税理士法人エム・アンド・アイ

2025年度からの「介護職員等処遇改善加算」の算定要件は!?

25.06.03
業種別【介護業】
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「介護職員処遇改善加算」とは、介護業務に従事する介護職員の待遇を安定させ、賃金の向上や職場環境の整備につなげることを目的に必要な資金を国から介護事業所に支給する制度です。
これまでは「介護職員処遇改善加算」、「介護職員等特定処遇改善加算」、「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3つの加算制度が設けられていましたが、2024年度の介護報酬改定により「介護職員等処遇改善加算」に一本化され新たに4段階の区分が設定されました。

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処遇改善加算が一本化され新たな加算制度に

2024年度の介護報酬改定により、「介護職員等処遇改善加算」が新設されました。
この新加算では、2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップへとつながるよう加算率の引上げが行われており、介護職員の賃金水準の向上が期待されています。
新加算の区分はⅠ~Ⅳの4段階あり、介護職員の賃金改善の程度や職場環境要件の実施内容に応じたもので、Ⅰが最も高い要件を満たす必要があります。

この新加算の算定要件としては、大きく次の3つに分かれており、算定する区分に応じて各要件を満たす必要があります。

(1)キャリアパス要件
キャリアパス要件は、賃金体系や研修実施、昇給の仕組み、改善後の賃金額、介護福祉士などの配置などを整備することで、介護職員がキャリアアップできるような支援体制を整えることを目的とした要件です。
・キャリアパス要件Ⅰ:任用要件・賃金体系の整備など
・キャリアパス要件Ⅱ:研修の実施など
・キャリアパス要件Ⅲ:昇給の仕組みの整備など
・キャリアパス要件Ⅳ:改善後の年額賃金要件
・キャリアパス要件Ⅴ:介護福祉士などの配置要件

(2)月額賃金改善要件
月額賃金改善要件は、「介護職員等処遇改善加算」として算定した金額のうち介護職員の賃金改善に充てなければならない金額や割合について定めた要件で、「月額賃金改善要件Ⅰ」と「月額賃金改善要件Ⅱ」に分けられます。
・「月額賃金改善要件Ⅰ」(2025年度より適用)
新加算Ⅳ(加算率14.5%)の加算額の1/2(加算率7.2%相当)以上を月給(基本給または決まって毎月支払われる手当)の改善に充てることが必要とされています。
・「月額賃金改善要件Ⅱ」
2024年5月31日時点で旧処遇改善加算を算定しており、かつ、「旧ベースアップ等支援加算」を未算定の事業所が新加算Ⅰ~Ⅳまでのいずれかを算定する場合のみ適用される要件で、前年度と比較して、現行の「ベースアップ等支援加算」相当の加算額の2/3以上の基本給等の引上げを新規に実施することが必要となります。

(3)職場環境等要件
人材確保や離職防止、生産性向上などの取り組みを実行することによって、介護職員が安心して働ける職場環境を整備することを目的とした要件です。
2024年度は経過措置として旧要件が適用されていましたが、2025年度からは生産性向上などの区分が強化されており、より実効性の高い取り組みが求められています。
新制度の職場環境等要件は、次の6つの区分に分かれており、加算区分により取り組む項目の数が定められています。

◆職場環境等要件の6区分と各項目数
・入職促進に向けた取り組み:4項目
・資質の向上やキャリアアップに向けた支援:4項目
・両立支援・多様な働き方の推進:4項目
・腰痛を含む心身の健康管理:4項目
・生産性向上のための業務改善の取り組み:8項目
・やりがい・働きがいの醸成:4項目

◆2025年度以降の必要な取り組み数
新加算Ⅲ・Ⅳ:6つの区分ごとにそれぞれ1つ以上(生産性向上は2つ以上)取り組んでいる。
新加算Ⅰ・Ⅱ:6つの区分ごとにそれぞれ2つ以上(生産性向上は3つ以上、うち必須項目あり)取り組んでいる。
また、職場環境等要件の取り組み内容をホームページや情報公表システムで公開する。

新しい加算に求められる要件は、介護職員のキャリアアップ支援や職場環境の整備につながる取り組みが重視されており、体系的に実行することで安定した人材の定着や人材の確保が実現できる可能性が高まります。
また、生産性向上のための取り組みとして業務効率化やICT化を推進することで介護現場の課題を解決するとともに、介護サービスの質の向上が期待できます。
新しくなった「介護職員等処遇改善加算」を有効に活用して、自社の課題を見える化し、安定した職場環境の整備を目指してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2025年6月現在の法令・情報等に基づいています。