税理士法人エム・アンド・アイ

『相続登記』とは何が違う?『遺贈登記』の手続きや注意点を解説

26.03.03
業種別【不動産業(登記)】
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不動産の所有者が亡くなった際に、名義を書き換えるために「登記申請」を行います。
親などの被相続人が子などの相続人に不動産を相続する「相続登記」が一般的ですが、それとは別に「遺贈(いぞう)登記」と呼ばれる登記もあります。
遺贈登記は、遺言によって財産が譲られる場合に行う登記で、財産を譲る人を「遺贈者」、受け取る人のことを「受遺者」といいます。
2024年4月から相続登記の義務化が始まり、相続人に対する遺贈登記も受遺者の義務になりました。
遺贈に関わる可能性のある人に向けて、遺贈登記の基礎を解説します。

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遺言があり初めて成立する「遺贈」の仕組み

遺贈とは、「遺言によって自分の財産を譲り渡すこと」を指します。
通常、人が亡くなるとその財産は法律で定められた親族である「法定相続人」が受け継ぐことになります。
しかし、人によっては「長年お世話になった知人に家を譲りたい」「特定の団体に活動資金として寄付をしたい」といった希望を持つこともあります。

このように、法定相続人ではない第三者や、特定の個人、あるいは法人に対して、自分の意思で財産を贈りたいときに用いられるのが遺贈という仕組みです。
遺贈はあくまで亡くなる人の「遺言」があって初めて成立するものであり、生前に行う「贈与」や、法律で決められた枠組みで行う「相続」とは性質が異なります。

また、相続も遺贈も、どちらも亡くなった方の財産を引き継ぐという点では似ていますが、法的な立場や手続きのルールには違いがあります。

通常の相続において財産を受け取るのは相続人です。
遺言書がない場合、相続人全員が集まって、誰がどの財産を受け継ぐかを話し合う「遺産分割協議」を行い、分配を決定します。
この話し合いに参加できるのは、原則として法定相続人に限られます。

対して、遺贈で財産を受け取る受遺者は、遺言書で指定された特定の財産を受け取る権利を持ちますが、基本的には遺産分割協議に参加することはなく、あくまで、「遺言に書かれた財産を受け取る」だけの立場になります。
ただし、財産のすべて、または一定の割合(2分の1など)を指定して譲る「包括遺贈」の場合、受遺者は相続人と同様の権利を持つため、例外的に遺産分割協議に加わることになります。

また、遺贈は原則として、相続人以外の第三者などに財産が譲られる仕組みですが、相続人であっても、遺贈によって財産を譲り受けることは可能です。

遺贈登記も3年以内に申請が必要?

不動産の遺贈が行われた場合、その名義を亡くなった人から受遺者へ変更する手続きが「遺贈登記」です。
これまでは遺贈で不動産を受け取っても、登記申請の期限などは特に設けられていませんでした。
しかし、不動産登記法の改正により、2024年4月1日から「相続登記の義務化」が施行されました。
不動産を取得した相続人は、自分が不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請をしなければならなくなりました。
もし、正当な理由なくこの申請を怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。
この相続登記の義務化の対象は相続人のみで、相続人以外の第三者に対して行われた遺贈については、相続登記の申請義務は課されておらず、申請期限も設けられてはいません。

しかし、相続登記の義務化の対象外であったとしても、登記は不動産の所有を主張するための重要な手段です。
もし登記を放置している間に、遺言の存在を知らない相続人が勝手に不動産を売却してしまったり、ほかの第三者が権利を主張してきたりした場合、登記をしていない受遺者は自分の所有権を法的に主張するのがむずかしくなるかもしれません。
相続人の受遺者も、そうではない第三者の受遺者も、遺言によって不動産を取得したら、すぐに登記申請をするようにしましょう。

受遺者であれば単独でも登記申請が可能に

相続登記も遺贈登記も、申請を行う場所はその不動産を管轄する法務局です。
相続登記は、相続人の一人から申請できる「単独申請」が可能ですが、遺産分割協議によって相続内容を定めた場合には、相続人全員の合意を示す書類が必要になります。

一方、遺贈登記は、原則として「登記権利者(不動産を譲り受ける受遺者)」と「登記義務者(亡くなった遺贈者の代わりに手続きを行う人)」が共同で申請しなければなりません。
この「登記義務者」に該当するのは、遺言で指定された「遺言執行者」か、もしくは「相続人全員」です。

受遺者は自分一人の判断で名義を変えられず、相続人などの協力を得て、登記の手続きを進める必要があります。
ただし、近年の法改正により、相続人が受遺者である場合に限っては、遺贈であっても例外的に単独で申請できるようになりました。

また、実際の手続きでは、遺言書の取り扱いにも注意が必要です。
もし遺言書が公証役場で作成された「公正証書遺言」であれば、そのまま登記手続きに使用できます。
しかし、亡くなった人が自分で書いた「自筆証書遺言」などの場合は、家庭裁判所による「検認」という手続きを経なければ、登記には使えません。
ただし、自筆証書遺言が法務局で保管されている(自筆証書遺言書保管制度を活用している)場合は、家庭裁判所の検認手続きは不要です。
検認とは、裁判所が遺言書の状態を確認し、偽造や改ざんを防ぐための手続きです。
遺言書を見つけた際には、封印されている遺言書を勝手に開封しないよう注意してください。

遺言書のほかにも、遺言執行者がいれば、その人の印鑑証明書や資格証明書が必要で、いなければ相続人全員の協力が必要になるため、戸籍謄本などの収集も広範囲に及びます。
遺贈登記は相続登記と異なり、他者が関わることも多く、共同申請というハードルもあるため、手続きが複雑になりがちです。
遺言で不動産を引き継ぐことになった際は、まずは遺言書の種類を確認し、専門家に相談することをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2026年3月現在の法令・情報等に基づいています。