税理士法人エム・アンド・アイ

『スマホ新法』の施行による事業者のメリットは?

26.02.24
ビジネス【企業法務】
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2025年12月18日に「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律(以下「スマホ新法」)」、が全面施行されました。
これまでは、実質的に巨大プラットフォームによってルールが決められ、その枠組みのなかでビジネスが行われてきました。
しかし、中小事業者にとってはプラットフォーマーに支払う高い手数料や技術的な制限が、成長を阻んでいるという指摘もあります。
多くの事業者に対して公正な競争の場と新たな収益機会の提供を目的としている、このスマホ新法がもたらすメリットや懸念事項などを解説します。

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スマホ新法が施行された背景とその狙い

スマートフォンの普及に伴い、モバイルOS、アプリストア、ブラウザ、検索エンジンといった「特定ソフトウェア」は、社会のインフラとしての役割を担うようになり、人々の生活に欠かせないものになりました。
しかし、これまでは特定の有力な事業者が特定ソフトウェア市場を独占・寡占しており、自社サービスを優遇したり、他社の参入を制限したりするような挙動が公正な競争を妨げているという指摘や議論もありました。

こうした状況を改善するために誕生したのがスマホ新法です。
同法は、セキュリティの確保やプライバシーの保護といった重要な要素を維持しながらも、多くの事業者や個人によるイノベーションを活性化させ、ユーザーに良質で安価なサービスを提供することを目的としています。

公正取引委員会は2025年3月に、特定ソフトウェア市場で圧倒的なシェアを持つApple Inc.(モバイルOS、アプリストア、ブラウザ)、iTunes株式会社(アプリストア)、Google LLC(モバイルOS、アプリストア、ブラウザ、検索エンジン)を規制事業者として指定しました。
これにより、AppleやiTunes、Googleなどの巨大プラットフォームは、公正な市場環境を整えるための厳しい義務が課されることになります。

新法が与える巨大プラットフォームへの影響

スマホ新法のポイントは、巨大プラットフォームによる囲い込みの解消にあります。
たとえば、これまでは特定のアプリストアを経由しなければアプリを配信できない仕組みが一般的でしたが、今後はほかの事業者が運営するアプリストアの利用といった、いわゆる「サイドローディング」を妨げることが禁止されます。

また、高額な手数料が課題となっていたアプリ内決済において、プラットフォーマー独自の決済システムの利用を強いることができなくなります。

さらに、OSに標準で搭載されているブラウザや検索エンジンを不当に優遇したり、利用者がこれらを簡単に変更できないようにしたりする設計が制限されます。

ほかにも、競争を妨げるようなデータの不当な利用や、OSの機能へのアクセス制限が禁止されます。
これにより、サードパーティの事業者が、プラットフォーマーの自社サービスと同等の条件でデバイスの機能を活用できるようになります。

メリットとユーザーへのリスク増加の懸念

こうした規制によって、アプリを開発・提供する事業者は、さまざまな恩恵を受けます。
独自の決済手段を導入できるようになれば、これまでプラットフォーマーに支払っていた手数料を削減できます。
浮いた利益をコンテンツの拡充やマーケティング、あるいはユーザーへの還元に回すことが可能になるでしょう。

技術的・開発的な自由度も向上する可能性があります。
これまでプラットフォーマーが制限していたOSの深い階層の機能や、NFC(近距離無線通信)などのハードウェア機能に対して、より柔軟にアクセスできるようになります。
これにより、既存の枠組みにとらわれない革新的なサービスを開発できるかもしれません。

さらに、デフォルト設定の自由化によって、ユーザーが自社のブラウザやアプリを優先的に使うよう促すチャンスも増えます。

ただし、スマホ新法の施行に伴い、AppleやiTunes、Googleなどの特定ソフトウェア以外を利用するユーザーのリスクが増えるという懸念もあります。
特に重要なのがセキュリティ面のリスクです。
プラットフォーマーによる厳格な審査を経ないアプリの流通が増えることで、マルウェアの感染や詐欺的なアプリの増加が懸念されています。
事業者はみずからセキュリティレベルを担保し、ユーザーに対して安心感を提供しなければなりません。

また、プライバシー保護の観点からも、データの取り扱いには、これまで以上の慎重さが求められます。
青少年へのフィルタリング機能が低下する可能性も指摘されており、社会的な責任を果たすための仕組みづくりが不可欠です。

加えて、決済手段が多様化することで、ユーザーにとっては契約内容が複雑化したり、トラブル時の問い合わせ先が不明確になったりするリスクもあります。
事業者は利便性を追求するあまり、ユーザーの信頼を損なうことがないよう、透明性の高い情報公開と充実したサポート体制を構築していく必要があります。

同法は、特定の企業を排除するためのものではなく、市場の公平な競争を促すためのものです。
したがって、中小規模の事業者であっても、独創的なアイデアと確かな技術力があり、ユーザーにとって本当に使い勝手のよいサービスを提供できれば、シェアを伸ばすチャンスが十分にあるといえます。


※本記事の記載内容は、2026年2月現在の法令・情報等に基づいています。