弁護士法人牛見総合法律事務所(山口県弁護士会所属)

配偶者の浮気が発覚? どのようなケースなら慰謝料請求が可能?

20.06.23
ビジネス【法律豆知識】
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社会生活を営んでいれば、仕事や趣味のサークルなどで配偶者以外の異性と関わることも当然にあります。
電話やメール、LINEなどで連絡を取り合ったり、ときには二人で食事をともにしたりすることもあるかもしれません。
しかし、配偶者が自分以外の異性に対してあまりに親密な態度をとっていると、他方の配偶者は快く思わないのが通常でしょう。場合によっては「裏切られた」、「浮気された」と感じるかもしれません。 
このような場合、精神的苦痛を受けたことを理由に慰謝料請求ができるのでしょうか。
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そもそも法律上の『不貞行為』とは?

どのような行為を指して『浮気』『不倫』と評価するかは、各人の価値観によるところも大きいものです。
もっとも、法的な意味での不倫、すなわち慰謝料請求が認められる『不貞行為』とは、『配偶者のある者が、自由な意思に基づいて配偶者以外と性的関係を持つこと』と定義されます。
そして、ここでいう性的関係とは、性交または性交類似行為を指すと解釈されています。

よって、電話やメール、LINEなどで連絡を取り合ったり、手をつないだり、二人で食事をするなどの行為は、仮に当事者の一方あるいは双方に恋愛感情や相手への好意があったとしても、それらの行為自体のみでは『不貞行為』とは評価されず、慰謝料請求は認められないのが原則です。


“性的関係がなければOK”というわけではない

そうすると、性的関係を伴わない限り、配偶者が自分以外の第三者とどのような行為をしても、慰謝料請求は一切認められないのでしょうか。

ここは、不貞行為が慰謝料請求の対象となる理由に遡って考える必要があります。
結婚した以上、配偶者との平和な婚姻生活を維持することは、法的保護に値する利益であると考えられています。
そうすると、一方の配偶者が、他方の配偶者以外の第三者と性的関係を持つことは、婚姻共同生活の平和の維持という法的保護に値する利益を侵害し、婚姻生活を破綻させ、他方の配偶者に重大な精神的苦痛を与えるものです。
よって、その精神的苦痛は慰謝されるべきと考えられます。

このような考えによれば、必ずしも性的関係に至らずとも、類型的に婚姻共同生活の平和を損なうような第三者との不適切な交流、接触行為が行われ、それによって婚姻関係が破綻に瀕し、他方配偶者に精神的苦痛を与えた場合には、慰謝料請求が認められるべきということになります。

この点、裁判所も以下のように判示し、性的関係がなくても違法行為となりうることを認めています。

『(婚姻関係にある配偶者と第三者との関わりあいが不法行為となるか否かは)……第三者が相手配偶者との婚姻共同生活を破壊したと評価されれば違法たり得るのであって、第三者が相手配偶者と肉体関係を結んだことが違法性を認めるための絶対的要件とはいえない。』(東京地方裁判所平成17年11月15日判決)

『継続的な肉体関係がなくとも、第三者の一方配偶者に対する行為が、他方配偶者の婚姻共同生活の平和を毀損するものであれば違法性を有するというべきである。』(東京地方裁判所平成22年12月21日判決)

配偶者以外の第三者との交流、接触が違法行為と評価され、慰謝料請求が認められるか否かのポイントは、当該行為により『婚姻共同生活の平和』が損なわれたかどうかであって、性的関係の有無だけが決め手になるわけではないのです。

そうすると、仮に性的関係がなかったとしても(あるいは証拠上性的関係が立証されなかったとしても)、配偶者以外の異性と二人だけで旅行をする、過剰ともいえるスキンシップを日常的にとる、過激な内容のメールを頻繁にやり取りする等により婚姻関係が破綻に瀕した場合には、慰謝料請求が認められる可能性があります。
もっとも、性的関係を伴わない場合は、慰謝料の額自体は低額になりやすいでしょう。

信じていた配偶者が浮気・不倫をしていた場合はもちろん、たとえ性的関係には至らずとも、配偶者が自分以外の第三者と不適切な接触、交流をしていれば、されたほうは大きな精神的ダメージを受けます。
不貞行為がない限り、慰謝料は一切請求できないと考えている方も多くいますが、必ずしもそうとは限らないということを頭の片隅に置いておくとよいかもしれません。


※本記事の記載内容は、2020年6月現在の法令・情報等に基づいています。