交通事故発生から解決までの流れ
交通事故の被害に遭った場合、「この後どうなってしまうのだろう?」「きちんと慰謝料や治療費を支払ってもらえるの?」と不安になる方が多いです。
適切な対応を行い、落ち着いて治療を進めるためにも、交通事故発生から解決までの一連の流れを把握しておきましょう。
今回は、交通事故が発生してから賠償金を獲得して解決するまでの手順と流れを、弁護士がご説明します。
1.事故現場での対応
交通事故が発生したら、まずは事故現場での適切な対応が必要です。
1-1.緊急措置義務を果たす
交通事故時に車両を運転していた当事者には、道路交通法によって「緊急措置義務」が課される。緊急措置義務の内容は以下の通りです。
●被害者の救護義務 | ||
事故現場に負傷者がいたら、必ず救護しなければなりません。 救護せずに立ち去ると「ひき逃げ」となり、厳罰が適用される可能性が高くなります。 |
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●危険防止措置義務 | ||
危険防止措置義務とは、事故現場に散らばったものを片付けたり車を路肩に寄せたり三角表示板を置いたりして、二次被害を防ぐことです。 危険防止措置をとらなかった場合にも罰則が適用されます。 |
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●警察への通報義務 | ||
交通事故が起こったら、必ず警察に通報しなければなりません。 警察に報告しなかった場合にも罰則が適用されます。 また、警察に報告しないと実況見分も行われませんし「交通事故証明書」も発行されないので、保険金の請求が困難になってしまう可能性が高くなります。 |
1-2.実況見分に立ち会う
警察が来たら、事故現場で実況見分が開始されます。
救急車で運ばれた場合など以外では、自ら実況見分に立ち会って、警察官に事故の状況等を説明しましょう。
実況見分が終わって事故現場から解放されたら、早めのタイミングで自動車保険に連絡を入れて、事故対応を開始してもらいます。
2.治療開始
交通事故現場から解放されたら、すぐに病院に行きましょう。
たとえ事故が起こった当初に自覚症状がなかったとしても、実は怪我をしているケースが多くあるので、できるだけ早いタイミングで整形外科などを受診しておくべきです。
受診時、交通事故によって何らかの負傷をしていることが明らかになったら、治療を開始します。
3.症状固定まで通院を継続する
交通事故後の通院は「症状固定」まで継続します。
症状固定とは、それ以上治療を続けても良くならない状態です。
つまり障害が固定してしまい、もはや改善しなくなった状態を「症状固定」と言います。
症状固定すると、それ以上治療しても意味がないので治療を終了します。
症状固定時期を判断するのは、担当医師です。
交通事故後通院を継続していると、医師の方から「そろそろ通院を終えても良いかも知れません」と言ってくることがあります。
自分から医師に対し「いつ頃症状固定ですか?」と尋ねてもかまいません。
このとき、加害者の保険会社の方から「そろそろ症状固定したはずだから治療を終了する」などと言ってくるケースがあるので注意が必要です。
加害者の保険会社は症状固定したかどうか判断できる立場ではありません。
多くの場合、治療費や慰謝料などの賠償金を減額するために早めの症状固定を提案してきているので、安易に治療を止めてしまうのではなく、きちんと医師と相談して症状固定時期を定めるべきです。
4.後遺障害等級認定を受ける
症状固定するまで通院を継続したら、「後遺障害等級認定」を受ける必要があります。
後遺障害等級認定とは、交通事故で残った後遺症について、正式に「後遺障害」と認定し、その内容や程度によって「等級」をつける制度です。
後遺障害には1級から14級まであり、1級がもっとも重く14級がもっとも軽くなっています。
交通事故後何らかの後遺症が残っていても、きちんと後遺障害としての認定を受けて等級がつかなければ、後遺障害慰謝料等の賠償金を受け取ることができません。
認定を受けるためには、加害者の自賠責保険や共済に対して請求します。
事前認定と被害者請求という2種類の手続きがあるので、ケースに応じて適切な方法を選択して進めます。
後遺障害が非該当になった場合(後遺障害がないと判断された場合)や、期待していたよりも等級が低くなってしまった場合には、加害者の自賠責保険や共済に「異議申立(再審査請求)」することも可能です。
それでも後遺障害認定についての判断が変わらない場合、自賠責保険・共済紛争処理機構や訴訟を起こして解決する方法があります。
5.示談交渉
後遺障害等級認定を受けたら、加害者や加害者の保険会社と示談交渉を開始します。
示談交渉では、どのような種類の損害がどのくらい発生しているのかを話合い、過失割合を決定して賠償金額を計算します。
相手と意見が合わないこともありますが、その場合には合意ができるまで粘り強く交渉をします。
なお、示談交渉の際、被害者がご自身で対応されると「任意保険基準」という低額な賠償金計算基準が適用されるので、賠償金が全体として減額されます。
これに対し、弁護士が代理で交渉すると「弁護士・裁判基準」という基準が適用され、賠償金が大きく上がるケースがあります。被害者が交渉していたときと比べて2倍、3倍になるケースもあります。
6.示談成立と賠償金の振り込み
被害者と加害者が示談交渉を進めて合意ができたら、「示談書」を作成します。
示談書には被害者と加害者の双方が署名押印する必要があります。
2通作成して当事者が各1通ずつ取得します。
示談書を取り交わしたら、相手の保険会社から指定した銀行口座宛に速やかに示談金(賠償金)が振り込まれます。
なお、相手が加害者本人の場合、示談書を作成してもきちんと支払わない可能性があるので、入金の有無をしっかりチェックしましょう。
7.調停、ADR、訴訟の利用
示談交渉をしても相手と合意できない場合や、相手が本人で約束通りに賠償金を支払わない場合には、調停やADR、民事訴訟(損害賠償請求訴訟)などの手続きによって相手に賠償金の請求をしなければなりません。
どの方法が最適かについてはケースによっても異なるので、自分で手続選択をしにくい場合、お気軽に弁護士にご相談ください。
これらの手続きを進めて最終的に合意が整った場合や裁判所の判決が出た場合には、決まった内容に従って相手から賠償金を支払ってもらえます。
相手が判決や調停で決まった内容に従わない場合、相手の給料や預貯金、不動産などの資産を差し押さえることも可能です。
以上が交通事故後の基本的な流れです。
山口で交通事故に遭われた場合、弁護士が事故当初から賠償金獲得までサポートいたしますので、よろしければ一度ご相談ください。