税理士法人Ambitious

無期労働契約に転換する企業側のメリットと導入方法

22.02.22
ビジネス【労働法】
dummy
2013年に施行された改正労働契約法によって、『無期転換ルール』が定められました。
このルールは、有期契約社員との労働契約が5年を超えて更新された場合、従業員からの申し出があった場合に限り、期間の定めのない『無期労働契約』に転換されるというものです。
従業員にとっては、有期労働契約から無期労働契約に転換することによって安定的に働けると共に、長期的なキャリア形成を図ることができます。
では、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
改正労働契約法における無期転換ルールの詳細と併せて説明します。
dummy
転換の対象となる従業員は?

有期労働契約とは、1年間や6カ月間など期間の定めのある労働契約のことで、主に契約社員やパートタイム、アルバイトの従業員に適用される労働契約です。
労働基準法によって、有期労働契約の期間は最大で原則3年と定められているため、継続して雇用を続けるのであれば、契約を更新することになります。

有期労働契約は、基本的に契約時に決められた給与のままで昇給はせず、また契約更新を打ち切られる可能性があるため、安定して働き続けることができないといわれています。
企業としては、受注していた仕事が完了した場合や打ち切りになった場合、人員に余剰が生じるため、その備えとして有期労働契約を締結しています。

しかし、会社を運営していくうえで、契約社員やアルバイトの存在は大きく、厚生労働省の調査によれば、有期労働契約社員の約3割は通算で5年を超えた更新実績があることがわかっています。
つまり、会社にとって有期労働契約社員の戦力はなくてはならないもので、事業には必要不可欠であるといえるでしょう。

そのような現状を鑑みて、有期労働契約から正社員などの無期労働契約への転換は、適切な雇用関係を維持していくために必要な取り組みであるといえます。

無期転換ルールの対象になるのは、現時点で有期労働契約を締結している契約社員やアルバイトなどの従業員です。
これまでに契約の更新回数が1回以上であることと、有期労働契約の期間が通算で5年を超えていることが挙げられます。
ただし、この5年という期間は同じ使用者との間で締結した契約に限られます。
ほかの会社で有期労働契約社員として働いた実績を合算することはできません。
同一の使用者とは企業単位で定められ、たとえば、都内の本社から地方の支社に異動になった場合は同じ雇用契約なので、通算でカウントします。

これらの条件にあてはまる従業員から無期労働契約への転換の申し入れがあった場合、企業はこれを受諾しなければいけません。
そして、有期労働契約が終了した翌日から、無期労働契約に転換されます。
無期労働契約に転換されても就業規則などに特に定めがなければ、労働条件は従前と同じになります。


企業側にはどんなメリットがある?

無期労働契約への転換は、企業にとって2つのメリットがあります。
一つめは、能力と意欲のある従業員を安定して確保できるということです。
すでに5年以上、有期労働契約で働いているということは、その従業員が現在の職場環境になじみ、戦力にもなっている証拠です。
また、無期労働契約への転換を求めるということは、会社への貢献意欲・労働意欲が高いからにほかなりません。
やる気のある従業員は、人材不足の現在において、ぜひとも確保しておきたい存在といえるでしょう。

もう一つのメリットは、長期的な人材戦略を立てやすくなることです。
有期労働契約の場合は定期的に契約更新があり、いつまで勤務を続けてもらえるかわからない状態です。
その点、無期労働契約で働いている従業員であれば、長期的な視点での教育が可能です。
人材育成を考えるうえでも、無期労働契約への転換は有効といえます。

さらに、無期転換を行うことにより、国から支給される助成金があります。
企業内でのキャリアアップ促進を目的とした『キャリアアップ助成金』では、無期転換を行った場合、事業者に対して一定の額が支給される『正社員化コース』があります。

申し出のあるなしに関わらず、企業側も有期社員の就労実態を調査したり、社内の業務を整理したりするなど、転換に備えておく必要があります。
実態を把握しておけば、いざ申し入れがあった場合に、スムーズに対応することができます。

有期労働契約から無期労働契約への転換は、有期契約社員の労働意欲の向上にも有効です。
有期労働契約の従業員と積極的にコミュニケーションを取り、企業と従業員の両方にとってよい方向に進むような雇用関係を構築していきましょう。


※本記事の記載内容は、2022年2月現在の法令・情報等に基づいています。