酒井会計事務所

補助金も活用! 新紙幣の発行に伴う店舗への影響と対応策

25.01.07
業種別【飲食業】
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2024年7月から2004年以来20年ぶりとなる新紙幣の発行が始まりました。
すでに新しい1万円札、5,000円札、1,000円札の3種類が流通しており、鉄道の券売機や銀行のATM、スーパーやコンビニエンスストアのレジなどは8~9割以上が新紙幣に対応できる見通しだといわれています。
一方で、券売機を設置している飲食店では、少なくない数の店がまだ新紙幣に対応できていません。
新紙幣を使えるようにするためには、券売機の改修や買い替えが必要になりますが、当然、その分のコストがかかってしまいます。
飲食店における新紙幣の対応について考えます。

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券売機の改修や買い替えにコストが発生する

新紙幣には世界初の3Dホログラムや、すき入れ模様などの高度な偽造防止技術が施されており、これまで以上に偽造が困難になりました。
また、使いやすいユニバーサルデザインが採用されており、目の不自由な方や海外の方でも識別しやすくなっています。

その一方で、紙幣の刷新は飲食店の経営者を悩ませています。
日本銀行は新紙幣について、今の流通量の約5割を2024年度内に印刷するとしており、現在、旧紙幣との入れ替えが進められています。
しばらくは旧紙幣と新紙幣が混在した状況が続き、飲食店では新旧両方の紙幣を取り扱うことになります。
そのため、あるアンケート調査では会計時の混乱やお釣りのトラブルなどに懸念を抱く飲食店の経営者もいました。

そして、何より飲食店にとって大きな負担となるのが、券売機への対応です。
券売機はお客自身が注文と会計を行うため、スタッフの手間がかからず、注文ミスも起こりづらいというメリットがあります。
また、迅速なオペレーションを可能にし、店の回転率を上げることにもつながります。
近年は非接触が推奨されたコロナ禍の影響もあって、大手のチェーン店だけではなく、小規模な個人店でも券売機を導入する店が増えました。
こうした食券システムの飲食店では、新紙幣に対応するために、券売機の改修や買い替えを行う必要があります。

しかし、すでに新紙幣の流通が始まって半年以上が経ちましたが、いまだに対応できていない店も少なくありません。
なぜなら、改修や買い替えには膨大なコストがかかるからです。
券売機を新紙幣に対応させるためには、新紙幣を読み込むことができる部品への交換を行う必要があり、機種によるものの、一般的に1台20~30万円のコストがかかるといわれています。
もし入れ替えを行うのであれば、1台100万円以上かかるケースもあります。
費用面から対応がむずかしい飲食店も多く、調査によれば、食券システムの飲食店のうち、全体の約3割が新紙幣に対応できていないというデータもありました。

2021年11月からは新500円玉が流通していますが、今回のケースと同じく、券売機の改修にコストがかかるため、現在でも未対応のままの飲食店も数多く存在します。

新紙幣に対応しないリスクと使える補助金

券売機が新紙幣に未対応のままだと、顧客離れが起きる可能性があります。
お客が店を選ぶ際には、料理の美味しさや居心地のよさなどのほかに、「利便性」も大切な要素になります。
店の都合で新紙幣が使えないとなれば、お客の利便性を損なうことになり、少なからず悪印象を与えてしまいます。
機会の損失はそのまま売上に響きます。
新紙幣が使える他店にお客を奪われないよう、新紙幣には早急に対応することをおすすめします。

もし、券売機の改修や入れ替えのための予算がなければ、補助金を活用するという方法もあります。
「中小企業省力化投資補助金」は、IoTやロボットなどの省力化製品が対象の新しい公募制の補助金制度で、補助対象としてカタログに登録された省力化製品を最大半額で導入することが可能です。
カタログには複数の券売機が掲載されており、2026年9月末頃まで継続的に公募が行われる予定なので、確認しておきましょう。

各自治体も独自に補助金制度を設定しており、たとえば東京都の北区では券売機の改修や買い替えに伴う費用の一部を補助する制度を設けました。
一部、申請の期限が過ぎているものはありますが、その他にもIT導入補助金をはじめ、さまざまな小規模事業者向けの補助金や助成金が用意されています。

また、この機会にキャッシュレス化も視野に入れましょう。
キャッシュレス決済は3~5%ほどの手数料がかかりますが、モバイルオーダーシステムとあわせて導入することで、比較的リーズナブルに注文・決済といった券売機の機能を代替することもできます。
クレジットカードのほかに、交通系ICやQRコードなど、扱える決済の種類も豊富です。
お客の利便性が向上し、店の評価にもつながるので、導入を検討してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2025年1月現在の法令・情報等に基づいています。