税理士法人エム・アンド・アイ

もったいないから止められない『コンコルド効果』の上手な利用法

19.02.26
ビジネス【マーケティング】
dummy
大量生産、大量消費の時代に、物を大切にするという考え方が共感を呼び、今、日本語の『もったいない』は、『MOTTAINAI』として、世界中に広まっています。 
心理学の世界には、そんな『もったいない』と考える心理が作用し、それまで行ってきた投資を止められなくなる『コンコルド効果』というものが存在します。 
今回は、具体的な事例と共に、『コンコルド効果』のビジネスでの利用法を見ていきましょう。
dummy
さまざまなところで発生する『コンコルド効果』

『コンコルド効果』とは、あるものにお金や時間を投資することが、今後大きな損失になるとわかっていても、それまで投資してきたものを惜しんでしまい、止められなくなることです。
簡単に言ってしまえば、「途中で止めたらもったいない」「せっかくなのにもったいないという心理状態のことで、『サンクコスト効果』と呼ばれることもあります。

『コンコルド効果』が語られるとき、一般的にパチンコや競馬などのギャンブルや、株やFXなどの投資が例としてよく取り上げられます。
負けが込んでいて、自分でも“勝ち”が薄いと思っているのに、それまで注ぎ込んだ金額が無駄になってしまうのが許せずに、さらにお金を注ぎ込んでしまうというのは、よく聞く話ではないでしょうか。

ビジネスやギャンブル、投資以外にもさまざまなところで『コンコルド効果』は発生しています。
たとえば、開始10分でつまらないと感じた映画や小説を、「せっかくお金を払ったんだから」という理由で最後まで観たり読んだりしてしまったり、もう脈はないと思われる異性に対し、「これまでの自分の行動が無駄になってしまうから」と、何度もアタックしたりすることも、『コンコルド効果』の一つです。

では、どうして『コンコルド効果』が発生するのでしょうか。
人には自分自身の行動や発言、態度などは一貫したものでありたいとする『一貫性の原理』という心理があります。
さらに、現状を維持する性質、不都合なことからは目を背けるという性質も備わっています。
これらの心理や性質が関係して、「もったいないから止められない」という『コンコルド効果』を起こしてしまうのです。


『コンコルド効果』を利用したビジネスとは?

『コンコルド効果』は、ビジネスにも応用できます。
たとえば、ポイント制度などは、その代表的な例ではないでしょうか。
小売店で、1,000円購入ごとに1ポイントがつき、20ポイントで500円の割引券がもらえるというサービスがあるとします。
19ポイントまで溜まっている人は、おそらく次回も1ポイントを求めて来店するでしょうし、もしかしたら、そこまで急いで必要なものではなかったとしても、20ポイント達成のために、その場で1,000円分の商品を何か購入してくれるかもしれません。
ここには当然、お客さんの「せっかくだから」という心理が働いています。

また、通販サイトなどでよくある『○○○○円購入で送料無料』も『コンコルド効果』の一つです。
たとえば『1万円分購入で送料無料』と設定した場合、もしユーザーの欲しい商品が9,000円くらいだったとしたら、そのユーザーは、送料を無料にしたいため、1,000円分の商品を追加で購入してくれる可能性は高いといえるでしょう。
まさに、「せっかくなのにもったいない」という心理が働いた状態です。
送料を無料にするラインをいくらに定めるかは、自社の通販サイトの商品の平均額と、消費者の平均購入額の集計データから、求めることが可能です。

さらに、“ディアゴスティーニ”、 “アシェット”といった一つのテーマに絞った付録付きの書籍販売事業も、消費者の『コンコルド効果』をうまく利用している商売のやり方です。
『切手コレクション』や『プラモデルをつくる』などのシリーズを多数販売しており、より多くの人に興味をもってもらうように、創刊号を通常よりも安い価格に設定。
そのため、テーマと価格に惹かれて創刊号を買った後は、そのまま最終号まで買い続けてしまう人が大勢います。
途中で多少飽きてしまっても、「せっかく集めたのだから」「途中で止めてしまったらもったいない」という心理が働き、多くのユーザーが“完走”するのではないでしょうか。


このようにビジネスでも広く使われている『コンコルド効果』。
ここに挙げた例を参考にしながら、自社のビジネスに取り入れてみてはどうでしょうか。
もちろん、消費者側に、最終的には「途中で止めず、続けてよかった」と満足してもらえるような内容にすることは言うまでもありません。


※本記事の記載内容は、2019年2月現在の法令・情報等に基づいています。