税理士法人エム・アンド・アイ

トラブルにどう対処する? サロンの『問題解決力』を上げるには

25.12.02
業種別【美容業】
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サロンを経営するうえで、どうしてもお客からのクレームは発生してしまうものです。
クレームは起きるものだととらえたうえで、いかにその発生を最小限に抑えるかという点が重要になります。
そのためには、クレームを防ぐための店側の取り組みが欠かせません。
クレームの予防は、単なるチェックリストの確認作業ではなく、「問題解決力」を組織として高めていくプロセスでもあります。
クレームを未然に防ぐための予防策と、お客から信頼されるサロンをつくり上げるための組織的なアプローチについて、解説します。

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技術的なクレームを防ぐカウンセリング

サロンに寄せられるクレームは、大きく「技術的な不満」と「接客・サービス面での不満」に分類されます。

技術面で最も多いクレームは、「仕上がりがイメージと違う」というものです。
カウンセリングで共有したスタイルと実際の仕上がりに乖離がある場合や、希望したカラーと異なる色味になった、パーマがかかりすぎたといった内容は、お客の期待値が高いだけに深刻なクレームにつながりやすい傾向にあります。

また、「髪のダメージ」に関するクレームも少なくありません。
「ブリーチをしたら髪がチリチリになった」「トリートメントをしたのにかえって傷んだ気がする」といった声は、薬剤の選定や施術への不信感に直結します。

こうした技術的なクレームを防ぐには、「カウンセリングの徹底」が効果的です。
その多くのトラブルは、初期段階のすり合わせ不足から生じます。
仕上がりイメージのすれ違いを防ぐためには、言葉だけではなく、ヘアカタログや画像を用いて具体的なイメージを視覚的に共有することが重要です。

その際には、お客の「なりたい姿」を聞くだけではなく、プロとしてお客の髪質や骨格、ライフスタイルを考慮した「実現可能なスタイル」との着地点を見つける作業も求められます。
「お客様の髪質の特性上、写真とまったく同じ再現はむずかしいのですが、こちらのスタイルでしたら、ご希望の雰囲気を表現できます」といったように、専門家としての誠実な提案が信頼につながるでしょう。
また、ダメージに関するクレームを防ぐには、施術のメリットだけでなく、デメリットやリスクについても事前に説明することが重要です。

接客面での不満は説明とスタッフ教育で予防

一方、接客・サービス面では、「予約したのに待ち時間が長すぎる」「スタッフの態度が不快だった(言葉遣いや私語など)」「店内の清掃が行き届いていない」といった、施術以外の部分での不満が、クレームとして表面化します。
これらは技術的なミスではなかったとしても、お客がサロンで過ごす時間の「快適さ」を損なう重大な問題といえるでしょう。

待ち時間に関するクレームを防ぐには、お客に対して、施術時間や料金の事前説明を尽くすことが重要です。
「いつ終わるかわからない」という不安は、お客にとって大きなストレスになります。
あらかじめ目安の時間を明確に伝え、万が一遅れそうな場合は、施術の合間に必ず「申し訳ありません、あと〇分ほどお時間をいただけますか」と一声かけるといった小さな配慮がクレームを防ぎます。

また、スタッフの言葉遣いや態度は、ロールプレイを通じて実践的に学ばせることで、改善が期待できます。
清掃は責任感が薄れやすい当番制よりも、「鏡まわり」「床」「シャンプー台」など、エリアごとの担当制にし、チェックシートで見える化することで、清潔さを保つことが可能です。

サロンの問題解決力を上げるための仕組み化

しかし、どれだけ予防策を講じても、クレームは発生してしまうものです。
ここで問われるのが、サロンの「問題解決力」です。
問題解決力が高いサロンとは、発生したクレームに対して、迅速に誠実に対応できるサロンのことです。
そうしたサロンは、失敗を個人の責任で終わらせず、組織全体の学びとして次に活かせる体制を持っています。

クレームが発生した場合の初期対応は、何よりも「スピード」と「傾聴」が重要です。
お客が不満を口にされた瞬間、ほかの作業を中断してでも、まずは真摯にお話を聞く姿勢を見せることが鎮静化の第一歩となります。
「でも」「しかし」といった否定語や、技術的な言い訳はさらなるクレームにつながります。
まずは「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」と謝罪し、お客の感情を真正面から受け止めるようにしましょう。

特に重要なのは、その後の組織的な取り組みです。
クレーム対応を特定のスタッフ任せにせず、「クレーム対応マニュアル」を整備し、全スタッフが基本的な対応フロー(初期対応、店長への報告、お直しの提案、返金ポリシーなど)を理解している状態をつくることが求められます。

そして、発生したクレームに関しては、その内容はもちろん、原因から対応の経緯までのすべてをサロン内で共有しましょう。
ミーティングではミスをしたスタッフ個人を責めるのではなく、「なぜ起きたのか」「どうすれば防げたのか」を全員で考える風土が、組織としての問題解決力を飛躍的に高めます。

大事なのは、クレームの原因を究明して、次のサービス改善に活かす仕組みを組織として構築することです。
お客の不満は、裏を返せば「もっとよくなってほしい」という期待の表れでもあります。
その声に真摯に向き合い、改善を続けるサロンがお客の信頼を得ることのできるサロンといえるでしょう。


※本記事の記載内容は、2025年12月現在の法令・情報等に基づいています。