税理士法人エム・アンド・アイ

ネット文化を取り入れた『ミームマーケティング』を成功させるには?

24.07.30
ビジネス【マーケティング】
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SNSなどを中心としたインターネット上で拡散される情報のことを『インターネットミーム』や『ネットミーム』、もしくは単に『ミーム(meme)』などと呼びます。
ミームは1976年にイギリスの生物学者であるリチャード・ドーキンスが提唱した概念で、今ではネット文化に欠かせないものとなりました。
海外ではこのミームを活用した『ミームマーケティング』が度々話題になりますが、いったいどういったマーケティング手法なのでしょうか。
ミームマーケティングの基礎知識やリスクについて、実例を交えながら解説します。

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国内外のミームマーケティングの成功事例

ミームとは、主にネット上で広まるユニークな画像や動画、テキストや音楽などのコンテンツのことで、場合によっては情報が伝達する構造そのものを指すこともあります。
多くのミームには元となる画像や動画があり、模倣や改変をされながら、TikTokなどのSNSを通じて拡散されていきます。

2024年には、面白いエピソードやあるあるネタに猫の動画の切り抜きを組み合わせた『猫ミーム』が、軽快なBGMも相まってSNSを中心に爆発的なブームになりました。

このように話題を集めるミームは、主に海外でプロモーションなどに取り入れられ、『ミームマーケティング』として盛んに行われています。
たとえば、ミネラルウォーターの「Perrier(ペリエ)」は、『シュレッダー事件』にまつわるミームをマーケティングに活用し、注目を集めました。
『シュレッダー事件』とは、2018年にサザビーズのオークションで、路上芸術家・バンクシーの作品に仕込まれたシュレッダーが、落札直後に作動したという出来事のことです。
日本でも大きく報道されたこの事件は、すぐにミーム化し、モナリザや運転免許証がシュレッダーで断裁される動画などが作られました。
ペリエもこの流れに追随する形で、レモンの絵がシュレッダーで断裁されるオマージュ動画を作成し、ユーモアのある映像は大きな反響がありました。
ほかにも、高級アパレルブランドの「Gucci(グッチ)」や、動画配信サービスの「Netflix(ネットフリックス)」などが、ミームマーケティングに取り組み、注目を集めています。

一方、日本では食品加工会社の日清食品株式会社が積極的にミームをマーケティングに活用しています。
2021年には、独特な表情でミーム化していた「チベットスナギツネ」のイラストを、主力商品である「カップヌードル」の裏蓋に登場させ、遭遇率6%という数値とともに話題となりました。
また、2023年には、音声合成ソフトで作曲する音楽家である「ゆこぴ」の楽曲「強風オールバック」とコラボした動画を作成しています。
この曲はキャッチーな歌詞と軽快なリズムで、現在、YouTubeの再生数は9,000万回以上を記録し、数多くのオマージュ動画が作られる人気曲で、コラボ動画ではこの曲の替え歌が流れます。
同社はこのようなトレンドに企業としてどこよりも早く目をつけ、社内で行う全商品のプロモーションの企画・制作に反映させています。

トレンドを捉える視点とバランス感覚が重要

ミームマーケティングは多くの人がすでに慣れ親しんでいる既存のミームを活用するため、興味を引きやすいうえに、ユーザーがマーケティングに参加する心理的な障壁が低く、広範囲への拡散が期待できます。
コラボCMなどで評判を呼べば、自社商品やサービスのファンを増やすことにもつながり、ユーザーとより強固な関係を構築することも可能です。
実際に、ミームをうまくマーケティングに取り込んでいる日清食品株式会社はCM好感度調査で、上位に位置しています。

ただし、ミームマーケティングを成功させるためには、ミームを含めたネット上のトレンドを把握していなければならず、そのための調査や分析が必要不可欠です。
また、スピード感も重要で、たとえばコラボCMに関しても、対象のミームが話題になっているタイミングで発信しないと、すぐに的外れ感・流行遅れ感が出てしまいます。
特にネットはトレンドのサイクルが早く、わずか数カ月前のミームですら流行遅れになることも少なくありません。

さらに、調査や分析による裏付けや優れたバランス感覚、ネットに関するリテラシーがないと『炎上』を招いてしまうこともあります。
悪意のあるミームの使用や、ミームの不適切な取り扱いは、自社のイメージを傷つけることにもなりかねません。
2023年には、映画ファンたちが米国X(旧Twitter)上で、映画『バービー』と、原爆開発をテーマにした映画『オッペンハイマー』の両作品をコラージュした『バーベンハイマー』というミームを発表しました。
爆炎を背景にポーズをとるバービーのミームなどに対し、『バービー』の配給元であるワーナー・ブラザースの公式アカウントが好意的に返信したことで批判を浴び、同社が公式に謝罪文をリリースする事態となりました。

ミームマーケティングは、うまく活用すれば拡散により認知度向上の効果が見込めますが、そのためには入念な調査と分析、客観的な視点が必要です。
実際にミームをマーケティングに活用する際は、リスクを避けるためにも、チームを組んで複数人で検証を重ねながら、進めていくことが重要です。


※本記事の記載内容は、2024年7月現在の法令・情報等に基づいています。