みよた社会保険労務士法人

建設業における女性の雇用を推進! 事業者に必要な取り組み

24.08.06
業種別【建設業】
dummy

女性の就業者が増えてきたとはいえ、建設業は依然として男性社会のイメージが強い業界です。
女性用のトイレや更衣室などの環境が整っておらず、産休や育休制度の整備も不十分など、建設業には女性が働きにくいと感じる要素が多々あります。
しかし、女性の雇用にはさまざまなメリットがあるうえに、加速化する人手不足の解消にもなるため、事業者は女性が活躍できる環境づくりに取り組む必要があります。
国土交通省も推進している具体的な取り組みの中身について考えていきましょう。

dummy

女性就業者が増加している建設業での職種

建設業に従事する女性就業者の数は、年々増加傾向にあります。
総務省の労働力調査によれば、建設業の就業者全体に占める女性の割合は、2017年には15.3%だったのに対し、2023年は18.2%にまで増加しています。
そのうちの女性の技能者に関しても、2017年の1.8%から2023年には2.7%にまで増えました。
しかし、増加傾向にあるとはいえ、全産業での女性の比率は45.2%であり、それと比べると建設業の就業者の大部分は男性就業者が占めていることがわかります。

女性が建設業を避け、業界も女性を受け入れてこなかったのは、「肉体労働」「危険」「汚い」「男社会」などのマイナスイメージが大きな要因としてあげられます。
機械化や効率化によって以前と比べて危険で大変な作業は少なくなっているとはいえ、やはり建設業は体力が物をいう仕事であることに変わりはなく、工事現場などではどうしても男性が業務の中心を担うことになります。

一方、職種によってはそこまで体力を必要としない業務もあり、女性の活躍を推進することによって、新たなイノベーションの創出が期待できる職種もあります。
その一つが「建築士」です。

建築士は建設業のなかでも女性が増えてきている職種の一つで、2023年の建築士試験の「設計製図の試験」の合格者は、一級建築士で30.8%、二級建築士の39.0%が女性でした。
設計の段階では、すでに男性や女性といった性別によらないその人の感性が重要視されており、昨今は男性建築家と肩を並べる世界的な女性建築家も増えてきています。
新国立競技場のコンペで日本人に知られるようになった故ザハ・ハディド氏もその一人でした。

また、施工管理やCADオペレーターといった職種にも女性が増えており、働き続けてもらうための環境の整備も各社で進められています。
女性の定着を目的に行われる環境の整備は、これまで当たり前となっていた長時間労働の是正やハラスメントの防止など、従来の職場環境の改善にもなります。
さらに、企業のイメージアップやダイバーシティの推進、人材不足の解消などにも寄与するなど、女性を雇用することのメリットは計り知れません。
2019年に国土交通省が行なった実態調査にて、建設業における女性活躍の推進の意味について、「女性が活躍することで、従来の男性社会中心のイメ-ジが払拭され、周辺住民ほか工事利害関係者の信頼感、安心感を得るのに有効となる」と回答した事業者もいました。

女性が働きやすい環境の整備

実際に女性が働きやすい環境を整備するには、ハード面とソフト面の両面からの取り組みが重要です。
ハード面としてまず大切なのは、トイレや更衣室、作業着などの整備です。
たとえば、男性就業者が中心の現場では、男性と女性が共用で利用する仮設トイレを設置しているところがほとんどです。
ですが、トイレの共用に抵抗を覚える女性も多いため、できるだけトイレは男性用と女性用で分けるようにしましょう。

ソフト面に関しては、産休や育休などの制度の導入や、それらを利用しやすくするための作業手順の共有、計画的な休暇取得に向けた整備などが大切です。
子育て世代に対しては、男女問わず、託児代補助などの託児環境への支援も検討する必要があります。
さらに、家庭との両立を配慮したうえでの始業時間と就業時間などの労働時間の見直しも大切です。
国土交通省の実態調査でも、「女性の活躍支援のため、どのような取り組みがより効果的だと思うか」の問いに対して、62.5%の事業者が「家庭との両立を配慮した始業時間、就業時間などの労働時間の見直し」と回答しました。

建設業における女性の雇用と定着は一朝一夕に行えるものではありません。
国土交通省が公表している各企業の事例やロールモデル集なども参考にしつつ、自社でできるところから取り組みを進めていきましょう。


※本記事の記載内容は、2024年8月現在の法令・情報等に基づいています。