税理士法人エム・アンド・アイ

『就活ルール』廃止で揺れる企業の採用活動。人材確保の鍵とは?

19.01.10
ビジネス【人的資源】
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2018年10月、日本経済団体連合会(経団連)は、いわゆる『就活ルール』の廃止を発表。
現場の混乱を考慮し、2021年春の新卒者までは現行ルールを適用することが決定しましたが、2022年春以降の新卒者に対しては、政府主導による新たな就活ルールがつくられることになりました。 
なぜ、経団連はこれまで定められてきた就活ルールの廃止を掲げたのでしょうか。 
今回は、就活ルールの問題点とともに、中小企業における採用活動のポイントをご紹介します。
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すでに形骸化してしまっている就活ルール 

『就活ルール』とは、経団連が定める『採用選考に関する指針』のこと。 
企業による新卒者の“青田買い”防止を目的に、企業説明会や選考活動の解禁日など、採用活動に関するルールが定められています。 
3月に会社説明会が解禁になり、6月に採用面接がスタート、10月に内定を出すという流れは2017年からのもので、毎年、経団連は大学側と協議のうえで、その時期を微調整してきました。 

しかし現状は、経団連に参加していない企業を中心に、このルールを守らず、ほかの企業よりも早く内定を出すところが増えていました。
これではルールを守ってきた企業も次々と追随してしまいます。 

就活ルールは形骸化し、すでに崩壊している状態にあったといえるでしょう。 

政府は、このルールの形骸化を解消すべく、新たなルールづくりに乗り出しますが、2021年春の新卒者までは、現場の混乱や学生たちの不安を考慮し、現行のルールを維持する方針に決まりました。 


中小・中堅企業を志望する学生は4割超 

さて、そんな状況下で中小企業はどのように新卒者を確保していけばいいのでしょうか。
就活ルールは過渡期を迎えていますが、どんなルールであろうと、“他社よりも優秀な人材を確保したい”のはどの企業も同じでしょう。
中小企業にとって厳しい採用活動が続くなか、人材確保の鍵はどこにあるでしょうか。 

ここで、一つのデータを紹介します。 

『2019年卒マイナビ大学生就職意識調査』によれば、『あなたは「大企業志向」ですか、それとも「中堅・中小企業志向」ですか』という設問に対して、大企業を希望した学生が全体で54.5%だったのに対し、「中堅・中小企業がよい」「やりがいのある仕事であれば中堅・中小企業でもよい」と答えた学生は全体で41.4%でした。 
この結果から、学生の過半数は大企業志向とはいえ、それでも4割の学生は中小企業を志していることがわかります。 

中小企業としては、そんな学生にどう向き合い、アプローチをしていくのかが大切になっていきそうです。 


地方の優秀な人材に注目が集まっている 

では、優秀な人材をどのように見つけ、どうアプローチしていくのがよいでしょうか。
特に現状の就活ルールでは、採用活動の“時期”に目が行きがちです。
しかし、他社よりもよい人材を確保しようと思ったら、着眼点を変えるしかありません。 

そこで今、注目を集めているのが地方の就活生です。 

企業の多くは大都市圏に集中しているため、大都市圏の就活生の1.5倍ほどといわれる交通費や滞在費などのコストが地方の学生の就活を妨げています。
さらには大都市圏の就活生との情報格差があったり、大都市圏の企業と接触する機会が極端に少なかったりするなど、地方の就活生による大都市圏の企業への就職はハードルが高く、結局、どれだけ優秀でも、地元企業に就職するしか選択肢のない学生も少なくありません。 

そんななか、大都市圏の一部の企業は、地方の大学に人事担当者を派遣して出張でセミナーや会社説明会を開き、地方の学生を取り込もうとしています。 
また、社員が地方の大学に出向き、一度に多くの学生を相手にする合同OB訪問や、現地選考会を行うなど、地方の就活生に対する取り組みが活発になってきています。 
これからは、大都市圏だけではなく地方にも視線を向けることが、人材不足解消の鍵となりそうです。 

さらに、『ブラック企業』や『パワハラ』などが流行語大賞にもなる昨今、就活生は“職場の雰囲気”に非常に敏感になっています。
東京商工会議所の『2018年度 中堅・中小企業の新入社員の意識調査結果』によると、『入社した会社を選んだ理由』という設問に対し、最も回答の多かった『仕事の内容がおもしろそう(46.7%)』に次いで、『職場の雰囲気が良かった(35.2%)』があげられています。 

就活生が企業の雰囲気を知るのは、会社訪問や説明会などはもちろん、人事担当者やOB・OGなどからです。
面接担当者と就活生は、仮想の上司と部下。
熱く自社の魅力を伝えることも必要ですが、まずは就活生の話に耳を傾け、「どんな仕事をしたいか」「どんな人になりたいか」を親身に聞き、言葉を交わしていくことで、おのずと自社の雰囲気は伝わっていくでしょう。 


2022年春の新卒者からは新たな就活ルールが導入されます。
しかし、どんな方式になったとしても、これまで同様、就活生と向き合う姿勢が大事だということは変わりません。
真摯に対応し、誠実に取り組んでいくことこそが、優秀な人材を確保するうえでの一番の近道なのです。