みよた社会保険労務士法人

介護スタッフの『モチベーション』を維持・向上させるための対処方法

22.12.06
業種別【介護業】
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現状の介護業界は、『人材不足』が深刻な課題となっています。
この問題と併せて、長引く新型コロナウイルス感染症による利用者の減少や円安による物価上昇等の外的要因が重なり、事業の継続が困難になっている介護事業所が増加しています。
このような状況を打破し、事業を継続させるために必要な対策の一つが、介護スタッフのモチベーションの維持と向上です。
今回は、介護施設におけるスタッフのモチベーションの維持・向上のポイントを紹介します。
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モチベーションを維持・向上が事業所の生産性向上につながる

2022年10月7日に公開された東京商工リサーチ『老人福祉・介護事業』の倒産件数(1~9月)推移によると、2022年1~9月(負債1,000万円以上)の老人福祉・介護事業の倒産件数は100件(前年同期51件)で、前年同期の2倍に急増しており、現在の状況が長引くと、2022年の倒産件数は年間倒産件数の過去最多を更新する可能性が高いといわれています。

事業を継続させるためには、現在働いている介護スタッフの雇用定着率を高め、そして今まで以上に個々の介護スタッフの能力の発揮を促し、より生産性の高い仕事を行ってもらうことが非常に重要となります。

そのために必要な対策の一つとして、モチベーションの維持と向上があげられます。
モチベーションとは『動機づけ』という意味で用いられており、仕事面においては仕事に対する意欲ややる気を意味しています。
介護の仕事は、その大半が利用者やそのご家族と直接関わり合う仕事です。
仕事に対するモチベーションを維持・向上させることは、対外的に見た事業所のイメージアップという意味でも、とても重要となります。
それでは、介護スタッフのモチベーションを維持・向上させるためには何が必要なのでしょうか。


スタッフが定着・活躍するために必要な要素を考える

重要なのが、各スタッフへの動機づけの方法です。
20世紀のアメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグは、仕事の生産効率を高める過程で満足する要因(動機づけ要因)と、不満をもたらす要因(衛生要因)の二つがあることを明確に提言しました。
これを『ハーズバーグの二要因理論』といいます。

具体的には『動機づけ要因』として成功や承認、仕事内容や仕事へのやりがいが挙げられ、『衛生要因』として上司や同僚との信頼関係、職場環境、労働条件が挙げられます
動機づけ要因はモチベーションを向上させる要因となり、衛生要因はモチベーションを低下させる要因になると説明しています。
また、この二つの要因は互いを補完し合う関係であるため、一方だけではなく、両方を満たすことでモチベーションの維持と向上を図ることができます。
これを介護業界にあてはめると、具体的には以下のようなアクションが有効といえます。

〈動機づけ要因〉
・個々のスタッフの目標を明確に設定し、達成度の確認を行うこと
・仕事の責任と権限を与え、役割や貢献度による評価を明確に提示すること
・利用者や家族からの感謝の言葉を伝えること

〈衛生要因〉
・チーム編成、配属などを適材適所に行うこと
・セミナーや研修会への参加などスキルアップできる教育の機会を与えること
・日常的にスタッフとのコミュニケーションを取り、現場の不満要素改善に努めること

上記以外にも、衛生要因として給与のアップや福利厚生の充実も対処法として挙げられます。
しかし、一時的な効果はあってもモチベーションを継続的に向上させる効果はありません。
動機づけ要因と組み合わせてこそ、効果が期待できます。

介護スタッフのモチベーションを維持・向上させるためには衛生要因の改善を定期的に図るとともに、動機づけ要因を明確にし、どのようにスタッフへ指し示していくかを考える必要があります。

モチベーションを維持・向上させることは非常に難しい課題といえます。
しかし、モチベーションは雇用の定着率、事業の成果、顧客満足度、事故の防止など業務においてさまざまな影響を与えます。
自身の事業所にはどのようなモチベーションマネジメントがあてはまるかを、一度検討されてみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2022年12月現在の法令・情報等に基づいています。