酒井会計事務所

介護施設でSNSガイドラインを作成する際のポイントは?

25.01.07
業種別【介護業】
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近年、X(旧Twitter)、LINE、Instagram、YouTubeなどのSNSは、生活の一部の欠かせないものとして普及しています。
SNSは拡散力が高く誰でも気軽に利用できるツールですので、さまざまな企業が認知度の向上、集客、商品の宣伝などを目的に積極的に活用しています。
介護業界でも、職員や利用者家族への連絡ツールや施設のPR、求人採用など多くの場面で利用されるようになりました。
しかし、SNSは使い方を間違えると大きなトラブルに発展する可能性が高く、介護事業所の運営に支障を来すケースも増加しています。
今回は介護事業所がSNSを利用する際の注意点について解説します。

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介護施設などでも起きうるSNSトラブル

介護施設などにおけるSNSトラブル事例として、主なものに次のようなものがあります。
・職員が不適切な写真や動画をSNSに投稿
例:認知症の利用者に対する暴力やセクハラ、施設内での悪ふざけの動画を投稿
・職員が事業所の不備や違法行為などをSNSに投稿
例:長時間労働の横行、交通違反行為、ハラスメント行為などの行為について投稿
・職員が、利用者、ほかの職員、関係者などの個人情報をSNSへ投稿
例:個人が特定できる写真や書類を本人の同意なく投稿

このようなSNSトラブルにより、事業所は次のような損害を被る可能性があります。
(1)所内の人間関係が悪化する
上司や同僚に対する不満や悪口をSNSに投稿したことが発覚し、事業所内の人間関係に悪影響が出たり、退職につながったりすることがある。
(2)不祥事が発覚し、事業所の評価が下がる
36協定を超えた長時間労働や、介護施設内でのハラスメントをSNSで告発することで事業所の評価が下がるケースがある。
また、職員による不適切な投稿により信用が失墜し、最悪の場合、倒産に追い込まれるケースもある。
(3)個人情報の漏洩により、事業所の信用が失墜する
本人や家族の同意なく、写真や動画で施設内での利用者の様子を無断投稿することは、個人情報の目的外利用として個人情報保護法に違反し、プライバシーの侵害として訴えられることがある。
一度ネット上に個人情報が流出すると、瞬時に世界中に拡散されてしまうため、完全に消去することはむずかしく「デジタルタトゥー」として一生ネット上に残ってしまうリスクがあり、事業所の信用失墜にもつながってしまう。

SNS利用時に事業所が注意するポイント

介護事業所がSNSを利用する際には、以下の3点を意識した防止対策を講じることが効果的です。
(1)SNSガイドラインの策定
(2)SNSガイドラインの周知と職員教育
(3)SNS投稿のチェック体制整備
SNSが身近になりすぎると、どのような投稿がリスクになるのか、個人情報の流出につながるのかなど、ボーダーラインがあいまいとなることがあるため、SNSガイドラインにより明確に示す必要があります。
もちろん、職員への周知徹底や教育も必要となるでしょう。
それでも100%防止できるとは限らないため、チェック体制を整えることも抑止力となります。

このようなSNSトラブルは事業所のアカウントを使用したものだけでなく、当然、個人アカウントから投稿した場合でも発生・炎上するリスクがあります。
個人のプライベートな時間でのSNSで何を投稿しようが自由なものであるため、行動を規制することはできませんが、個人的なSNS投稿であっても、業務に関連し介護事業所にとって不利益な情報が拡散された場合は、事業所の信用失墜につながり、業務へ悪影響を与えかねません。
介護事業所の職員は、労働契約に基づき「誠実義務」と「忠実義務」を負っています。
「誠実義務」とは、労働契約上の債務を忠実に履行し、使用者の正当な利益を侵害しないよう配慮する義務であり、「忠実義務」は、使用者に不当に損害を与えない義務です。
これらには、会社の指示に従い、就業規則などの社内ルールを遵守することや、使用者に不利益をもたらすような行為をしないことが含まれているため、就業規則などに定めた内容を遵守する義務が発生します。
SNS利用時の詳細なルールやプライベートでの私的利用についての注意事項などはSNSガイドラインに定め、就業規則とリンクさせることで職員の自覚を促し、SNSトラブル防止への注意喚起につなげることも可能です。

SNSガイドラインを策定する際は、一般的に次のような項目を定めることになります。
(1)SNSガイドラインの目的、基本方針、適用対象者
(2)SNSの定義
(3)SNSの利用範囲
(4)SNSの管理者選定
(5)SNS投稿時の注意事項、留意点について
(6)SNS投稿の報告義務
(7)SNSトラブル発生時の報告、緊急時の対応について
(8)SNSガイドライン違反時の処分など
(9)個人情報の取り扱いについて
(10)SNSガイドラインの変更・周知
SNSガイドライン策定時には、事業所内で業務中に利用する際の注意事項だけでなく、プライベートな時間に事業所外で利用する際の注意事項についても明記しておくことがポイントです。

介護事業者にとって、SNSを上手に活用することで情報発信の強化、信頼性の向上、集客力の強化、コミュニケーションの活性化などのさまざまなメリットがあります。
ただし、使い方を誤ると一気に炎上する可能性もあります。
SNSガイドラインを策定し、在職中の職員および新入職員へ就業規則とあわせてガイドラインの内容の周知を行い、定期的な教育を実施することで、リスクを軽減しましょう。
今後、さらにDX化は進みSNSの需要も増し続けると予想されていますので、定期的なSNSガイドラインの見直しも検討してください。


※本記事の記載内容は、2025年1月現在の法令・情報等に基づいています。