みよた社会保険労務士法人

意図なき不正もペナルティの対象に! 注意すべき助成金の不正受給

24.04.09
ビジネス【助成金】
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助成金は、抽選制度がある補助金と違い、支給要件を満たして申請すれば必ず受給できます。
そのため助成金の不正受給は発生しやすく、特にコロナ禍で助成金の活用が注目されて以降、不正受給件数は増加傾向です。
近年、労働局は不正受給への対応を厳格化し、予告なしの調査も積極的に実施しています。
不正受給が発覚した場合はペナルティが科されるので、注意が必要です。
今回は、助成金の不正受給について注意すべきことを解説します。
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助成金の不正受給事案が公表される基準は?

助成金の申請は、支給要件の確認が複雑となるケースが多く、提出書類も多岐にわたるため、代理人に申請を依頼することも珍しくありません。
しかし、不正受給があった場合、不正をしていたのが代理人だとしても、事業主は不正を把握していなかったという言い訳は通用せず、発覚すると以下のようなペナルティが科されます。

・支給前の場合は不支給
・請求金(※)支払い
・事業主名の公表
・不支給決定日または支給決定取り消し日から5年間の助成金支給停止
・不正内容よっては事業主告発(詐欺罪懲役1年6カ月の事例あり)
・申請に関与した代理人の公表
・申請に関与した代理人の助成金業務停止         など

※請求金は下記3項目の合算
1.不正受給により返還を求められた額
2.不正受給の日の翌日から納付の日まで、年3%の割合で算定した延滞金
3.不正受給により返還を求められた額の20%に相当する額

特に不正受給が多い雇用調整助成金の場合、以下の基準で事業主名等の公表が行われます。
※ほかの助成金については基準が異なる場合があります。

(1)不正受給による支給取消額及び不正を理由として不支給決定を受けた支給申請額の合計額が100万円以上の場合
→公表対象。ただし、労働局の調査前に自主申告を行い、かつ、返還命令後1カ月以内に全額納付した場合であって、管轄労働局が特に重大または悪質ではないと認める場合は公表しないことができる。
(2)不正受給による支給取消額及び不正を理由として不支給決定を受けた支給申請額の合計額が100万円未満の場合
→公表対象外。ただし、管轄労働局長が特に重大または悪質であると認める場合は公表対象とする。
(3)代理人が不正に関与した場合
→金額、返還の有無などにかかわらず代理人情報を公表。

適切な労務管理で助成金を有効活用しよう

申請済の助成金で、不正・不適正の疑いが発生した場合には、労働局へ自主申告することができます。
雇用調整助成金の場合、労働局による調査が行われる前に自主申告を行い、返還命令後1カ月以内に全額返還を行なった場合、事業主名の公表は原則として行わないとされています(ただし、重大または悪質の場合は非公表とはなりません)。
「全体は調査中だが、一部で不適正な部分が見つかった」という場合でも、調査中であることを含めて申告が可能です。
また、返還が間に合わず公表となる場合でも、自主申告の場合は、全額返還後に、公表を削除することが可能となります。
なお、自主申告のない不正受給事案は例外なく事業主名の公表が行われます。

助成金を申請した事業主は、提出または提示した書類の写しなどの各種書類を、支給決定日の翌日から起算して5年間保存する必要があります。
もし、これらの書類を保存していなかった場合、要件不該当として、ペナルティが発生する場合があります。
労働局による予告なしの調査も実施されていますので、速やかに調査協力できるよう、書類の保存を5年間、確実に行いましょう。

実際に労働局が公表している各種助成金の不正受給事例をご紹介します。
●雇用調整助成金
・休業していないにもかかわらず、休業したとする虚偽の申請書の作成
・実際の休業日より過大に休業したとする虚偽の申請書の作成
・雇用していないにもかかわらず、雇用していたとする虚偽の申請書の作成
・休業手当を実際の額よりも過大に支払ったとする虚偽の申請書の作成

●キャリアアップ助成金
・賃金台帳や給与明細の改ざん
・虚偽の雇用契約書の作成、申告

●人材開発支援助成金
・訓練の実態がなかったにも関わらず、虚偽の申請

●特定求職者雇用開発助成金、両立支援等助成金ほか
・既存の従業員を新規雇用したとする虚偽の申告
・助成金の対象となる取り組みを行なっていないにもかかわらず、虚偽の根拠資料を作成

助成金は支給要件を満たし申請すれば必ず受給できるものであるため、虚偽の資料作成等の不正が横行しがちです。
また、故意でなかったとしても、結果として虚偽の申請を行なってしまえば、ペナルティを科されることになります。
普段から労務管理全般を適切に行なっている事業所であれば、必要な書類を不備なく揃えることが可能ですので、助成金の申請はそれほどむずかしくありません。
申請について不明なことがあれば、専門家に相談し、不正受給とならないよう気をつけましょう。

参考:雇用調整助成金(不正受給)関係
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/kochokin_husei.html


※記載情報は2024年3月31日時点のものです。