税理士法人エム・アンド・アイ

企業法務に、今後ますます必要とされる交渉力とは?

22.09.28
ビジネス【企業法務】
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企業の法務担当者が取り扱う業務の一つに、契約書の確認があります。
企業では、売買や業務委託のほか、買収や売却、合併や提携などにおいても契約書を取り交わしています。
その際、法務担当者は、自社が不利な契約を結んでしまわないよう、契約書の内容を細かくチェックします。
もし、不利な条項が見つかれば、相手企業と交渉する必要も出てきます。
その意味で、法務担当者の交渉力強化は、よい契約を結ぶために必要不可欠といえるでしょう。
企業法務における交渉力向上の重要性と、交渉を有利に進める方法について解説します。
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契約交渉に法務担当者が同席するメリット

従来、日本では契約交渉の場に法務担当者が同席するケースはあまり多くありませんでした。
通常は自社と取引先の事業部門の担当者同士か、もしくは決定権を持つ者同士が契約条件のすり合わせを行い、双方が納得したところで契約の締結に至ります。
法務担当者が交渉の席に同席するのは、企業同士のM&Aや労働紛争など、高度で専門的な法知識が必要になる場面に限られていたといえるでしょう。

また、通常の商取引などでは、法務担当者を同席させないほうがよいという意見もあります。
緊張感のある交渉の場に法務担当者がいることで、相手の警戒を強めてしまうことがあるからです。
事業部門の担当者のなかには、交渉がうまくいかなくなることを懸念する人もいるでしょう。

一方、海外企業との取引では、日本企業を相手にする以上に、交渉に慎重さが求められます
そのため契約に際して、法務担当者を同席させる傾向が強くなってきました。
特に英語力の高い法務担当者は、通訳や翻訳の面でも重宝されており、企業のグローバル化に伴い、交渉に齟齬が起きないよう同席させるケースが増えています。

法務担当者が同席して、契約交渉に携わることのメリットは、契約交渉を有利に進められることはもちろん、もう一つ、時間の短縮があげられます
契約条件を取引先と協議して、お互いが納得した上で、契約書に落とし込むには相応の時間がかかります。
自社と取引先の事業部門の担当者同士がそれらの交渉を行うのであれば、交渉の都度、双方の法務チェックが必要になり、余計な時間がかかってしまいます。
しかし、法務担当者同士が交渉の場に出てくれば、その段階で法務チェックが行えるため、やり取りに要する時間を削減することができます。


法務担当者の交渉力を強化するために

法務担当者を交渉に携わらせるのであれば、交渉力の向上を図る必要があります。
近年は、契約書のレビューもAIなどによって自動化されており、法的な不備やリスクなどは即座に指摘できるようになりました。
しかし、条件を提示したり、与えられた条件を検討したりする行為は、人が担う必要があります。
たとえば、取引先から自社に不利な条件を提示されたとしても、その条件を受け入れる代わりに別の条件を提示するなどの交渉には、やはり人が必要となります。

交渉をうまく進める力を一朝一夕に高めるのは難しいものですが、社内での演習(ロールプレイング)や、社外の研修などでも向上させることができます。

どのような交渉でも基盤となるのは、論理的思考力です。
交渉は勝ち負けではなく、お互いが納得できるゴールを目指すものです。
論理的な説明によって、相手を納得させることが必要です。
そのような論理的思考を鍛えるためには、常に物事を整理し、根拠と結論を考える癖をつけることが重要です。
ときには社員同士でディベートをさせ、論理的思考を養う時間を設けるのもよいでしょう。


社内連携にも寄与するコミュニケーション力

もう一つ大切なのが、コミュニケーション力です。
たとえば、休憩時間の些細な雑談などから話が広がり、意気投合することで、交渉がスムーズに進むといったケースもあります。
また、雑談中に取引先から引き出した情報が、交渉を有利に進める材料となることもあるかもしれません。

コミュニケーション力の向上は、法務担当者と事業部門担当者の連携といった社内の協力体制強化にも寄与します
自社に有利な契約を結ぶうえではもちろん、事前準備などをスムーズに進める際にも、事業部門との連携は欠かせません。
法務部門担当者のコミュニケーション力を向上し、普段から社内の交流を図っていくことも法務部門の大切な役割の一つなのです。


※本記事の記載内容は、2022年9月現在の法令・情報等に基づいています。