税理士法人エム・アンド・アイ

介護事業所を守るカスハラ対策の現場での実践ポイントとは

26.03.03
業種別【介護業】
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介護現場では、利用者や家族からの暴言・過度な要求・威圧的態度など、いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が問題化しています。
カスハラ行為はスタッフの心身に大きな負担を与え、離職やサービス低下につながる深刻な問題です。
さらに2026年10月からは労働施策総合推進法の改正ですべての企業(事業主)にカスハラ防止措置を講じることが義務化される予定です。
そのため、介護事業所はスタッフを守るための環境整備を進めると同時に、組織として明確な方針を示す必要があります。
今回は、介護事業所が取り組むべきカスハラ対策について解説します。

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義務化されたカスハラ対策と介護現場の実情

介護現場におけるカスハラは、単なるクレーム対応の範囲を超え、スタッフの心身に深刻な影響を与えかねない問題です。
利用者や家族からの暴言、過度な要求、威圧的態度のほかにも、嫌がらせ、長時間の電話拘束、人格否定などその内容は多岐にわたります。
介護スタッフ側としては「相手は高齢者だから」「家族の不安が強いから」と我慢を強いられがちですが、そういった状況が続くとストレスが蓄積し、最悪の場合離職につながるケースもあります。

このようなカスハラ被害から従業員を守るため、労働施策総合推進法が2025年に改正されました。
この改正で、事業者にカスハラ防止措置を講じることが義務づけられ、2026年10月から施行される予定です。
この改正では、パワハラ防止措置義務と同様に、事業者がスタッフを守るための環境整備を行うことを求めています。
そのため、介護事業所はカスハラを「個人の問題」として片付けるのではなく、組織として対応すべきリスクとしてとらえる必要があります。
義務化により、事業所は「カスハラが発生した際の対応方針」「相談体制」「再発防止策」などを整備し、スタッフに周知することが求められています。
これにより、スタッフが安心して働ける環境がつくられ、サービス品質の維持・向上にもつながります。

義務化されたカスハラ対策でまず取り組むべき内容は、「事業主の基本方針などの明確化とその周知および啓発」です。
どのような行為がカスハラとなるのかといったカスハラの定義、カスハラ対応の流れや対応方法、記録方法などをマニュアルなどで明文化し、スタッフ全員に共有することで、現場で迷わず対応できるようになります。

次に、「相談体制の整備と周知」が必要です。
スタッフがカスハラを受けた際、すぐに相談できる窓口や担当者を設けることで、早期対応が可能になります。
相談内容は記録し、組織として情報を共有することで、同じ利用者や家族から繰り返される問題にも一貫した対応が可能となります。

また、「発生後の迅速かつ適切な対応」も重要です。
たとえば、悪質なカスハラの場合、地域包括支援センターやケアマネジャー、警察、弁護士などの外部機関と連携する必要があります。
外部の専門機関と協力することで、スタッフを守りながら適切な対応が可能になり、再発の防止策にもなります。
そのほかにも、利用者や家族への事前説明も有効です。
契約時や重要事項説明書に「不当要求や暴言、暴力などには適切に対応する」旨を明記し、事前に理解を得ることで、トラブルの予防につながります。

スタッフを守る実践的サポートと職場づくり

カスハラ対策は仕組みや体制の整備が重要ですが、これだけでは不十分であり、スタッフ一人ひとりを守るためには実践的なサポートが不可欠となります。
まず重要なのは、スタッフ教育です。
カスハラの定義や対応方法、記録の取り方などを研修で共有し、余裕があれば、ロールプレイを取り入れることで、実際の場面を想定した対応力も高まります。
次に、心理的安全性の確保が必要です。
スタッフが「困ったときに相談しても責められない」「一人で抱え込まなくていい」と感じられる環境をつくることが、カスハラ対策の根幹となります。
管理者やリーダーは、スタッフの声を聴きやすい環境をつくり、問題が起きた際には迅速にサポートする姿勢を示すことが求められます。

また、カスハラ発生時には、スタッフのメンタルケアも重要です。
必要に応じて面談を行い、ストレスの状況を把握し、状況によっては外部機関への相談も検討しましょう。
スタッフが安心して働ける環境を整備することは、利用者へのサービス品質向上にもつながります。

最後に、事業所全体として「カスハラを許さない」という風土を育てることが大切です。
法律で義務化された対策の実施だけではなく、事業所として日常的にスタッフを守る姿勢を見せることで、現場の安心感が高まります。
カスハラ対策は危機管理だけでなく、働きやすい職場づくりの一環としてとらえ、整備することが重要です。


※本記事の記載内容は、2026年3月現在の法令・情報等に基づいています。