税理士法人エム・アンド・アイ

2024年4月からスタート! 労働条件明示のルール変更に備える

23.11.07
ビジネス【労働法】
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労働者と労働契約を結ぶ際に、使用者である企業は労働者に対して賃金や労働場所などの労働条件を明示する必要があります。
労働契約法制の見直しによって、この労働条件の明示に2024年4月1日から新たな事項が追加されることになりました。
労働条件の明示に関する新しいルールについて、労働者を雇用する企業はしっかりと把握しておかなければいけません。
これまでの労働条件の明示に関するルールをおさらいしながら、新たに追加される明示事項や、明示を行うタイミングなどについて解説します。
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全労働者に「就業場所と業務の変更の範囲」を明示

労働政策の調査・審議を行う『令和4年度労働政策審議会労働条件分科会(第185回~187回)』の報告をふまえ、労働契約法制の見直しが行われ、2023年3月30日に『労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令等(基発0330第1号)』が交付・告示されました。
この改正により、労働条件の明示に関するルールに、新たな明示事項が追加されることになりました。

そもそも労働条件の明示とは、どういったものでしょうか。
労働条件の明示とは、労働基準法15条に定められている使用者の義務です。
使用者は労働者を雇用する際に、労働契約の期間、就業場所と従事する業務の内容、就業時間、賃金、退職に関する事項などを労働者に書面で明示しなければいけません。
もし、明示を行わないなどの義務違反があった場合には、労働基準法120条に基づき、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

今回の改正によって追加される明示事項は、すべての労働者に明示しなければいけない事項と、契約社員やパート・アルバイトなどを含む有期契約労働者に明示する事項に分けることができます(厚生労働省リーフレット「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」より)。

まず、すべての労働者に明示しなければいけないのは、「就業場所や業務の変更の範囲」です。
これまでは、雇入れ直後の就業場所と従事する業務の内容を明示すれば問題ありませんでした。
しかし、新ルールでは、雇入れてしばらく経った後の「変更の範囲」も明示しなければなりません。
「就業場所や業務の変更の範囲」とは、将来的に配置転換や異動などによって変わる可能性のある就業場所や業務の範囲のことを指します。
この変更の範囲を明示するタイミングは、有期・無期問わず、労働者を雇用して労働契約を締結するときと、有期契約労働者と有期労働契約を更新するときになります。

有期契約労働者に明示する事項とは

今回の改正によって、有期契約労働者だけに明示する事項も複数追加されています。
その一つが「更新上限の明示」です。

企業が有期契約労働者を雇い入れる際には、「変動する業務量に対応するため」「人件費を抑えるため」といった理由で、勤続年数や契約更新の回数などについて上限を定める場合があります。
厚生労働省が行った『令和2年有期労働契約に関する実態調査(第11表および第12表)』によれば、有期契約労働者の勤続年数の上限を定めている企業において、上限年数で最も多かったのは「3年超~5年以内」(49.3%)でした。
また、契約更新回数を定めている企業の上限回数で最も多かったのは「3~5回」(61.1%)です。

この上限が不明確のままでは、労使トラブルに発展する可能性があります。
そこで新ルールでは、有期労働契約の締結と契約更新のタイミングごとに、これらの上限の有無と内容の明示を必要とすることになりました。
もし、更新上限を新たに設けたり、短縮させたりする場合には、新設や短縮をする前のタイミングでその理由を有期契約労働者に説明しなければいけません。

さらに、改正によって「無期転換申込機会の明示」と「無期転換後の労働条件の明示」も、新たに使用者の義務となります。
有期契約労働者との有期労働契約には、更新によって通算5年を超えた場合に、労働者からの申し込みによって、無期労働契約に転換されるというルールが定められています。

この申し込みができるタイミングで、使用者は無期転換が申し込みできる旨を明示し、無期転換後の労働条件の明示を行う必要があります。
無期転換の申し込みができるようになったにもかかわらず、そのことを明示しなかった場合、明示義務違反となるので注意してください。

今回解説した明示事項の追加は、2024年4月1日からスタートします。
厚生労働省ではホームページで『労働条件通知書』の見本を公表しているので、参考にしながら準備を進めておきましょう。


※本記事の記載内容は、2023年11月現在の法令・情報等に基づいています。