みよた社会保険労務士法人

ユニットやレーザー治療器の耐用年数は? 歯科医院の『減価償却』

25.03.04
業種別【歯科医業】
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診療用のユニットチェアやレーザー治療器など、歯科医院を経営するには高額な歯科医療機器をそろえる必要があります。
通常、事業に必要な材料や機材は取得した年に経費として計上することができますが、高額な歯科医療機器に関しては、取得した年に全額を計上することができません。
高額な歯科医療機器は「減価償却資産」として、数年に分割して計上する必要があります。
節税や資金計画を考えるうえでも重要な歯科医院の減価償却について解説します。

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高額な歯科医療機器の減価償却と耐用年数

減価償却とは建物や機械設備など、長期間にわたって使用される資産の価値が時間の経過とともに減少していくことを踏まえ、その減少額を一定期間にわたって経費として計上する会計処理のことを指します。
歯科医院においては、高額な歯科医療機器や建物、設備などが減価償却の対象となる「減価償却資産」です。

減価償却資産は、それぞれ「耐用年数」が定められており、その年数に従って減価償却を行なっていきます。
耐用年数とは、その資産が使用可能だと想定されている期間のことで、歯科医療機器であればユニットチェアが7年、レーザー治療器が6年、高速タービンが4年といったように、機器の種類によって年数が異なります。

取得した歯科医療機器を何年使用するかは、歯科医師によって異なります。
レーザー治療器を3年で買い替える人もいれば、10年以上も同じものを使用する人もいるでしょう。
個人のタイミングで資産を償却できてしまうと、利益をコントロールすることができてしまうため、それぞれの機器について細かく耐用年数が決められています。

ちなみに、耐用年数は国税庁が定めた「耐用年数表」に基づいて算出されます。
歯科医療機器を取得する際には、この耐用年数表で耐用年数を把握しておきましょう。
もし、耐用年数表に掲載されていない場合は、専門家に聞くか税務署などで確認するようにしましょう。

個人と医療法人で異なる減価償却の計算方法

減価償却の計算方法は、「定額法」と「定率法」という2つの方法があります。
定額法とは、資産の取得価額から残存価額を差し引き、耐用年数で除して算出した金額を、毎年一定額として経費計上する方法です。
計算が簡単で、毎年同じ金額を計上できるため、計画的な資金管理がしやすいというメリットがあります。

一方、定率法は、前年末の帳簿価額に一定の割合を乗じて、経費計上する方法です。
初めの年ほど多くの金額を経費計上できるため、初期投資の回収を早めることができます。
ただし、毎年償却額が変動するため、計画的な資金管理がむずかしいという側面もあります。
原則として、医療法人は定率法、個人事業主は定額法で計算しますが、個人事業主でも税務署に届出を出すことによって定率法で計算することが可能です。

また、医療法人の場合は「任意償却」が可能です。
任意償却とは、減価償却費を計上する際に、税務上の規定に従った範囲内で償却額を自由に調整できる方法のことで、必ずしも耐用年数に基づいて一定額を償却する必要がなく、法人の経営状況に応じて多めに償却したり、償却を見送ったりすることができます。
たとえば、利益が少ない事業年度は計上する額を減らし、利益が多い事業年度に計上する額を増やすなど、償却額を任意で変えることによって、キャッシュフローの管理や税負担の調整に役立てることができます。

さらに、高額な歯科医療機器の取得時には「特別償却制度」を活用することで、通常の減価償却に加えて、一定の金額をその年の経費として計上することも可能です。
特別償却制度は取得価額500万円以上の医療用機器が対象となり、手続きの期限は2025年3月31日までとなっていましたが、「令和7年度税制改正大綱」に期限の延長が盛り込まれています。
今後の動きを注視しておきましょう。

歯科医院の経営においては、減価償却を適切に行うことで、減価償却資産の価値の減少を把握し、適切なタイミングで更新や買い替えを行うことができます。 税負担を軽減し、資金計画も立てやすくなるでしょう。
ただし、減価償却は歯科医院の規模や経営状況によって、最適な方法が異なります。
まずは、自身のクリニックに合わせた減価償却について、専門家に相談することをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2025年3月現在の法令・情報等に基づいています。