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『自筆証書遺言書保管制度』とは? 制度概要を解説

22.12.06
業種別【不動産業(相続)】
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遺言には、作成方法にいくつかの種類があります。
そのうち最も簡単に作成することができるのが自筆証書遺言です。
ただ、自筆証書遺言の保管は自己責任であり、紛失や偽造といったリスクがつきまといます。
また、相続人が遺言書の存在に気付かず、故人の意向が反映されない可能性もあります。
このような問題を解消するため、2018年の法改正により『自筆証書遺言書保管制度』が新設されました。
今回は本制度の概要について解説します。
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自筆証書遺言書保管制度の特色と詳細

自筆証書遺言書保管制度とは、遺言書の紛失や偽造を防止し、遺言者の死後、遺言の存在を相続人に把握してもらうことを目的とした制度です。
公的機関である法務局(遺言書保管所)に、自筆証書遺言の原本を預けることで、原本は遺言者の死後50年間、画像データは遺言者の死後150年間、保管してもらうことができます。
手数料も3,900円と、公正証書遺言作成にかかる費用よりも安価です。

また、あらかじめ希望をしていれば、遺言者の死亡を遺言書保管所が把握した際に、遺言者が定めた通知対象者(相続人等)1名に対し、遺言書が保管されていることが通知されます。
このように、本制度によって、自筆証書遺言書の存在を相続人に知らせることが可能になりました。
さらに、従来、自筆証書遺言では必要だった『検認手続』が、本制度では不要となりました。
検認手続とは、家庭裁判所において相続人等の立会いのもと、遺言書の内容を確認するものです。
本制度に基づいて保管された遺言書は、その内容が原本のみでなく画像データでも保存されるため、わざわざ裁判所において内容の確認をする必要がないとの考慮から、検認が不要となりました。

本制度に基づき一度保管所に預けた遺言書であっても、遺言者として、内容をもう一度確認したい場合には、閲覧を請求することができます。
また、遺言の内容を変更したい場合などには、保管の撤回を申請することで、遺言をつくり直すことも可能です。


自筆証書遺言書保管制度の注意点

このように、自筆証書遺言書保管制度は便利な制度ですが、利用するにあたって以下の点に注意する必要があります。
まず、本制度に基づいて遺言書を預けるには、遺言書保管官によって遺言書の確認が行われます。
しかし、この確認は外形的な記載(自署、押印等)についてのみで、遺言書の内容や有効性については確認されません。
そのため、遺言書を作成し、保管所に預けたものの、死後有効な遺言書として取り扱われないこともあります。
遺言書の記載事項や表現、有効性などに不安がある場合には、文献を参考にする、専門家に相談する、公正証書遺言の作成を検討するなどといった対策をおすすめします。

また、本制度に基づく保管の申請や保管の撤回の申請等は、遺言者本人でなければ行うことができません
さらに、これらの申請をするには、遺言者本人が遺言書保管所に出頭する必要があります。
これは遺言書の偽造を防ぐための措置であり、委任状等による代理申請ができない点には注意が必要です。

なお、本制度にかかわるすべての手続は、事前予約が必要となります。
事前予約の方法や、各種申請に必要な書類、制度についての詳細なQ&Aについては、法務局のWebサイトに記載されています。

自筆証書遺言書保管制度は、遺言者の意向を伝えるうえで非常に役立つ制度です。
遺言書の保管を依頼できる点や家族への通知など、大きなメリットがあります。
しかし、その一方で、本人による手続きや遺言書の有効性の確認が必要であるなど、注意しなければならない点もいくつかあります。
これらの内容をよく理解して、自身の最期の意志を確実にご家族等に伝えるためにも、本制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2022年12月現在の法令・情報等に基づいています。