税理士法人笠松・植松&パートナーズ

届出制ならOK? 休憩時間中の外出に関する考え方

24.10.29
ビジネス【労働法】
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労働基準法では、使用者は、労働時間が一定時間を超える労働者に対して休憩時間を与えなければならないと定めています。
この休憩時間は、従業員が完全に労働から離れて、心身の疲れを回復させるためのものなので、基本的には従業員の自由にさせなければいけません。
これを「自由利用の原則」といいます。
では、従業員が休憩時間中に外出する場合も、自由利用の原則が当てはまるのでしょうか。
休憩時間の自由利用に関する考え方について説明します。

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休憩時間は労働から離れる時間

従業員の労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与える必要があります。
この休憩時間中は、警察官や消防官などの特殊な職種を除き、基本的にはどんな仕事であっても、労働から離れて、自由でなければいけません。
労働から離れるとは、使用者の指揮命令下から完全に離れるという意味でもあります。

解釈を巡ってよく問題になるのが、休憩時間中の「電話番」です。
たとえ、電話がかかってこなかったとしても電話のために待機している状態は、使用者の指揮命令下から完全に離れているとはいえず、休憩時間には該当せず、労働時間に該当すると考えられています。
従業員が電話番をしていた時間は労働時間として賃金が発生しますし、別で休憩時間を与える必要もあります。
電話番や店番など、業務に従事していないものの、もし何かあればすぐに対応しなければならない「待機時間」や「手持ち時間」は、基本的に労働時間として扱われるので注意してください。
当然、休憩時間中の顧客対応も労働時間に含まれます。

一方で、「自由利用の原則」があるからといって、従業員は休憩時間中に何をしてもいいというわけではありません。
休憩時間は、あくまで休憩が目的であり、疲労や集中力の低下などによって引き起こされる労働災害を防ぐという意味合いがあります。
したがって、飲酒や過度な運動などは休憩にはそぐわない行為ですし、職場の規律を乱したり、ほかの従業員の休憩を妨害したりする行為も認められるものではありません。
このような管理上および社会通念上問題となる行為を禁じる目的であれば、休憩時間の過ごし方について、使用者が一定の制限を加えることもできます。

休憩中の外出を制限するのはむずかしい?

では、休憩時間中の外出については、どのように考えればいいのでしょうか。
基本的に自由利用の原則があるため、従業員が休憩時間中に外出したとしても、使用者がこれを禁じることはできません。
ただし、休憩時間といっても、使用者の拘束下にあるため、一定の要件のもと外出を制限したとしても、ただちに労働法違反になるわけではありません。

事業所のなかにしっかりと休憩できる施設が整っており、さらに合理的な理由があれば、従業員の外出について、最小限の制限を加えることが認められています。
合理的な理由は、事業場の規律を保持するうえで必要とされるものに限られ、「外出されてしまうと事業所に人がいなくなり、来客の対応ができない」などの理由で外出を禁じている場合は、労働法違反となります。
合理的な理由は、あくまで業務以外の理由でなければいけません。

また、外出を許可制にしたとしても、合理的な理由がなければ不許可にすることはむずかしいでしょう。
どうしても外出に制限を加えたければ、合理的な理由があることは前提のうえで、許可制ではなく「届出制」にして、従業員が外出する際は上長の承認を受けるようにするのが現実的です。

基本的には外出自体に厳しい制限を課すことはできませんが、就業時間に間に合わないほどの遠出や、ギャンブル施設への立入り、宗教の勧誘や政治活動、ビラ配布や物品の販売などは、事業場の規律を保持する目的で禁じることができます。
また、原則として、従業員は休憩後すぐに業務が始められる状態にしておかなければいけません。

外出して職場から離れて過ごすことは、気分転換やリフレッシュになりますし、仕事の効率アップも期待できます。
買い物や役所での用事を休憩時間中に済ませたいという従業員の要望もあるでしょう。
たとえ合理的な理由があったとしても、外出の制限には慎重にならなければいけません。
労働基準法違反とならないよう、本当に外出制限が必要なのか、必要であるのならばなぜ必要なのかをはっきりとさせ、ルールを運用していきましょう。


※本記事の記載内容は、2024年10月現在の法令・情報等に基づいています。