税理士法人エム・アンド・アイ

2022年4月から中小企業でも義務化! パワハラ防止法

22.02.08
ビジネス【労働法】
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2020年に、パワーハラスメントの防止措置を企業の義務とする、改正労働施策総合推進法が施行されました。
この法律のなかの『パワハラ防止の措置義務』については、これまで大企業が対象でしたが、2022年4月からは中小企業も義務化されます。
すでに、職場におけるセクシュアルハラスメントについては、男女雇用機会均等法によって事業主に防止措置を講じることが義務づけられていますが、今後は、セクハラと併せてパワハラについても防止策を講じていくことになります。
“パワハラ防止法”とも呼ばれるこの法律の対応策について紹介します。
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急増するハラスメントに対処する法改正

厚生労働省が発表した『令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況』によると、2020年度の総合労働相談コーナーへのいじめ・嫌がらせの相談件数は、7万9,190件で、民事上の個別労働紛争の相談件数のなかで9年連続の最多となりました。

このような状況を鑑みて、職場におけるパワハラの防止を強化する目的で、改正労働施策総合推進法、いわゆる“パワハラ防止法”が施行されました。
パワーハラスメントの雇用管理上の措置義務について、中小企業はこれまで努力義務でしたが、2022年4月からは義務化され、必要な防止措置を講じなければいけません。

パワハラ防止法では、パワハラの定義についても『(1)優越的な関係を背景とした、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、(3)就業環境を害すること』と定めています。

(1)は、社長や上司など地位が上であることを利用し、従業員が抵抗や拒否ができない状態であることを意味したり、逆にベテランの部下が新米の上司をいじめることも該当します。
(2)は明らかに業務に必要ない言動のことを指します。
また、(3)は従業員が身体的または精神的に苦痛を感じ、業務に支障が出ている状態のことです。
この(1)~(3)の全てに当てはまる場合が、パワハラになります。
客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、パワハラに該当しません。

パワハラの種類はさまざまあり、代表的な『殴打や足蹴り』などの“身体的な攻撃”や『人格否定』などの“精神的な攻撃”のほか、『仕事から外す』や『私的な雑用の強制』などもパワハラに該当します。
また、『継続的な監視』や『プライベートなことに必要以上に立ち入る』なども“個の侵害”といって、パワハラになるので注意が必要です。


適正な措置を行い、パワハラの根絶を目指す

パワハラ防止法に基づき、中小企業は、特に以下の措置に積極的に取り組んでいく必要があります。

(1)事業主の方針の明確化およびその周知・啓発
職場におけるパワハラに関する方針を明確化し、周知・啓発を行います。
どのような内容がパワハラに該当するのか、また、実際にパワハラを行った者に対してどのような対処を行うのかなどを就業規則等で規定し、従業員に周知・啓発します。

(2)相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
社内にパワハラに関する相談のための窓口を設け、窓口の担当者がパワハラの内容や状況に応じて適切に対処できるようにしておきます。
また、相談窓口を設置したことを従業員に周知しておく必要もあります。

(3)職場におけるパワーハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応
パワハラに関する相談が寄せられた際には、まず事実関係を迅速に確認し、パワハラの被害者と行為者に対して措置を行う必要があります。
また、再発防止に向けた措置も講じることが義務付けられています。

(4)併せて講ずべき措置
(1)~(3)までの措置と併せて、相談者や行為者のプライバシーの保護に取り組みましょう。
また、相談したことで、不利益な取扱いを行ってはならない旨を明文化し、従業員に周知する必要があります。

上記のほかにも、コミュニケーションの活発化や目標の適正化などに取り組み、ハラスメントが起きづらい環境づくりを進めていくことが求められています。

パワハラやセクハラは人の尊厳を傷つけるだけではなく、貴重な人材を流出させてしまうリスクもはらんでいます。
早めにパワハラ防止法に基づいて対策を講じ、職場におけるハラスメントの根絶に注力しましょう。


※本記事の記載内容は、2022年2月現在の法令・情報等に基づいています。