みよた社会保険労務士法人

需要が高まる見込み! 訪問歯科診療

22.04.07
業種別【歯科医業】
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難病のため外出が不可能な方や、要介護状態にある高齢者など、通院が困難な患者の自宅等を歯科医師や歯科衛生士が訪問し、歯の治療や入れ歯の調整、口腔管理などを行うことを『訪問歯科診療』といいます。
高齢化が加速する昨今、訪問歯科診療の必要性はますます増していくといわれています。
これまで院内で診療を行ってきたクリニックが、新たに訪問歯科診療を始める際のポイントを紹介します。
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訪問歯科診療の必要性と患者への周知方法

厚生労働省の『簡易生命表(令和2年)』によると、日本は女性の平均寿命が87.74歳、男性が81.64歳と、ともに過去最高を記録しました。
65歳以上の高齢者数は、2025年には3,600万人を超えると予想されています。

一方、厚生労働省の在宅医療・介護推進プロジェクトチームのまとめによれば、国民の60%以上が自宅での療養を望んでいるというデータがあります。
患者の住み慣れた自宅や施設で医療サービスを受けられる体制づくりは、超高齢社会においてますます必要となるでしょう。
訪問歯科診療の導入は、地域密着型のサービスを提供する意味でも意義深いものといえます。

訪問歯科診療では、患者の暮らす自宅や施設においても、院内で行っている診療とほぼ同じ医療サービスを提供することを前提としています。
しかし、そもそも訪問歯科というサービスがそれほど知られていなかったり、機材の準備、家族との連携など、訪問歯科診療ならではの留意点もあり、歯科訪問診療料の算定要件などについても理解を深めておかなければいけません。
歯科訪問診療料に関しては、厚生労働省のホームページなどで確認しておきましょう。

新たに訪問歯科診療をスタートさせるにあたり、特別な資格や手続きなどは必要ありませんが、まず、訪問歯科診療を行っているということを地域住民に周知する必要があります。
来院する患者にわかるようにポスターを貼ったり、高齢患者に電話連絡をしたり、診察券に記載したりして、訪問歯科診療を行っていることを広めていきましょう
また、地区の歯科医師会や在宅医らと連携を強化して、地域全体で取り組んでいくことも大切です。


機材の準備から初回の訪問診療まで

訪問歯科診療を行う際には、まず機材の用意が必要です。

ただし、初回からすべて完全に揃える必要はなく、訪問診療を重ねていくなかで足りない物が出てきたら、その都度、調整していきましょう。
訪問診療の初回は、処方箋や領収書、通院歴があればカルテやレントゲン写真などを用意します。
また、訪問歯科診療は義歯の修理や調整、口腔内の汚れなどに関する相談が多いため、それらに対応できる機材も準備しておく必要があります。

訪問歯科診療は、患者やその家族からの要請を受けて、自宅等を訪問することになります。
歯科診療所とは異なり、自宅はあくまで患者の生活の場です。
医療現場ではないことを念頭に置き、患者本人のプライバシーを尊重しながら、信頼関係を築いていけるような診療を心がけなければいけません
もし、患者本人とのコミュニケーションが難しければ、家族と会話を重ねつつ、こちらからも患者のためになる提案を行っていきましょう。

同時に、疾患や口腔内の状態、現在受けている医療サービスなどの確認を行い、今後の治療の方針や計画、会計事務についての説明も行っていきます。
訪問歯科診療は歯科医師1人でもできないことはありませんが、院内のように導線や作業の流れが確保できているわけではありませんし、安全確保の観点からも、可能であれば2人以上の体制で行うのが望ましいとされています。

このように、訪問歯科診療にはさまざまな留意点、注意点があり、導入に関しては、院内診療とはまた別のさまざまなノウハウが存在します。

まずは、地区の歯科医師会や、すでに訪問歯科診療を行っている歯科医師などから情報を収集し、地域における訪問診療の環境を把握することからはじめてみましょう。


※本記事の記載内容は、2022年4月現在の法令・情報等に基づいています。