税理士法人エム・アンド・アイ

時間外労働協定に特別条項を設ける際、上限はあるか?

15.12.25
ビジネス【労働法】
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大規模なクレームが発生し、社員全員で残業と休日出勤をしないと対応できなくなりました。時間外・休日労働(36)協定に特別条項を設ける場合、その時間に法的な上限はないと聞きます。一方で、例えば1年間あたり、あまり大きな時間を定めることもできないという話も聞きます。

1年の上限は、どのように定めればいいのでしょうか?
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<1ヵ月ベースに算定可 年6回の発動が限度> 

36協定で延長時間を定める際、原則として1ヵ月45時間、1年360時間等の基準(時間外限度基準、平15・10・22労働告示355号)の範囲内とする必要があります。ただし、「特別な事情が生じたときには、限度時間を超える一定時間まで労働時間を延長する旨定める」ことも可能です。これを、「特別条項」といいます。 

「特別な事情」とは、臨時的なものに限られます。具体的には、一時的または突発的に時間外労働を行わせる必要があるものであり、1年の半分を超えないことが見込まれるという条件を満たす必要があります(平15・10・22基発1022003号)。特別な事情は、具体的な事由を示す形で、できる限り詳細に協定することが求められています。 

特別条項の1年の限度時間には上限はありません。ただし、特別条項付36協定の運用が不適切な事業場も少なくありません。 

労災認定に関する脳・心臓疾患の認定基準では、「発症前1ヵ月間におおむね100時間、または発症前2ヵ月間ないし6ヵ月間にわたって、1ヵ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できる」としています。この時間を超える設定は無理があるといえるでしょう。 

特別条項では、1年のほか、「1日を超え3ヵ月以内の一定期間」について上限となる時間を定める必要があります。特別条項を結ぶときは、その発動の回数を協定しますが、1ヵ月単位のときは年6回、3ヵ月単位なら年2回が限度となります。 

例えば、1ヵ月の延長時間を60時間としたとします。延長する回数は、6回が限度となりますから、特別条項を発動した期間の時間外労働の上限は、60時間×6=360時間となり、それ以外の6ヵ月の時間外労働は、1ヵ月45時間(1年単位の変形労働時間制は、42時間)を守る必要があります。

一般の労働者であれば、特別条項を発動していない期間の時間外労働時間の上限は、45時間×6ヵ月=270時間となり、年間の合計は、630時間となります。必ず1年630時間としなければならないわけではありませんが、この範囲内で定めるというのが目安になります。 

以上は、1ヵ月の上限を決めて、そこから年間の上限時間を割り出したものですが、逆に年間の上限を決めておくことも、もちろん可能です。


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【記事提供元】 
安全スタッフ2015年12月1日号