税理士法人笠松・植松&パートナーズ

カンヌライオンズ2016から、世界の最新広告コミュニケーション事例のご紹介。その4

17.01.27
ビジネス【マーケティング】

前回まで紹介して来たように、広告界の一大イベント“カンヌライオンズ2016”受賞作の特徴は、

①「“現実世界での実験”を大掛かりな形で行ったもの」
②「データ&テクノロジーの、身体化・実体化」
③「デジタル時代だからこその“超アナログな実感訴求”」

の3つでした。


今回は前回に引き続き③の例を一つ紹介し、その後に、連載の締めとして、日本の受賞作を幾つか紹介して行きましょう。

③の事例は、プロモ&アクティベーション部門金賞などを受賞した「The Baby Stroller Test-Ride」。Contoursというアメリカのベビーカー会社の施策です。

この会社は、自社のベビーカーの安全性と快適性に自信を持っているのですが、他社の製品より“快適”かどうか、赤ちゃんは自ら語ることはできないし、親は実感を持って判断できないという状況がありました。

そこで、何をしたか?

大人が乗れる巨大なベビーカーを実際に製作し、親が試乗(テストライド)できるようにしたのです!
親が快適さを実感できれば、自分の子供のための購買の決め手になる、というわけです。

そして実際に親が乗っている映像からは、子供に返って楽しんでる様子が伺われ、妙にユーモラスなものになりました。Contoursは、この動画をウェブ上で流し、さらに次の試乗イベントの参加者を募りました。


この事例は、難しいトレンドなどある意味で無視して、ひたすら「購買意思決定者の実感」にフォーカスし、それをシンプルに実行した痛快な事例です。



さて日本勢ですが、全体で銅賞以上が46と、かなりの活躍を見せました。
デザイン部門グランプリ受賞「LIFE IS ELECTRIC」(パナソニック)やフィルム部門等で金賞受賞の「HIGH SCHOOL GIRL?」(資生堂)などは、特に高い評価を受けました。


「LIFE IS ELECTRIC」(パナソニック)は、充電できる乾電池ENELOOPを使ったプロモーション施策。電気は非常に重要なものなのに「当たり前」のことになってしまっているので、電池のエネルギーを実感してもらうため、21種類の「様々な暮らしの場面」で発電を行いました。


例えばチアガールの応援(乾電池一つの0.25%)、あるいはマシーン・エクササイズでの運動(17.7%)や走り続けるハムスター(0.34%)、さらに色鮮やかなフルーツから発生する電気(2.28%)などなど。
そして、それぞれに合わせた21種類のパッケージとパンフレットを作り、アマゾンで販売もし、大きな話題を呼びました。


「HIGH SCHOOL GIRL?」(資生堂)は、どうでしょうか。こちらは、資生堂のメークアップ力を訴求するための2分30秒に及ぶウェブ動画で、現在までに1,000万回以上視聴されています。


女性教師が高校の教室のドアを開けると、中には可愛らしい女子高生たちがくつろいでいます。カメラは一人ひとりの女子高生を映し、いちばん奥の一人まで行くと、その生徒の読んでいる文庫本のページに『この教室に男子がいたの、気づいた?』の文字が映し出されます。えっ、何だ?と思っていると、カメラは引いて行きながら、男子達がメイクをされ女子になるまでの過程を逆回転で映し出して行きます。そして。。。。。
この後は、ぜひ、ご自身でYou Tube等でご確認いただければ、と思います。最後には「だれでもカワイクしちゃいます」という資生堂からのメッセージが映し出されます。



今回で、4回に渡ってご紹介してきた、「カンヌライオンズから見る広告コミュニケーション事例」の話はおしまいです。
次回からは、マーケティング関連のいろいろなキーワードや考え方について、また紹介して行こうと思います。


次回は「バンドワゴン効果とスノッブ効果。皆と同じだから買うのか、違うから買うのか?」です。