税理士法人笠松・植松&パートナーズ

相続手続の前に、遺言の有無を明らかにしておこう

20.11.02
業種別【不動産業(相続)】
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もしも家族の誰かが亡くなったら、残された相続人たちで相続手続を進めていかなくてはなりません。
その際、亡くなった方が遺言を残していた場合は、原則として遺言の内容に従って相続手続などを行います。
遺言により、法定相続分とは違う割合で相続をさせたり、相続人以外の者に財産を残したりすることができるため、遺言の有無は手続をどのように進めるかを決めるうえで重要なものです。
そこで、今回は遺言があるかどうかの探し方とともに、見つかった場合にどのような対応が必要となるかについて、解説します。
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遺言をどのように探せばよいか

被相続人が遺言を残してはいるものの、遺言を作成したことや、その保管場所などについて、事前に誰も聞いていないケースがあります。

遺言があるかどうか知らされていない場合でも、“遺言が残されている”ということは考えられますので、そのような場合は、まず、被相続人が大切なものを保管していそうな場所を探してみましょう。
被相続人が貸金庫の契約をしていた場合は、貸金庫内に遺言が保管されているといった場合もあります。

また、公正証書遺言の形式で遺言が残されている場合は、作成をした公証役場に原本が保管されています
相続人であれば、最寄りの公証役場で遺言の有無を検索することができますので、念のため調査しておきましょう。
遺言検索を行う場合には、遺言を残した人が亡くなったことを確認できる除籍謄本と、検索をする人が相続人であることを確認できる戸籍謄本などが必要になります。

なお、2020年7月から新しく『法務局における自筆証書遺言の保管制度』が始まりました。
現状では、まだ、この制度を利用して自筆証書遺言を法務局に預けているという人は多くないと思われますが、相続人は、公正証書の場合とほぼ同様の添付書類(除籍謄本や戸籍謄本など)とともに法務局に請求をすれば、自筆証書遺言が預けられているかどうかを確認することができます


遺言が見つかったらまずどうする?

調査等の結果、遺言書が見つかった場合、その後はどうすればよいでしょうか?
これは、遺言の種類等によって対応が変わってきます。

まず、公正証書遺言以外の形式の遺言(自筆証書遺言など)は、その遺言を保管していた人や発見した相続人が、家庭裁判所に遺言書を提出し、『検認の手続』をしなければなりません。
検認とは、相続人に対し遺言の存在・内容を知らせるとともに、検認の時点における遺言書の形状・状態、記載内容を確認・記録するための手続です。
検認手続が終了すると検認済みの証明書が出され、その遺言に基づく相続の手続を行うことができるようになります。

一方、公正証書遺言の場合は、この検認の手続が不要です。
なお、前述の法務局における自筆証書遺言の保管制度を利用した場合は、自筆証書遺言であっても検認が不要になりました。
また、この場合、相続手続を行うための証明書は法務局が発行してくれます。


遺言の効力を否定されることもある

注意したいのは、検認手続を経たことや遺言の保管制度を利用したことは、遺言の具体的な内容や形式の有効性を保証するものではないということです。
そのため、遺言の文言に問題がある場合などには、遺言の効力自体が否定され、その遺言に従って、相続登記などの実際の相続手続を実行することができないという可能性もあります。

また、公正証書遺言が残されており、相続手続自体は実行できたとしても、遺言者が認知症などによって遺言能力がなかった場合などは、遺言の有効性が争われ、事後的に遺言の効力が否定されることもありえます。

これではせっかく遺言を作成しても、遺言者の希望どおりにならなくなってしまいますし、不完全な遺言の存在が相続人同士の争いを助長してしまう結果にもなりかねないので、作成した意味がなくなってしまいます。

そのような事態を避けるために、遺言を作成する際には、「法律上要求される形式的要件を満たしているか」「その遺言の文言で、紛争を回避できるか」「思ったとおりの相続を実現できる内容となっているか」などの観点から、専門家のチェックを受けておく必要があるでしょう。
自分が残した遺言によって家族が困らないよう、確実な手続をすることが大切です。


※本記事の記載内容は、2020年11月現在の法令・情報等に基づいています。