税理士法人エム・アンド・アイ

既存顧客を離さない『リテンション・マーケティング』とは?

18.09.25
ビジネス【マーケティング】
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新規顧客獲得のためではなく、従来の顧客とのニーズを見直すことで、より良好なサービスを提供し、関係の安定維持に結びつけるためのマーケティング戦略が『リテンション・マーケティング』です。
その具体的な施策には、どのようなものがあるのでしょうか。 
今回は、マーケティング界で大きな注目を集める、この活動をご紹介します。
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企業の成長に直結する、既存顧客の維持

“リテンション”は保持、維持、記憶などを意味し、『リテンション・マーケティング』は、過去に自社商品を購入してくれた顧客に、DMなどで商品情報を継続的に発信してリピートを促したり、アフターサービスを厚くしたり、特典を用意したりするなどして、新規顧客との差別化を図り、再度、商品を購入してもらえるように促すマーケティング活動全般を指します。
多くの企業が活用しつつあるこの方法の、具体的なアプローチ例を見ていきましょう。

たとえば、ヨドバシカメラやビックカメラといった大手家電量販店で行っているポイント還元サービスは『リテンション・マーケティング』の一つです。
家電量販店に限らず、ドラッグストアやスーパー、コンビニなどでも行われているこのポイント還元サービスは、新規顧客を取り入れるというよりは、再度来店するための動機づけとなって、既存の顧客を逃さない施策として活用されています。

また、既存顧客一人一人のニーズに合わせたサービスを提供するのも、『リテンション・マーケティング』です。
高級ホテルでは、訪れる客の情報を徹底的に分析し、各顧客のリクエストを可能な限り検討する施策を行っているところが少なくありません。
チェックイン・チェックアウトの時間をずらしたり、記念日にシャンパンを用意するなど、それぞれの顧客に合わせたサービスで、リピート率の向上を狙います。

さらに、Amazonの有料会員プログラム“Amazonプライム”も『リテンション・マーケティング』です。
配送料の無料化、映画や音楽の視聴サービスといった特典を用意することで、既存顧客の囲い込みを図っています。

どの企業も共通しているのは、新規顧客獲得のマーケティングはしつつも、既存顧客の満足度を高めることを最優先とし、いわゆる“常連客”をより多くつくることが会社の成長につながると考え、実践していることです。

 
新規顧客の5分の1? コスト面などのメリットも大!

『リテンション・マーケティング』にはさまざまなメリットがあります。
まず一つは、コスト面です。
マーケティングの世界で唱えられている『5:1の法則』とは、新規顧客を獲得するには、既存顧客の5倍のコストがかかるというもの。
逆にいえば、既存顧客を維持するためのコストは新規顧客開拓のコストの5分の1というわけです。
このように費用対効果が高い点は、魅力の一つです。

次に、既存顧客との関係を維持する中で、商品に対するフィードバックをダイレクトにもらえること。
アンケートや口頭による、「もっとこうしてほしい」「これが足りない」などの具体的な声は、商品の改良や新規商品の開発に役立ちます。
本来は莫大なリサーチ費用がかかってしまうこれらのフィードバックも、既存顧客との関係を大切にする『リテンション・マーケティング』では比較的容易に手に入れることができるのです。

さらに、既存顧客の中には、過去に商品を購入してくれたものの、それからはいっさい動きのない『休眠顧客』や、他社の商品を買うようになってしまった『離反顧客』がいます。彼らの過去のデータを洗い出して再度アプローチできるのも、『リテンション・マーケティング』のメリットの一つです。
かつて関係があった顧客は、新規顧客よりも振り向いてくれる確率が高く、再び“お得意様”になってくれる可能性を秘めています。

『リテンション・マーケティング』を成功させるには、何よりも顧客データの管理が重要となってきます。
“誰が、何を、どのくらい”購入しているのかを調べ、グラフ化することで、会社に既存顧客がどのくらいいるのかがわかるはずです。
まずは、自社の顧客データを分析するところから始めてみてはいかがでしょうか。