカスハラにあたるか

カスハラとは、顧客や取引先からの度を越した理不尽なクレームや嫌がらせ、迷惑行為などを指します
たとえば、以下のような悪質な行為がカスハラにあたります。

●従業員に対して暴言を吐く、暴力をふるう
●従業員に危害を加えることをほのめかす
●会社や店舗を荒らす
●些細なミスに対して慰謝料などの名目で金銭を要求する
●従業員を長時間拘束してクレームを言い続ける
●クレームを誇張して「ネットに書くぞ」などと脅す
●土下座を強要する

通常のクレームであれば、まずは事実確認を行って自社に非があるかどうかを判断し、非がある場合は謝罪をして、問題の解決案を提案するでしょう。
しかし、正当な抗議の限度を超えるカスハラは、このフローで対処できる範疇をはるかに超えています。


カスハラは犯罪行為にあたることも

カスハラは、ケースによっては犯罪行為にあたることもあります。

たとえば、「お前の顔と名前は覚えたからな。痛い目に遭わせてやる!」などと叫ぶのは、脅迫罪にあたる可能性があります。
脅迫罪は、生命や身体、自由、名誉、財産に害を加えると伝えて相手を脅迫した場合に成立し、該当すると、2年以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられます
相手を直接脅して恐怖を与える行為のほか、机を叩いたり大声を出したりする威嚇行為も、その状況によって相手方が恐怖を感じるであろう場合には脅迫罪にあたる可能性があります。

また、「ネットに悪評を書き込まれたくなかったら慰謝料をよこせ!」などは、恐喝罪にあたる可能性があります。
恐喝罪は、暴力や脅迫で相手を怖がらせ、金品を脅しとった場合に成立し、該当すると、10年以下の懲役が科せられます

ほかにも、暴力や脅迫で従業員に土下座や謝罪文など義務がないことを行わせるのは強要罪にあたり、該当すれば3年以下の懲役が科せられますし、迷惑行為などが公然と誇示されることによって、店の従業員の意思が圧迫を受けて業務が妨害されるのは威力業務妨害にあたり、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。


カスハラを想定した対応策を考えておく

万が一、カスハラ被害に遭った場合に備えて、従業員には、カスハラは極めて犯罪行為に近いことを知っておいてもらいましょう
そして、事前に対応策を決め、従業員に周知しておくことが大切です。
相手の要求をのまない、署名などは絶対にしない、すぐに上司と連絡をとる、場合によっては警察に連絡するなど、カスハラを受けた際の行動を決めておけば、従業員もパニックになることなく対応できるでしょう。
また、従業員に一人で対応させない仕組みづくりも重要です。

もし、それほど緊急性が高くない場合には、毅然とした態度で対応し、法的な手段に訴えるための証拠を残しておくという方法もあります。
たとえば、スマホの映像や録音した音声などは有力な証拠になりますし、小売店などであれば、前もって監視カメラを設置しておくのも有効です。
その証拠品をもとに警察や弁護士に相談して対応を考えていきましょう。

カスハラが犯罪行為に該当するかどうかは個々のケースによって判断が分かれますが、犯罪行為に極めて近い行動であることは間違いありません。
経営者としては、いざというときに適切な対応ができるよう、対策を講じておくことが望ましいでしょう。


※本記事の記載内容は、2021年8月現在の法令・情報等に基づいています。