税理士法人笠松・植松&パートナーズ

遺言は『争族』の始まり!? トラブルを生みにくい遺言状の残しかた

20.09.01
業種別【不動産業(相続)】
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相続に関する問題として、遺言書が残されているにもかかわらず相続人の間で揉めてしまい、『争族』に発展してしまったという話をよく聞きます。
被相続人としては、自分の死後、家族が揉めることのないようにと、遺言書を作成したつもりだったのかもしれません。
しかし、その内容によっては、遺言書があるばかりに相続人同士の感情的対立が高まり、トラブルに発展することもあるのです。
今回は、『争族』に発展しにくい遺言書の書き方について考えていきましょう。
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なぜ遺言書がトラブルの種になってしまうのか

自分の生活の面倒を看てくれたり、入所先の施設に定期的に通ってくれたりした家族には、その労をねぎらうためにも、ほかの相続人よりも多めに財産を遺したいと思うのは自然なことのように思えます。
しかし、そういった私情で遺す財産に差をつけてしまっては、ほかの相続人の立場からすると、「自分もできる範囲で手伝っていたのに、なんであいつだけが優遇されるんだ!」「もしかして、父が弱っているのに便乗して、無理やり遺言書を書かせたんじゃないのか?」などの邪推をするのに十分な材料を与えることになります。

そうならないようにと、遺言書の付言事項に「〇〇さんの労をねぎらって」と記載したり、遺言書の別紙として、ほかの相続人には財産を遺さない理由や気持ちを書いた手紙を添付するなど、工夫を凝らした遺言書も多く見られます。
ところが、そこでの書き方を誤ると、邪推をきっかけにした『争族』への発展に追い打ちをかけてしまう可能性があるのです。
どんな理由があれ、特定の人が優遇される遺言書は、「こんな遺言書は無効だ!」と言い争いになったり、「おまえだって昔こんなにお金をもらっていたんだから」と過去にまで遡って問題を大きくしていくことになりかねません。


遺言書は生前の関係性を重視した書き方を

遺言書をきっかけとしたトラブルを防ぐ方法として一番のおすすめは、日頃から、将来相続人となり得る家族や親族全員とコミュニケーションを取り、誰にどのような財産を遺すかについて自分の意思を直接かつ何度も伝えて、理解を求めることです。
その意思が、たとえ『ほかの相続人』の気分を害するものであったとしても、相続が開始した段階で、生前に予告していたとおりの内容の遺言書が出てきたら、誰しもが異論を唱えづらいものです。

しかし、諸事情によってコミュニケーションが取りづらいことや、疎遠な家族がいるということもあるでしょう。
そういう場合は、遺言書に付言事項や別紙を添えることになりますが、そこでも、書き方に注意と工夫が必要です。

特定の相続人の労だけを評価し、その人に財産を遺す理由だけを書いて内容を終わらせてしまっては、ほかの相続人に「私の労はなぜ無視されているの? なぜ私には財産を遺さないの?」という疑問を抱かせるだけになってしまいます。
また、ほかの相続人に財産を遺さない理由として、罵詈雑言を並べて終わるというのも、よろしくありません。
「遺言書にこの内容はおかしい。無理やり書かされたのでは?」というような疑念につながってしまいます。

遺言書や手紙には、相続人一人ひとりに対して生前の関わりに応じたメッセージを残し、自分の意思に理解を求める内容を記載しておくのが望ましいでしょう。
文章で伝えられる情報には限りがあり、誤解を招きやすいからこそ、きちんと『筆舌を尽くす』という努力が必要になるのです。

被相続人の理想通りに遺言書を作成すれば終わりというわけではありません。
日頃のコミュニケーションこそが、まさに『争族』対策の一つであり、遺言書は、その結果を法的に有効にするための手段に過ぎないということを理解しておきましょう。


※本記事の記載内容は、2020年9月現在の法令・情報等に基づいています。