税理士法人笠松・植松&パートナーズ

使わなくなった固定資産を『除却処理』して節税するには

24.09.24
ビジネス【税務・会計】
dummy

事業に使う機械や設備などの固定資産には『償却資産税(固定資産税)』という税金がかかります。
償却資産税は、使わなくなった機械や設備をそのままにしていても、毎年納め続けることになります。
また、不要になった機械や設備を処分しないと、廃棄した際の『除却損』を計上できません。
固定資産の状況によって処分にお金がかかってしまう場合は、処分をせずに機械や設備を残したまま、除却損を計上する『有姿除却』という方法があります。
不要な固定資産の取り扱いに困っている事業者は知っておきたい、有姿除却について解説します。

dummy

不要な償却資産を残したままだとどうなる?

土地や家屋、備品など、1年以上にわたって使用・保有する資産のことを「固定資産」といい、そのなかでも土地や家屋以外で事業に使用する固定資産は「償却資産」として区別されます。
個人事業主や会社が所有する機械や設備、パソコンなどの備品だけではなく、たとえば、看板や応接セット、エアコン、飛行機やボート、自動車や軽自動車などを除く車両なども償却資産に該当します。
このような償却資産は、時の経過などにより価値が減っていきます。
償却資産の効用が持続する期間のことを「耐用年数」といいます。

土地や建物に固定資産税が課せられるのと同様に、償却資産にも市区町村によって固定資産税の一種である『償却資産税』という税金が課せられます。
この償却資産税の額を決めるには、償却資産の評価額を求めなければならず、そこで必要になるのが『減価償却』です。
償却資産税の取扱いは市区町村ごとに決められており、また、減価償却の方法や残存簿価(最低評価額)など、法人税・所得税と償却資産税の取り扱いは異なります。

減価償却とは、一定期間にわたって費用を分割して経費計上する会計処理のことを指します。
通常、事業に使用するものであれば、取得した年度に購入した金額の全額を経費として計上できますが、取得価額が10万円以上の償却資産は、原則、それぞれの耐用年数の期間にわたって、その取得価額を分割して経費計上していきます。
償却資産については、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」により、品目ごとに減価償却していく年数が定められており、これを「法定耐用年数」といいます。
そして、法定耐用年数の経過後に残る資産の価値を「残存簿価」といい、減価償却が終わっても事業に使用し続けている場合は「残存簿価1円」として帳簿に残り続けます。
会計上の『残存簿価』は1円ですが、償却資産税の計算上の最低評価額は取得価額の100分の5とされる市町村が多いので注意が必要です。

現物を損金計上できる『有姿除却』

償却資産を事業に使い続けるのであれば、税金を納めるだけですが、問題はすでに使っていない不要な償却資産の取り扱いについてです。
不要な償却資産であっても、税金は発生し続けるため、使わないのであれば処分したほうがよいでしょう。

会計上、償却資産を廃棄することを「除却処理」といい、償却資産を除却処理した際には、その時点での償却資産の帳簿価額を「固定資産除却損」として損金の計上ができます。
除却損とは償却資産を帳簿から除却する勘定科目のことで、特に大規模な設備などの場合は節税効果が見込めますが、すでに減価償却が終わっている資産の場合、あまり効果はないでしょう。
それでも、毎年発生する償却資産税が課せられなくなるので、不要になった償却資産は除却処理をしておきましょう。

パソコンや看板などであれば、廃棄はそれほどむずかしくありませんが、機械や設備など大型の償却資産は、処分するのに手間も費用もかかってしまいます。
使わないのはわかっていながら、償却資産を処分できずに償却資産税を支払い続けている事業者も少なくありません。

そのような場合には『有姿除却』という方法が有効です。
有姿除却とは、償却資産を廃棄せず、現存させたまま除却損(帳簿価額から処分見込額を控除した金額)として損金計上する会計処理です。
有姿除却が認められるためには、その資産を事業に使う可能性がなく、また将来的にわたって使用される可能性のないことが要件になります。
この要件を満たすためには、機械であれば重要部品を外したり、電源コードを切断したりして、明らかに使えない状態にしておくなどの対応が必要です。
また、機械や設備が不要になった経緯がわかる経営計画書や稟議書などを残しておくことも大切です。
重要なのは、税務調査などの際に、この償却資産は使われておらず、将来的に使用される可能性もないことを証明できるようにしておくことです。

不要になった償却資産は、そこにあるだけで税金が発生してしまう厄介な存在ですが、さまざまな事情から償却資産を処分できないままでいるケースも見られます。
現物の廃棄がむずかしい状況であれば、専門家などに相談しつつ、有姿除却を検討してみましょう。


※本記事の記載内容は、2024年9月現在の法令・情報等に基づいています。