税理士法人エム・アンド・アイ

外食産業のM&A事情と実例から読み取るM&A対策

23.02.27
業種別【飲食業】
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M&Aとは企業同士の合併や買収のことで、M&Aマーケットは後継者が不足する中小企業や事業拡大を目指す大企業によって、その動向が注目されています。
コロナ禍に続く原材料価格の高騰や円安など厳しい環境に直面している今、飲食店経営にとっても、M&Aは事態を打開する解決策のひとつだといえるでしょう。
今回は、飲食業界をめぐるM&Aの最新事情とそのシナジー効果について、そして代表的な企業事例もあわせて紹介します。
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国内M&A市場の拡大は外食産業にも影響

M&A Online(https://maonline.jp)が公表しているデータによると、2022年、経営権の移動を伴う上場企業のM&Aは949件で、リーマンショック後に最多であった前年の記録を8.2%上回りました。
取引金額は6兆5,612億円(前年比24%減)にとどまりましたが、中小企業を含めた2022年の日本のM&A件数は4,304件、11兆4,356億円となり、2年連続で最多を記録しています。

背景にあるのは、小規模なM&A取引の拡大です。
合併や買収を検討するのは、成長を狙う大企業ばかりではありません。
経営者の高齢化や人手不足などによる先行き不安によって、中小企業のM&Aも増加傾向にあります。

それでは、飲食業界のM&A動向はどうでしょうか。
働き手の不足や低価格競争といった課題が山積するなか、外食・フードサービス業界の2022年M&A件数は、12月23日時点で19件でした。
前年より6件増えたもののコロナ禍前と比べると4割ほど少なく、コロナの感染拡大防止による外出制限がなくなった後も積極的には身動きしづらい企業の状況がうかがえます。

ただし、異業界・異業種店舗による子会社化や新規の参入、同業による協力といった再編の流れは止まっていません。
地方における動きも活発で、飲食業界においてもアフターコロナを見越した展開に注目が集まっています。
なかでも飲食業界への追い風となる景気や政策の状況次第では、今後も飲食業界のM&Aは進んでいくことが予想されます。


自社の課題も見えてくるM&Aシナジー

次に、M&Aによってもたらされる『シナジー効果』について説明します。

M&Aにおけるシナジー効果とは、企業同士の価値が単純な合計よりも大きくなるような相乗効果を発揮することを意味します。
シナジー効果にはさまざまな種類がありますが飲食業界で代表的なものには、以下の二つがあります。


●売上シナジー
M&Aにより合併した2社の売上高の合計が、単純に合算するよりも大きくなる効果のことです。
飲食店の場合、売上シナジーは二つに大別できます。
一つは、同業態を買収して事業の拡大をはかることです。
たとえば、フランチャイズの親会社が、他会社の経営するフランチャイズ店を買収し、直営店のノウハウを生かすことで大幅な売上拡大が期待できます。
もう一つは、異なる業態の事業を買収し、経営の多角化を図ることです。
たとえば、夜帯営業をメインとする居酒屋チェーン店が昼の弁当事業に進出するなど、強みを増やすことで売上アップが狙えます。

●コストシナジー
M&Aによって、事業の拡大や拡充にかかる時間や手間のコストを大幅にカットできることです。
たとえば他社を買収することで、業態開発にかける時間や物件を探す時間、FC加盟店を探す時間などを短縮できます。
また、セントラルキッチンによる省力化や採用の集約化など、規模を広げることで削減できるコストは多岐にわたります。

ほかにも、『研究開発シナジー』や『財務シナジー』といったさまざまな効果があります。
M&Aを検討する際には、自社に必要な効果は何か、売り手と買い手がどのような効果を享受できるのかを、慎重にシミュレートすることが大切です。


この店舗も!? 飲食業界に広がるM&A

最後に、近年の飲食業界で行われた代表的なM&A事例を紹介します。

●小僧寿し
テイクアウトが主力の(株)小僧寿しは、かねてから積極的な企業買収で勢力を拡大してきました。
2022年は、飲食店経営の(株)アスラポートを買収したほか、別会社が運営するメキシカンファストフード事業を取得。
コロナ禍で好調だった既存事業を強化するのか、あるいは新事業での成長を狙うのか、今後の動向が注目されています。

●吉野家ホールディングス
牛丼チェーンなどを運営する吉野家ホールディングスは、2024年度までにM&Aで100億円投じるとの中期計画を公表しています。
同社はラーメン事業の強化を言明しており、いかにして店舗の拡大や原料調達などの策を強化していくか、関心を集めています。

現在、後継者不足を背景に、個人経営の店舗が大手に譲渡される事例も相次いでいます。
しかし、M&Aはあくまで課題解決の一つの方法であり、M&Aを実現した後も日々の経営努力が大切なことには変わりません。
飲食店として人気メニューの開発や魅力ある職場づくりなど、あらゆる角度から店の強みを磨きつつ、経営の課題をクリアできるような戦略を検討してみてもよいかもしれません。


※本記事の記載内容は、2023年3月現在の法令・情報等に基づいています。