税理士法人エム・アンド・アイ

払いすぎると戻ってくる!? 消費税の還付を受けるためには

20.04.24
ビジネス【税務・会計】
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消費税は消費者が負担するものですが、実際に申告や納税を行うのは、商品やサービスを提供する事業者になります。 
実は、条件によって消費税の還付を受けることができます。 
では、どのような条件を満たせば、消費税の還付を受けることができるのでしょうか。 
今回は消費税の還付について、基本的な部分から紹介します。
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消費税還付のためには『原則課税』を選択

消費税の還付は『預かった消費税』よりも『支払った消費税』が多いときに受けることができます。
たとえば、売り上げが減少して仕入れ等が多かったケース、つまり赤字の場合などは『預かった消費税』よりも『支払った消費税』が多いので、還付を受けることが可能なのです。
ただし、赤字になったからといって必ず還付を受けられるとは限りません。

従業員の給与や租税公課などの経費については、消費税がかからないので、これらが原因で赤字になった場合は、還付を受けることはできません。
きちんと『預かった消費税』から『支払った消費税』を差し引いて、『支払った消費税』が多いかどうかを確認しておきましょう。

また、還付を受けられるのは、『原則課税』で消費税の納税額を算出している事業者に限られます。
消費税の納税額を計算するには『原則課税』と『簡易課税』の2種類の方法があり、『原則課税』は実際の商取引に則した計算方法で、『預かった消費税』から『支払った消費税』を差し引くことで求めることができます。

たとえば、『預かった消費税』が150万円で、『支払った消費税』が100万円の場合、納税額は50万円になるわけです。

一方、『簡易課税』は『預かった消費税』に『みなし仕入率』を乗じた額を、『支払った消費税』と“みなし”ます。
この『みなし仕入率』は事業区分ごとに決められており、卸売業は90%、小売業は80%、農業や林業等製造業は70%、飲食業等は60%、運輸通信業や金融業等サービス業は50%、不動産業は40%と定められています。
つまり、『簡易課税』は、『預かった消費税』が150万円で、自社が卸売業の場合、下記のような計算式になります。

・150万円-(150万円×90%)=15万円

このケースでは『原則課税』よりも、『簡易課税』のほうが納税額は少なくなりますが、実は、『簡易課税では還付を受けることができません
還付を受けるためには、原則として『原則課税』で計算する必要があります。

たとえば、『原則課税』で計算した場合に、『預かった消費税』が150万円で、『支払った消費税』が200万円の場合、差し引き50万円の還付を受けることができますが、『簡易課税』は、『みなし仕入率』で求めなければならないため、『支払った消費税』は考慮されません。
『預かった消費税』の150万円を元に計算されるため、結局、15万円の税金が課せられてしまいます。

通常、『支払った消費税』が少ない場合、節税のためには『簡易課税』を選びたいところですが、赤字などで『支払った消費税』が多い場合には、『原則課税』で還付を受けたほうがお得だということになります。


住宅用の不動産は還付の対象外

赤字の場合はもちろんですが、輸出業の事業者なども還付が発生しやすいといえます。
国内での商取引には消費税が発生しますが、輸出取引に対しては消費税が免除されるため、輸出業の売り上げには消費税が発生しないことになります。
つまり、国内で仕入れを行っていれば、基本的には『預かった消費税』よりも、『支払った消費税』が多くなることがほとんどなので、還付を受けられるというわけです。

ほかにも、高額の設備投資や不動産の購入などを行ったというケースも、『預かった消費税』よりも『支払った消費税』が多くなりがちなので、還付を受けられることがありますが、一定期間、免税点制度適用の制限や、簡易課税制度の選択の制限等が設けられているので、注意が必要です。
また、2020年度の税制改正で、1,000万円以上の住宅用の賃貸建物を購入した際に発生した消費税に関しては、消費税の還付が受けられないことになりました。

規制は住宅用の建物のみで、設備やテナント用の建物などは今まで通り、控除の対象になります。
社員寮などに使う建物を購入する際には、対象外となり、還付を受けられなくなる可能性が出てくるので注意してください。

消費税の還付は、『預かった消費税』よりも、『支払った消費税』が多い場合に、『原則課税』を選択することで受けることができます。
還付を受ける際には、『消費税の還付申告に関する明細書』を消費税の申告書と一緒に提出します。
これまで『簡易課税』を選択していた事業者は、一度、見直してみてはいかがでしょうか。
課税事業者を選択する場合や、簡易課税制度の選択をやめる場合は、当該課税期間開始の日の前日までに届け出が必要となりますので、計画的に検討しましょう。


※本記事の記載内容は、2020年4月現在の法令・情報等に基づいています。