税理士法人笠松・植松&パートナーズ

待ち時間短縮だけではない? “時間予約制”導入のメリットとは

19.07.02
業種別【医業】
dummy
外来患者が抱く不満のトップは“診療や会計の待ち時間の長さ”だといわれています。 
そのため、同じような規模や医療サービスの医院がある場合、患者は当然、待ち時間の少ないほうに流れてしまいます。
そこで、検討したいのが“時間予約制”です。
診察時間を事前に決めておけば、患者の待ち時間を短縮できる以外にも、さまざまなメリットが得られます。 
今回は“時間予約制”システムのメリットと具体的な活用例について、紹介します。
dummy
医院に合った予約システムの導入を

予約システムには大きく分けて、当日来院した順に予約を受け付け、その順に診察していく“順番予約制” と、任意の時間を決めて予約を受ける“時間予約制”の2つがあります。 
このうち時間予約制は導入を躊躇されることの多いシステムです。
多くの患者は予約なしで来院しますし、各患者の症状は診てみなければわからず、所要時間が特定できないためです。
「せっかく予約したのに、ほかの患者の診察が長引いて結局長く待たされた」
「予約なしで行ったところ、順番がなかなか回ってこず、この日は診察を断念した」
これでは患者の不満は募る一方です。 
完全な時間予約制とするのは、医院という場所の性質上、現実的ではありません。
ではいったい、どのような解決方法があるのでしょうか? 


 おおまかな時間帯の予約で患者数を調整

神戸市須磨区の内科医院での導入例を紹介します。
こちらの医院では通常、週明けの月曜、仕事帰りの人が多い平日午後、そして土曜の診察が混雑します。
また、混雑時に医院の駐車場に停められない車が近隣に路上駐車をしてしまい、近隣住民などからのクレームの原因にもなっていました。 
そこで、厳密な時刻ではなく、おおよその時間帯を予約できる“時間帯予約制”を導入し、混雑する時間帯の予約は30分あたり1人とし、空いている時間帯の予約は30分あたり3人に設定しました。
そして、予約優先であることと混む時間帯を患者に周知しました。
その結果、時間に余裕のある人を空いている時間帯に誘導でき、スムーズな診察が可能となったのです。 
この場合、非予約の患者が来ることも想定して時間帯予約の患者の枠を設定し、大まかな時間帯のみを指定したことが成功のポイントとなりました。
医院に合った予約システムを導入するメリットは、待ち時間の短縮に限ったことではありません。 
この例のように、時間帯によって波のある患者数を調整できれば、医院にとって大きな利点があります。 
混雑しているときの診察は、医院のキャパシティーを超えた状態です。 
患者はもちろん、何度も待ち時間を聞かれたり、クレームを受けたりするスタッフのストレスも相当なものです。 
通常の業務以外の患者対応に時間を取られ、人員を増やす必要も出てくるでしょう。
しかし、時間当たりの患者数を平準化できれば、過剰な人員配置の必要がなく、現場の負担も少なくなります。 


混雑する期間を見極めて予約制を導入

大阪市西区の耳鼻咽喉科では、曜日や時間帯のほか、季節によっても患者数が変動するため、患者数が増加する期間のみ予約制を導入し、診察時間の調整をしています。 
また、オンラインの予約システムを導入し、医院のホームページと連動させました。
予約システムをオンライン化すると、電話や窓口での作業が減り、作業効率は格段に上がります。
特に、インフルエンザの予防接種の予約受付をオンラインで行うことで、それまでは約500件あった電話受付業務をすべてなくしました。 
これによりスタッフの業務が軽減され、診察だけでなく経営面においても効果が得られています。
時間当たりの患者数を平準化するには、混雑する時期や曜日、時間帯を見極め、そこだけを予約制にするのも一つの手段でしょう。
そもそも、地域の患者のライフスタイルに合った診療時間になっているか再検討してみるのもポイントです。
また、混雑状況を院内掲示やホームページなどで周知することも忘れてはいけません。 
空いている時間帯へのスムーズな誘導が可能になるからです。 


 待ち時間の短縮・可視化で患者満足度アップ 

いいクリニックだけど、待ち時間が長いし院内感染が気になる
初めて行った医院が混雑して待ち時間が長いと、こんなイメージを持たれてしまいがちです。
一方、待ち時間が可視化されているなど、効率的な診察を受けられて満足度が高ければ、再受診率は上がります。
口コミ効果や知り合いの方への紹介も期待できるでしょう。 
「待ち時間が長いのは人気がある証拠だ」と、放置してしまう医院があります。
しかし混雑が慢性化すると、確実に集患に影響が出てしまいます。 
そうなる前に医院に合う予約システムを導入し、患者数の平準化に取り組んでみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2019年7月現在の法令・情報等に基づいています。