税理士法人エム・アンド・アイ

お金を貸した相手から返してもらえない! 少額の債権の回収方法

20.03.24
ビジネス【法律豆知識】
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「貸したお金を返してもらえない」「交通事故で発生した修理代を請求しても応じてもらえない」「家賃や給料が払われない」など、数万~数十万円程度の金額についてトラブルになることがあります。
このような場合、訴訟を起こしたとしても、その労力に請求金額が見合わないと感じて断念してしまうかもしれません。
しかし、少ない金額の請求方法には、通常の『民事訴訟』とは異なる簡易なメニューが複数用意されています。
今回は、お金の未払い問題を解決するために利用できる手続について紹介します。
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原則1回の審理で行う『少額訴訟手続』

まず、少額の請求には、60万円以下の金銭の支払を求める場合に限って利用できる、簡易裁判所における特別の訴訟手続『少額訴訟手続』があります。
この制度は、簡易迅速に紛争を処理することを目的として設けられた制度ですので、以下のように通常の訴訟手続とは異なる点があります。

(1)裁判所は原則として、1回の期日で審理を終えて、即日、判決をする。
(2)少額訴訟手続の審理では、最初の期日までに、自分のすべての言い分と証拠を裁判所に提出することになっているが、訴えられた人(被告)は、最初の期日で自分の言い分を主張するまでの間、少額訴訟手続ではなく、通常の訴訟手続で審理するよう、裁判所に求めることができる。
(3)少額訴訟手続によって裁判所がした判決に対して不服がある人は、判決または判決の調書の送達を受けてから2週間以内に、裁判所に対して『異議』を申し立てることができる。この『異議』があったときは、裁判所は通常の訴訟手続によって引き続き原告の請求について審理を行い、判決をするが、この判決に対しては控訴(この場合は地方裁判所に対する不服申立て)をすることができない。


書類審査のみで行う『支払督促』

一方、金銭の額や支払時期、契約の有無などについて、申立人と相手方に相違がない場合は、『支払督促』という制度を利用することが可能です。
『支払督促』は、貸したり立て替えたりしたお金や家賃、賃金などを相手方が支払わない場合に、申立人側の申立てのみに基づいて、簡易裁判所の書記官が相手方に支払を命じる略式の手続です。
紛争の対象となっている金額にかかわりなく、金銭の支払を求める場合に利用できます。
支払督促には、以下のような特徴があります。

(1)書類審査のみで行われる手続で、利用者が訴訟などのように裁判所に出向いたり、証拠を提出したりする必要がない。
(2)裁判所に納める手数料が、訴訟の半分で済む。

支払督促手続においては、申立人の申立てのみに基づいて、簡易裁判所の書記官が金銭の支払を命じる『支払督促』を発付します。
相手方に対して発付された支払督促を送った結果、相手方がお金を支払わず、異議申立てもしない場合、申立人は支払督促に対して『仮執行宣言』を発付してもらい、強制執行を申し立てることができます。
もっとも、異議を申し立てられてしまうと訴訟手続に移行してしまいます。


話し合いで解決を図る『民事調停』

もし、話し合いで円満に解決したいという場合は、『民事調停』を申し立てることになります。
裁判官と調停委員が当事者双方の意見を聞き、合意ができれば、紛争が解決します。
この場合、調停調書というものが裁判所によって作成されるため、相手方が合意内容に従わなかったとしても、調停調書に基づいて強制執行が可能です。
もっとも、結局合意に至らなかった場合は、調停は不調となりますので、紛争を解決するためには訴訟を提起することになります。


判決によって解決を図る『民事訴訟』

当事者間に争いがあり、問題となっている金額が140万円以下であれば、簡易裁判所に『民事訴訟』を提起すべきことになるでしょう。
これは、裁判官が法廷で双方の主張を聴き、証拠を調べるなどして、最終的に判決によって紛争の解決を図る手続です(もちろん、途中で和解することにより紛争が解決することもあります)。
良識ある一般市民から選任された司法委員が審理に立ち会うことがある点が特徴です。
判決書または和解の内容が記載された和解調書が裁判所によって作成されるため、被告が判決や和解内容に従わない場合は、それらに基づき強制執行を申し立てることが可能です。

このように、紛争の対象となる金額が少ない場合においては、通常の民事訴訟とは異なる複数のメニューを、事案の内容に応じて使い分けることになります。
どれがもっとも紛争の解決に適しているかについては、慎重に見極める必要があります。


※本記事の記載内容は、2020年3月現在の法令・情報等に基づいています。