税理士法人笠松・植松&パートナーズ

家族への給料を経費にできる『事業専従者控除』と『青色事業専従者給与』

20.11.24
ビジネス【税務・会計】
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個人事業主が従業員を雇用した場合、その従業員に支払った給与は『給料賃金』として経費計上することができます。
ただし、給料を支払う相手が自分の家族である場合は、原則として経費計上ができません。
しかし、これには例外もあり、家族を『事業専従者』にする場合は、家族の給与を経費で落とすことが可能になります。
今回は、家族を専業従事者にするための条件や、手続きの方法などをご紹介します。
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原則、家族への給与は経費計上できない

個人事業主への所得税は累進課税制といって、所得金額が多ければ多いほど、税率がアップしていきます。
現在、年間の課税される所得金額が195万円以下なら所得税率は5%、195万円を超え330万円以下なら10%、330万円を超え695万円以下なら20%といった具合に増えていき、年間で4,000万円を超える所得があると、その税率は45%にもなります。

一方で、個人事業主は事業に関わる支出を必要経費として計上することによって、所得金額を下げることができます。
たとえば、事業に使用するインターネット料金などは『通信費』、顧客との飲食代などは『接待交際費』として必要経費として計上できます。

そして、従業員などを雇用した場合も、その給与を『給料賃金』として計上できるのですが、家族への給与は税法上で制限がかけられています。
家族に支払っている給与は、税金逃れなどを防止する観点から、原則として必要経費として計上することができないのです。

ここでいう家族の範囲とは、『生計を一にする親族』のことで、民法上は血のつながりのある6親等内の血族、配偶者、婚姻によって親族となった3親等内の姻族のことを指します。
たとえば、自分の従兄弟の子どもは5親等なので範囲に含まれますし、自分の配偶者の甥姪の配偶者は親族等に含まれないので範囲に含まれません。
また、生計を一にするとは、日常生活を送るうえでの家計を共有していることで、たとえば、大学生の子どもに仕送りをしている場合や、親に生活費を援助している場合なども、この条件に当てはまります。


家族を『事業専従者』にすれば経費にできる

生計を一にする親族への給与は基本的には経費計上できませんが、家族を『事業専従者』にすれば、控除を受けられる又は給与とすることができるという例外があります。
確定申告の際に白色申告にするか、青色申告にするかで条件は変わってくるので、それぞれ確認していきましょう。

(1)白色申告の場合
対象となる家族が、その年の12月31日時点で15歳以上であり、その年を通じて6カ月を超える期間、個人事業主が営む事業に従事している必要があります。
この条件を満たしており、確定申告書の所定の欄に適用金額などを記載することで、『事業専従者控除』が摘要され、経費として給与を計上できるようになります。
ただし、白色申告の場合は限度額が決められており、下記の2つのどちらか、低い金額が摘要されます。

●配偶者は86万円。その他の親族は1人50万円
●控除をする前の事業所得等の金額を『専従者の数+1』で割った金額

(2)青色申告の場合
青色申告の場合も、条件は白色申告の場合と同じですが、家族への給与は『青色事業専従者給与』となり、限度額は税務署へ届けた金額の範囲内となります。
たとえば、500万円で届け出ていれば、家族への給与は『青色事業専従者給与』として500万円まで経費として計上できることになります。
ただし、ほかの従業員の給与や、同業他社の給与と比較して、著しく金額に乖離があった場合には、青色事業専従者給与とは認められないので注意しましょう。

また、青色事業専従者給与として家族への給与を経費計上するには、青色事業専従者給与を算入しようとする年の3月15日までに納税地の税務署長へ『青色事業専従者給与に関する届出書』を提出しておく必要があります。
届出書に記載されている方法により支払われ、しかもその記載されている金額の範囲内で支払われたものであること、労働の対価として相当であると認められる金額であることも必要です。
なお、過大とされる部分は必要経費とはなりません。

このように、家族の給与を必要経費として計上できる事業専従者控除や青色事業専従者給与について注意したいのは、確定申告の際に、扶養者控除や配偶者控除などと併用できないことです。
せっかく家族への給与を必要経費として計上できたのに、実は配偶者控除などのほうが控除額が大きかった、ということにもなりかねません。
どの控除が自分にとって一番節税になるのかをよく考えたうえで、制度を活用していきましょう。


※本記事の記載内容は、2020年11月現在の法令・情報等に基づいています。