弁護士法人牛見総合法律事務所(山口県弁護士会所属)

自動車保険に関する基礎知識

19.07.08
交通事故
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車やバイクを運転するときには、交通事故に備えて「自動車保険」に加入しておく必要性が高いです。

ただ、自動車保険には「自賠責保険」と「任意保険」がありますし、任意保険の内容としてもさまざまなものがあるので、「よくわからない」という方がたくさんいらっしゃいます。

今回は、自動車保険について知っておくべき基礎知識を、弁護士が解説します。

1.自賠責保険と任意保険

自動車保険には「自賠責保険」と「任意保険」がありますが、「自動車保険」というときに「任意保険」のみを指していることもあります。

以下では自賠責保険と任意保険に分けて説明をしていきます。

2.自賠責保険とは

自賠責保険とは、車両を運転する時に必ず加入しておかなければならない強制加入の保険です。

自賠責保険に加入せずに車を運転することは違法であり、罰則も適用されます。

自賠責保険の目的は、「最低限の被害者保護」です。

交通事故では、被害者が大けがをしたり死亡したりすることもあります。

しかし、加害者に資力がなかったら、被害者は加害者から賠償金を受け取ることができません。

そこで、車両を運転する人に自賠責保険への加入を義務づけ、最低限自賠責保険からは被害者への保険金が支払われるようにしています。

自賠責保険によって補填されるのは「人身損害」のみですから、被害者が死傷した場合にのみ、定められた計算方法による賠償金が支払われます。

物損事故の場合、自賠責保険によっては支払いが行われません。

また、自賠責保険によって支払われる賠償金は、低額な「自賠責基準」によって計算されるので、実際に発生した損害には満たないことが多いです。

その場合、不足分は加害者本人や加害者の任意保険会社から支払われます。

さらに、自賠責保険では、保険の加入者本人に発生した損害は補填されません。あくまで事故の相手方のための保険です。

3.任意保険とは

3-1.任意保険の基本知識

任意保険は、車を運転する場合に自ら選択して加入する自動車保険です。

任意保険に加入しないで車を運転しても、違法ではありません。

任意保険にはいくつかの種類があるので、自分で加入する保険を選ぶことができます。

また、自賠責保険と違って物損部分についても補償を受けられますし、保険に加入している本人や家族に発生した損害についても補償を受けられます。

さらに、「限度額無制限」にしておくことにより、発生した損害の全額を補償してもらうことも可能となります。

以上のように、任意保険に加入しておくと、大事故を起こした場合にも安心ですし、必ず加入しておくべきであるといえます。

3-2.任意保険の種類

任意保険には以下の7種類があります。

  • 対人賠償責任保険
  • 対物賠償責任保険
  • 人身傷害補償保険
  • 搭乗者傷害保険
  • 無保険車傷害保険
  • 車両保険
  • 自損事故保険

以下で、それぞれの保険についてご説明していきます。

4.対人賠償責任保険

対人賠償責任保険は、交通事故の相手方に発生した人身損害について補償する保険です。

相手が負傷したり死亡したりしたときのすべての損害が補償の対象になります。

人身損害は億単位の高額になるケースもあるので、対人賠償責任保険の限度額は無制限にしておきましょう。

5.対物賠償責任保険

対物賠償責任保険は、交通事故の相手方に発生した物損を補償する保険です。

相手の車が壊れたり建物を壊してしまったりしたときに保険金が支払われます。

交通事故では、意外と高額な物損被害が発生することがあるので、無制限か億単位の限度額に設定しておくことをお勧めします。

6.人身傷害補償保険

人身傷害補償保険は、契約者やその家族、契約自動車に乗車していた人が死傷したときにお金が支払われる保険です。

交通事故に遭ったら、相手から賠償金を受け取るまでに長い時間がかかるケースもあるので、人身傷害保険に加入していて先に保険金の支払いを受けられると助かることがあります。

また、家族が歩行中に交通事故に遭った場合など広く補償を受けられるので、任意保険に加入するなら是非とも人身傷害補償保険に入っておきましょう。

7.搭乗者傷害保険

搭乗者傷害保険も、人身傷害補償保険と同様に契約者や家族、契約自動車に乗車していたときに発生した人身損害が補填される保険です。

人身傷害補償保険とは保険金の計算方法が異なります。

両方加入できる保険会社とそうでない保険会社がありますが、両方入っておくと補償が手厚くなります。

8.無保険車傷害保険

無保険車傷害保険は、交通事故の相手方が任意保険に加入していない場合や、加入していても適用条件などの問題で対人賠償責任保険が適用されないケースにおいて、被保険者に発生した人身損害についての補償を受けられる保険です。

保険金の計算方法は、対人賠償責任保険と同様発生した実際の損害がベースとなります。

ただし、後遺障害が残ったケースか死亡した事案でしか適用されません。

後遺障害が残らない程度のケガの場合の治療費や慰謝料、休業損害などは補償されないので注意が必要です。

なお、自動車保険の対人賠償責任保険に加入すると、無保険車傷害保険が自動的に付帯されます。

9.車両保険

車両保険は、契約車両に発生した損害を補填するための保険です。

たとえば、火災に遭ったケース、台風や落下物の被害に遭ったケース、盗難被害に遭ったケース、自分の過失が高くて相手から対物賠償責任保険が支払われないケース、当て逃げ被害に遭ったケースなどにおいて、保険金が支払われます。

ただし多くの自動車保険会社で「2種類」のコースが設けられており、安い方のコースでは補償を受けられる場面が限定されます。

また、利用すると自動車保険の等級が下がることにも注意が必要です。

9.自損事故保険

自損事故保険は、保険契約者が単独事故を起こして死傷した場合に補償を受けられる保険です。

相手に過失が認められない(自分の過失が100%)ので相手の保険が適用されないケースでも自損事故保険が適用されます。

自動車保険の対人賠償責任保険に加入すると、自損事故保険が自動的に付帯します。

ただし自損事故保険から支払われる保険金は低額なので、それだけでは十分な保障にはなりませんし、利用すると保険の等級が3等級下がります。

事故に遭ったときに自分や家族に発生した損害の補填に備えるには、人身傷害補償保険や搭乗者傷害保険に加入しておくことをお勧めします。

 

以上が自動車保険制度の概要です。これ以外にも重要なものとして「弁護士費用特約」がありますが、これについては別のページで説明しています。これから自動車保険に加入する際の参考にしてみてください。わからないことがあれば、お気軽に当事務所にご相談ください。