税理士法人笠松・植松&パートナーズ

生産緑地の2022年問題、その対応策とは?

19.02.04
業種別【不動産業(相続)】
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都市部をはじめとした全国各地には、“生産緑地”に指定されている農地があります。
市街化区域内にありながら農地として扱われている生産緑地は、農地としての管理が求められる代わり、固定資産税が農地並みに軽減されるなどの優遇措置を受けています。 
この生産緑地が抱える『2022年問題』が、今、注目を集めています。 
そこで今回は、『2022年問題』とは何なのか、どのような対応策が考えられるのか、ご紹介します。
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そもそも『2022年問題』とは?

生産緑地制度は、1991年の生産緑地法の改正により始まりました。
その背景には、都市部の開発が進んだことによる住環境の悪化や自給率の低下があり、それらに歯止めをかけるために始められた制度とされています。
翌年、法律に基づいて都市部の一部の農地は生産緑地となり、固定資産税や相続税についての優遇措置を与える代わりに30年間の営農義務が課されました。
つまり、生産緑地は転用して農地以外に使用することはできなかったということです。

この年、多くの農地が生産緑地の指定を受けましたが、それから30年が経過する2022年には指定が解除され、自治体への買い取り請求が可能になります。
これにより不動産市場にも大きな変化がもたらされることが予測されており、これが『2022年問題』と呼ばれています。

生産緑地法の改正時には2022年に自治体が時価で買い取るという想定でしたが、実際には予算不足で買い取り拒否となる場合が多いと見込まれています。
その場合でも転用、売却は可能であり、もし宅地に転用すれば時価で売れるため、高額売却も期待できます。
そのため宅地などに転用するケースが多数起こると見込まれ、これによる不動産市場への影響が懸念されているわけです。


生産緑地の指定解除の条件、手続き方法は?

生産緑地を農地以外の用途で使用するためには、指定を解除しなければなりません。
そのための条件は下記の3つとなります。

【生産緑地の指定解除の条件】
(1)生産緑地指定から30年が経過した場合
(2)病気などの理由で主たる従事者が営農することが困難になった場合
(3)主たる従事者が死亡し、相続人などが営農しない場合

この3つの条件のうちいずれか1つを満たせば、生産緑地の指定解除を行うことができます。

手続きとしては、まずは各自治体に生産緑地の買い取りの申し出を行います。
自治体は申し出を受けてから1カ月ほどで買い取るかどうかを決定しますが、財政上の理由から買い取り不可となるケースがほとんどとなるでしょう。
買い取り不可となれば、各自治体が農地としての買い取り先をほかに探し、農業従事者に対して2ヶ月ほど斡旋を行います。
もし買い取られない場合、生産緑地は解除され通常の農地となるため、転用や地目変更などの手続きが可能となります。

以上が手続きの大まかな流れですが、自治体によって対応が異なる場合もあるため、詳細な手続き方法は各自治体に必ず確認するようにしてください。
また、指定解除の手続きには3ヵ月ほどかかります。
申請を行う場合には余裕をもったスケジュールを組むようにしましょう。

なお、生産緑地の指定を延長することもできますが、農地は維持管理が必要であり、相続した子世代にも営農義務が課せられます。


指定解除後の土地はどう活用する?

では、指定を解除した生産緑地の活用方法としては、どのようなものがあるのでしょうか。
具体例をご紹介していきます。

代表的な活用事例としては、まずアパートやマンション経営が挙げられるでしょう。
生産緑地の多くは都市部に存在するため、宅地としての需要が非常に高くなっています。
一般的な戸建て用の土地に比べて面積が広い場合も多く、その広さを活かして賃貸用のアパートやマンションを建築すれば、大きな収益が見込めます。
また、固定資産税の削減や相続税対策としても有効です。

それほど広くない土地でも、都市部の土地なら戸建てとしての賃貸需要が大いに見込めます。
一旦賃貸したのち、自身の子供世代の住居や老後の住居とすることもできます。

初期費用を抑えた運用には、駐車場経営が挙げられるでしょう。
もし別の目的で利用したくなったとしても、駐車場契約の解除は比較的容易であり、撤収しやすいのも魅力です。

利用者から荷物を預かるトランクルームもコスト面では優秀です。
荷物が置ければよいだけなので設備も簡易的でよく、更新のための費用も抑えられます。
借り手が見つかれば退去も少なく、安定した収益が見込めることもメリットでしょう。
そのほか「シェア空き地」「シェア畑」「資材置き場」「コインランドリー」など、さまざまな活用方法が考えられます。

ちなみに、認可保育所やデイサービス、グループホームなどの第二種社会福祉事業に転用する場合は、指定解除の条件が満たされていなくても解除できる可能性があります。


生産緑地の指定解除にはさまざまなメリットがある反面、優遇もなくなるため多額の固定資産税がかかるなどのデメリットもあります。
相続税の納税猶予制度を利用している場合は、指定解除で猶予されていた相続税と利子税を納付しなければならないので注意が必要です。
来たる2022年に備え、生産緑地をどのように運用すべきか、今から対策を考えておくとよいでしょう。