税理士法人笠松・植松&パートナーズ

海外企業との契約には“約因”が必要! 英文契約書の初歩講座

18.05.10
ビジネス【企業法務】
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グローバル化に伴い、海外の企業と契約を交わすこともあるでしょう。
その際に用いることになるのが“英文契約書”です。

なお、この英文契約書が法的に有効だと認められるには、4つの要件を満たす必要があります。
その中には、日本法にはない“約因”という要件も含まれているため、作成には注意が必要です。

今回は英文契約書の初歩講座として、基礎的な概要をご説明します。
英米契約法では
契約書の内容がすべて!?

日本法においては、契約書の内容は必要最小限の簡潔なものであることも少なくありません。
契約書に書いていないことや条項の解釈を、その時々の事情から判断することもあります。

しかし、英米契約法には『口頭証拠排除原則』というものがあり、トラブルが生じた場合、“契約書に明記されていない事項は裁判の証拠とならない”という考えが原則です。

そのため、英米契約法では契約書が非常に膨大な量になることもよくあります。


英文契約書に必要な
4つの要件とは?

英米契約法において、契約書に法的な有効性を持たせるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

(1)契約当事者間の合意(Agreement) 
→前提として、契約の当事者間における合意が必要。

(2)契約能力(Legal Capacity) 
→契約を締結するための法的能力がない“未成年者”や“代表権限のない者”などが締結した契約書は無効。

(3)合法性(No Defense)
→当事者間で合意したとしても、契約書に違法または公益に反する内容が含まれている場合は無効。

(4)約因(Consideration)
→当事者間の“約束の対価”(利益または不利益)のこと。日本法にはない概念。

英米契約法上、契約書に法的拘束力を持たせるためには、この“約因”が必ず必要だとされています。
では、約因とは一体どのようなものなのでしょうか? 


“約因”って
具体的にどういうもの?

たとえば、AさんがBさんにある依頼をし、対価としてお金を支払うと契約したとします。
このとき、Aさんには『Bさんに依頼内容を遂行してもらう』という利益と『対価を支払う』という不利益が発生します。
一方、Bさんにも『依頼内容を遂行する』という不利益と『対価を受け取れる』という利益が発生します。

このように、双方に利益・不利益が発生することを“約因”といいます。

少し分かりづらいので、身近な例に当てはめてみましょう。

< 例 >
Aさんは自宅の床の一部が老朽化したため、大工である知人のBさんに無償で修復を依頼。
Bさんは快諾してくれたものの、一向に来てくれません。
Aさんが「修理にきてくれないの?」と尋ねたところ、「Aさんからの報酬がないから、契約は成立してないよ。だから行かない。」とBさん。

Aさんには“床を修復してもらう”という利益がありますが、Bさんは不利益だけ被ることとなり、何の利益も発生しません。
これでは“約因”がないため、英米契約法上、契約が成立しないのです。

仮に、AさんがBさんに対し「謝礼として1万円払う」「修復の代わりにBさん宅の田植えを手伝う」などの対価の提供を提案し、Bさんがこれに同意していれば、“約因”があるので契約が成立していたでしょう。

なお、“約因”には細かなルールが複数存在します。
また、英文契約書を作成するには様々な事柄に注意を払う必要があるため、海外の企業と契約を締結する際は、必ず専門家へ相談するようにしましょう。