税理士法人 ANSIA

新たに店舗を構えたい! 居抜きで開業する際のメリットとデメリット

21.04.30
業種別【飲食業】
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新しい店舗を出す際には、開業にかかる資金をできるだけ低く抑えたいものです。
まず最初に物件を探すときに、前テナントが利用していた造作・設備・什器等が残ったままの『居抜き物件』にするか、いわゆるコンクリート打ち放しの骨組みだけの状態の『スケルトン物件』にするかで悩む人も多いでしょう。
そこで今回は、新店舗を開店する際に一度は検討する居抜き物件のメリットとデメリット、契約について説明します。
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居抜き物件探しは、営業中からリサーチ開始

昨今、コロナ禍の影響により、閉店を余儀なくされている飲食店も多数あり、店舗の空き物件も増えています。
以前にはあまり出回らなかった条件のよい物件に出会えたり、今までそう簡単には手が届かなかった物件が値下がりしているケースもあります。
物件を探している人にとっては、たまたま求めていたような好条件の居抜き物件と出会える可能性が高い時期ともいえるでしょう。

ただし、最初から『飲食店向けの居抜き物件』として借り手を募集しているケースは多くはないため、まだ営業中で退去予定のある店舗を不動産会社に通ってリサーチすることも必要です。
最近では物件探しサイトなどにも居抜き物件の情報はたくさん載っていますので、そちらを参考にするのもよいでしょう。

そして、自分の希望する条件の物件が見つかった場合は、入っているテナントの退去が決まってから、改めて居抜きとして契約可能かどうかを交渉することになります。


最大のメリットは時間と費用が抑えられること

居抜き物件を使った店舗オープンには、多くのメリットがあります。
まず、内装を引き継いだまま営業を開始できるため、内装工事にかかる費用が最小限で済んだり、新たに購入する設備が少なく済んだりするなど、初期費用を安く抑えることができる点です。

また、居抜きの内装工事はスケルトンからの工事に比べてかなり工期を短縮できるため、すぐにでも営業を開始したい場合などにも有効です。
スケルトンから内装をつくる場合は業者と何度も打ち合わせを行う必要がありますが、居抜きであれば大まかなレイアウトや設備が残っているため、店舗のイメージを作りやすいといえます。

一方で、居抜き物件には、いくつかのデメリットもあります。

たとえば、残されている内装や設備を活かした店舗づくりになるため、「一から自分らしい店づくりをしたい」というオーナーには不向きかもしれません。
また、前テナントが残した水回りやキッチンなどの設備をそのまま使うつもりだったのに、想定外に使い勝手が悪く、結局追加で費用がかかってしまうことも考えられます。
テナント契約をする前に、本当に自分が思っているような設備を残した居抜き物件なのか、細かく確認することが大切です。

さらに、前テナントが、あまり評判のよくない店だった場合は一層厄介です。
自分にはなんの落ち度もなかったとしても、以前営業していた店で警察沙汰や騒音などの苦情が相次いでいた場合は、その物件自体に悪印象を持たれていることもあります。
建物の外観的なよさや営業上の都合だけでなく、目に見えない“評判”にも気を向けて決断することが重要です。


居抜き物件に必要な二つの契約

居抜き物件で出店するには、二つの契約が必要になります。
一つは家主と交わす『賃貸借契約』、もう一つは前テナントの持ち主と交わす『造作譲渡契約』もしくは『資産譲渡契約』です。

近年の店舗物件契約書には、『内装譲渡禁止』や『現状回復義務』などの指定がある場合がほとんどで、前テナントの持ち主は店を閉める場合、解約日までにスケルトンの状態に戻す義務があります。
しかし、店舗をスケルトンの状態に戻すには、かなりの解体工事費用がかかります。
前テナントとしては、内装や設備をそのまま店を明け渡せれば解体工事費もかかりませんし、「まだ使える設備を使ってほしい」と考える人も多くいます。
そこで、前テナントと新テナントの持ち主のニーズが合致し、造作内容や金額に折り合いがつけば、前テナントの内装や設備を新しい入居者に無償または有償で譲渡するための造作譲渡契約や資産譲渡契約が行われます

内装や機材を引き継ぐ際は、厨房機器などのリース契約状況に必ず目を通さなければいけません。
店舗に残されている機材のうち、どれがリースで何年の契約が残っているのか、また、機材はきちんと動くのかの確認もしておきましょう。
作動しない機材をそのまま残されるなど、悪質なケースもあります。
初期費用を軽減するために居抜き物件を探したのに、結果的に処分費用などで損をすることのないよう注意が必要です。

初期費用を抑えて短期間で店舗づくりができる居抜き物件は、開業未経験者に適した開店方法といえます。
新規開業を検討しているなら、まずは気になる街や店舗の情報を不動産会社などから集めることからはじめてみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2021年4月現在の法令・情報等に基づいています。