税理士法人エム・アンド・アイ

医療ミスかもしれない? 疑わしい場合の相談窓口と法的対応

25.11.25
ビジネス【法律豆知識】
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自分や家族が受けた医療の結果に「もしかして、何か間違いがあったのではないか」と疑問や不安を感じることは、決して特別なことではありません。
しかし、「医療ミスかもしれない」という疑念を抱いたとき、多くの人は、どこに相談すればよいのかわからないのではないでしょうか。
もし、医療ミスが疑われる状況に直面した際に、まず何をすべきか、どのような相談窓口があるのか、理解しておくことが大切です。
法的な手続のプロセスも含めた医療ミスへの対応策や、相談窓口などを紹介します。

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医療ミスかどうかの判断基準を理解しておく

「医療ミス」とは具体的にどのような状態を指すのでしょうか。
法律の世界では一般的に「医療過誤」という言葉が使われます。
これは、医療従事者がその時点での医学的な知見や技術の水準に照らして、尽くすべき注意を怠ったために、患者の生命や身体に悪い結果を引き起こしてしまった状態を指します。

重要なのは、治療の結果が思わしくなかったからといって、それが直ちに医療ミスにあたるわけではないという点です。
医療には常に限界や不確実性が伴います。
医師が当時の医療水準に従って最善の治療を尽くしても、残念ながら患者が回復しなかったり、後遺症が残ってしまったりするケースは少なくありません。
医療ミスとは、手術中の誤りや、必要な検査を行わなかったことによる診断の遅れ、薬剤の投与量や種類の間違いなど、尽くすべき注意を怠り、人為的な過ちを生じさせてしまった場合のことをいいます。

では、患者側が医療ミスの疑いを抱いたら、まず何をすればよいのでしょうか。
「おかしいな」と感じたら、感情的になって病院に抗議する前に、証拠を確保することが重要です。

最初にやるべきことは、病院への診療記録(カルテ)の開示請求です。
カルテには、診断内容、行われた検査や治療、投薬の記録など、医療行為のすべてが詳細に記載されており、医療ミスがあったかどうかを判断するための最も客観的で重要な証拠となります。
患者本人には個人情報保護法に基づく開示請求権があり、医療機関は一定の例外を除き応じる義務があります。
家族が請求する場合は、原則として本人の同意・委任や法定代理人であることの確認が必要で、本人の判断能力に疑義があるときなどに限り代行できる旨が指針で示されています。
ほかにも、診断書や検査結果、処方された薬の説明書、医療費の領収書など、手元にある関連資料はすべて大切に保管しましょう。
これらは、専門家へ相談したり、法的な手続を検討したりする際の大切な資料となります。

医療ミスの疑いがある場合の相談先

証拠を集めたうえで、次に考えたいのが専門家への相談です。
一人で悩みを抱え続けることは精神的な負担が大きく、また、医学や法律の専門知識なしに問題を解決することは困難です。

まずは、治療を受けた病院内の医療相談室や患者サポート窓口に相談してみましょう。
ここで問題の解決が図られるケースも多々あります。

また、各都道府県や保健所に設置されている「医療安全支援センター」に相談するのも一つの手です。
ここでは、医療に関する悩みや相談を受け付け、必要な情報提供やほかの相談窓口の紹介などをしてくれます。

さらに、より専門的な知見を持つ機関として、NPO法人である「医療事故情報センター」や、医療事故の原因究明と再発防止を目的として医療法に基づき指定された団体である「日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)」などもあります。
これらの機関は、医療過誤問題に関する豊富な情報やノウハウを持っています。

法的な対応、特に損害賠償請求を具体的に視野に入れるのであれば、医療ミス問題に強い弁護士へ相談してみましょう。
医療過誤訴訟は、法律の知識だけでなく高度な医学的知見も要求される、極めて専門性の高い分野です。
医療過誤訴訟を主に扱う弁護士は、医師とのネットワークを持っていることも多く、カルテを医学的な観点から分析し、問題点を見つけ出す手助けをしてくれます。

弁護士などの協力者を得ることができれば、あとは法的な手続を進めていくことになります。
ただし、損害賠償を認めてもらうためには、「医療従事者などの過失」と「患者側の損害」、そして、「過失と損害の因果関係」を証明しなければいけません。
こうした要件を、カルテなどの客観的な証拠と専門家の意見をもとに、論理的に主張・立証していくのが医療過誤訴訟のプロセスとなります。

証明は容易ではありませんが、まずは慌てずに証拠を確保し、一人で抱え込まずに信頼できる相談窓口や医療問題に精通した弁護士に相談しましょう。
そうすることで、問題解決の糸口が見えてくるはずです。


※本記事の記載内容は、2025年11月現在の法令・情報等に基づいています。