税理士法人笠松・植松&パートナーズ

スタッフの離職を防ぐ! 売上を維持しつつ営業時間を短縮するには

24.09.03
業種別【美容業】
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美容室では開店準備や日々の練習などで営業時間以外にも時間を取られるため、店舗で働くスタッフはどうしても長時間労働になりやすい傾向にあります。
美容師としての成長に必要なこともあるとはいえ、過酷な労働環境はスタッフの離職を招いてしまいます。
スタッフの負担を減らすためには、営業時間の短縮を検討すべきですが、短縮によって売上や顧客満足度が下がってしまうのは避けたいところです。
美容室のサービスの質や顧客満足度を下げずに、営業時間を短縮する方法を探っていきます。

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長時間労働が当たり前の美容業界

厚生労働省の調査によれば、商業地区にある美容室の1日の営業時間は10~11時間未満が全体の39.2%と最も多く、次いで9~10時間未満が34.8%で、住宅地区でも最も多いのが9~10時間未満となっています。
多くの美容室が営業時間を9~11時間に設定しており、ここに開店前の準備や閉店後の練習時間などが加わると、美容師の実労働時間はさらに長くなります。

過酷な労働環境もあって美容師の離職率は高く、厚生労働省が公表した2023年上半期の「雇用動向調査結果の概要」によれば、美容業を含む「生活関連サービス業・娯楽業」の離職率は15%と、産業全体の平均である8.7%よりも高くなっています。

ほとんど休日がないなか、朝から深夜まで11時間以上働き続ける美容師もおり、心身ともに疲弊した結果、美容師という職業から離れてしまうケースも少なくありません。

美容師の負担を減らし、自分の店の離職率を下げるには、労働環境の改善が必要不可欠です。
そして、そのための方法として有効なのが営業時間の短縮です。

営業時間を短縮することで、スタッフの勤務時間も短くなり、ワークライフバランスの実現が期待できます。
また、仕事とプライベートが両立できる職場は『働きやすい職場』といえるため、求人する際の魅力としてアピールが可能です。
さらに、経営者視点でみると、人件費や光熱費の節約になるのも営業時間短縮の大きなメリットです。

しかし、営業時間を短くするということは、施術できるお客の人数や売上などが減る可能性があるということでもあります。
売上が下がった結果、スタッフの給与を下げざるを得ない状況になるのであれば、結果として離職を招いてしまうことにもなりかねません。
これでは、せっかく営業時間を短くしても意味がありません。

営業時間を短くする際のヒント

営業時間を短縮するうえで大切なのは、顧客満足度や採算性を維持しながら、美容室の状況に合わせた営業時間に最適化していくことです。
そのためには、まず自分の店の地域性とコアの時間帯を把握しておく必要があります。

たとえば、住宅地にある主婦の利用がメインの店舗であれば、忙しいコアの時間帯は平日午前10時から午後2時ごろとなります。
逆に、駅前や商業地にある美容室は、放課後の学生や退勤した会社員がメインの客層となるため、コアの時間帯は平日17時以降となります。
営業時間を短縮する場合は、住宅地であれば平日午前9時から午後5時までの8時間営業、駅前や商業地であれば平日は昼12時から午後8時までの8時間営業といったように、コアとなる時間帯とターゲット層を絞ってしまうのも方法の一つです。
お客の数が少ない、いわゆる「アイドルタイム」を切り捨てることで、大きく売上を減らすことなく、営業時間の削減が行えるでしょう。

これまで週6日の9時間営業だった場合は、1週間で6時間、1カ月でおよそ24時間以上も営業時間を短くすることになります。
店の立地によっては、お客のニーズに合わせて、曜日ごとに開店・閉店時間を変えてもよいかもしれません。

顧客満足度や採算性を維持するためには、業務の効率化にも取り組む必要があります。
たとえば、お客一人当たりの施術に、ある程度の制限時間を設けるなどして、スピードアップを図るのも効果的です。
当然、顧客満足度が下がらないように、技術の研鑽は欠かせません。
営業時間内に施術だけでなくヒアリングや会計などすべての工程が終わるよう、店舗に則した予約システムやITツールなどの導入も考えていきましょう。

また、勉強会や研修、定期的なミーティングなどでスタッフの意識を向上させていくことも大切です。
スタッフに閉店したら即帰宅するという意識が根づけば、掃除や雑務などもスピーディーに取り組んでもらえるようになるでしょう。

長時間労働が当たり前といわれる美容業界において、美容師の労働環境の改善はすべての美容室の課題といえます。
営業時間の短縮はあくまで方法の一つにすぎません。
美容室のオーナーは営業時間の短縮も含め、スタッフの負担軽減に取り組んでいきましょう。


※本記事の記載内容は、2024年9月現在の法令・情報等に基づいています。