みよた社会保険労務士法人

「今だけ半額」に要注意! 景品表示法で身を守る自己防衛術

25.12.09
ビジネス【法律豆知識】
dummy

インターネットやSNSで「今だけ限定」「絶対痩せる」「効果抜群」といった魅力的なうたい文句を目にする機会が増えています。
しかし、その「うまい話」の裏側には、「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」に違反する不当な表示が隠れている可能性があります。
実際よりも優れているように見せかけたり、価格をお得に思わせたりする広告によって、消費者が損害を被るケースは後を絶ちません。
今回は、消費者を守る景品表示法の基本と、不当な広告に惑わされないための知識、そして万が一被害に遭った場合の具体的な対処方法について解説します。

dummy

景品表示法が禁じる3つの手口

景品表示法では、消費者が適正な選択をできるよう、商品やサービスの品質・内容・価格などについて、実際よりも著しく優良または有利であると誤認させる表示を禁止しています。
同法に違反する不当表示には大きく分けて3つのパターンがあります。

1つ目は「優良誤認表示」です。
これは、実際よりも商品・サービスが優れているように見せかける表示を指します。
たとえば、「無農薬野菜」と表示しているのに実際は農薬を使用していたケースや、「国産牛肉100%使用」と表示しながら、実際には外国産を混ぜていたケースなどが該当します。
健康食品や化粧品の分野では特に多く、「合理的な根拠」がないにもかかわらず、「特許技術採用」「シミが消える」「必ず痩せる」といった断定的な効果をうたっている場合は要注意です。
なお、合理的な根拠とは、客観的な試験データや第三者機関による検証など、科学的に裏付けられた資料を指します。
商品・サービスの効果や性能に優良誤認表示の疑いがある場合、消費者庁はその事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、資料が提出されない場合、当該表示は不当表示とみなされる可能性があります。

2つ目は「有利誤認表示」です。
これは、価格や取引条件が実際よりもお得であると誤解させる表示です。
代表的な例が「メーカー希望小売価格の半額!」という表示です。
一見お得に見えますが、そもそもの「メーカー希望小売価格」が架空であったり、実際にはその価格で販売された実績がほとんどなかったりするケースがあります。
こうした二重価格表示は、特に注意が必要です。
比較対象となる「通常価格」や「以前の価格」が、過去の販売実績や期間に基づいているかを冷静に確認することが重要です。
また、「期間限定」「今だけ」という表示も、実際には常に同じ価格で販売しているのに、あたかも特別に値引きしているように見せる場合があります。

3つ目は「その他の不当表示」で、このなかには2023年10月1日から規制対象となった「ステルスマーケティング(ステマ)」が含まれます。
ステマとは、企業が報酬を払っているのにもかかわらず、一般の人が自主的に推薦しているように見せかける広告手法です。
SNSのインフルエンサーが商品を紹介する際、企業から報酬を受け取っているにもかかわらず「#PR」や「#広告」などといった広告とわかる表示をしない場合、事業者の表示として景品表示法違反となります。

被害に遭った? トラブル解決への道筋

不当な広告によって商品を購入してしまった場合、泣き寝入りする必要はありません。
適切な手順を踏めば、契約の取り消しや返金を求めることができる可能性があります。

まず最も重要なのが、証拠の保全です。
広告画面やパンフレットの不当な表示部分を、写真やスクリーンショットで必ず残しておきましょう。
Web広告の場合、業者が後から内容を変更・削除してしまうケースも少なくありません。
購入時の広告がどのような内容だったかを証明できる証拠が、後の交渉や通報の際に強力な武器となります。
また、業者とのやり取り(メール、LINE、電話の録音など)も可能な限り記録しておくことをおすすめします。
業者側の「虚偽の説明(不実告知)」によって契約してしまった場合、消費者契約法に基づき契約を取り消せる可能性があります。
消費者契約法では、事業者の不当な勧誘によって結ばれた契約について、不実告知・断定的判断の提供・重要事項の不告知があるときに、消費者に取り消す権利を認めています。
たとえば、「絶対に儲かる」などと断定的な説明を受けて投資契約をした場合や、重要な事実を告げなかったことで誤認させられて契約した場合などが該当します。
契約を取り消したい場合は、証拠を持って消費生活センターに相談し、必要に応じて契約の取り消しを検討するのがよいでしょう。

次に、相談・通報先についてです。
困ったときは「消費者ホットライン(局番なしの188)」に電話してみるのもよいでしょう。
全国どこからでもかけることができ、最寄りの消費生活センターや消費生活相談窓口などにつながります。
消費生活センターでは、専門の相談員が業者との交渉方法を助言したり、関連法令に基づくアドバイスを行なったりしています。
相談は無料ですので、気軽に利用できます。
また、明らかな景品表示法違反(優良誤認や有利誤認など)を見つけた場合は、消費者庁のWebサイトにある情報提供フォームから通報することができます。
個人の返金や損害賠償には直接つながりませんが、悪質な業者に対して行政指導や措置命令が出される可能性があり、同じ被害を受ける人を減らすことにつながります。

景品表示法の知識は、消費者が自身の財産と適正な選択を守るための基本的な教養といえます。
広告を鵜呑みにせず、「この表示の裏付けとなる根拠は何か?」と考える習慣をつけましょう。
もし「おかしい」と感じたり、被害に遭ったりした場合は、一人で悩まず188への電話や専門家などに助けを求めることが大切です。


※本記事の記載内容は、2025年12月現在の法令・情報等に基づいています。