税理士法人Ambitious

不動産の売買や相続に必要な『登記原因証明情報』とは?

25.11.04
業種別【不動産業(登記)】
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不動産の名義を変更するための登記申請手続きには、さまざまな書類が必要になります。
そのうちの一つが、不動産登記法第61条に定められている「登記原因証明情報」です。
登記原因証明情報は、登記が必要になった理由を公的に証明、公的かつ根拠となる重要な書類です。
書類には、不動産の所有権が移る際、それが売買、それとも相続や贈与によるものなのかを、法務局の登記官に明確に説明するための情報が記載されています。
不動産の売買や相続に関する登記を行う際に必要な「登記原因証明情報」について解説します。

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登記申請時に提出する登記原因証明情報

不動産の登記は、誰がその不動産の所有者なのか、どのような権利が設定されているのかといった情報を公示し、取引の安全を守るための重要な制度です。
そして、登記簿の内容を変更する登記申請を行う際には、「なぜその変更が必要なのか」という理由を証明する「登記原因証明情報」が必要になります。

たとえば、不動産の所有者が変わる所有権移転登記の場合は、なぜ所有者が変わるのか、その原因(登記原因)が売買なのか、相続なのか、贈与なのかを証明する登記原因証明情報を登記所に提出しなければいけません。
登記官は、提出された登記原因証明情報の内容と、申請書に記載された登記原因が一致しているか慎重に確認し、登記手続きを進めます。

この書類は、不動産登記の正確性を担保し、不正な登記申請を防ぐ役割を担っています。
登記原因証明情報は、不動産取引の安全性を守るための重要な書類といえるでしょう。

「既存文書活用型」と「報告形式」の2種類

登記原因証明情報は、大きく「既存文書活用型」と「報告形式」の2種類に分けられます。

既存文書活用型は、登記の原因となった取引や出来事を証明する既存の書類をそのまま登記原因証明情報として利用するケースを指します。
たとえば、不動産の売買であれば「売買契約書」、贈与であれば「贈与契約書」などがこれに該当します。
これらの書類には、登記原因となる事実や当事者の意思表示、権利関係の変動が具体的に記載されているため、それ自体が登記原因を証明する情報となります。
つまり、既存文書活用型の場合は、新たに書類を作成する必要がなく、既に存在する契約書などをそのまま提出することができるのです。

一方、「報告形式」は、登記の原因となる事実を「報告書」という形でまとめた書類を登記のためだけに新規作成します。
契約書そのものを法務局に提出したくない場合や契約書だけでは登記原因が十分に説明できない場合などに使われます。
特に、報告形式は司法書士が登記手続きを代理で行う場合にもよく使われ、一般的には売買契約書や贈与契約書が手元にあったとしても、それらの書類を元に司法書士が報告形式の登記原因証明情報を作成することになります。

報告書作成を専門家に依頼したほうがよい理由

報告形式の登記原因証明情報は、登記義務者(売買の場合:売主、贈与の場合:贈与者)が作成します。
作成する場合は、法務局や各自治体のホームページで、見本やひな型を参照し、様式に沿って、「当事者情報」「登記の目的」「不動産の表示」「登記の原因と日付」「経緯」などを記載していくことになります。

登記義務者でも作成することのできる報告形式の登記原因証明情報ですが、この報告書は登記官が登記の可否を判断するうえでの重要な根拠となるため、内容に不備があった場合、登記申請が却下される可能性が高くなります。
売買契約日や当事者の氏名、不動産の表示などに間違いがあったり、事実と異なる内容を記載したりすることは絶対に避けなければなりません。
また、経緯の説明が不十分だと、登記官から補正を求められ、手続きが遅れる原因にもなります。

自分で作成する際は法務局の相談窓口を利用して、記載内容に間違いがないか事前に確認することをおすすめします。
ただし、個別の案件について具体的なアドバイスを求めることはむずかしいため、あくまで記載方法の確認にとどまることが多いのが実情です。

確実なのは、やはり専門家である司法書士に依頼する方法です。
司法書士は登記原因となる事実関係を正確に把握し、法務局の登記官が納得できるような適切な報告書を作成してくれますし、登記原因証明情報だけでなく、登記申請手続き全体を代行してくれるため、登録手続きがよくわからない場合でも安心して依頼できます。

登記手続きは事案によっては法務局とのやり取りが複雑になるケースもあります。
特に、法的知識が不可欠なケースでは、司法書士に依頼するメリットが非常に大きいといえるでしょう。

不動産登記の手続きを正確に行ううえで、登記原因証明情報は登記の根拠を証明する書類として、非常に重要な役割を果たします。
不動産登記の手続きをスムーズに進めるためにも、登記原因証明情報の重要性を理解し、必要に応じて専門家のサポートを受けることも検討しましょう。


※本記事の記載内容は、2025年11月現在の法令・情報等に基づいています。