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歯科医院の倒産が過去最多! 生き残るための口コミ&SNS戦略

25.11.04
業種別【歯科医業】
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2024年の歯科医院の倒産件数は、過去最多を記録しました。
全国に約6万7,000軒ある歯科医院は、まさに飽和状態にあり、競合がひしめく厳しい状況となっています。
この激しい競争のなかで生き残るためには、よい治療を提供するのはもちろん、多くの患者に長く通ってもらうための「選ばれる理由」をつくる必要があります。
その選ばれる理由をつくるためのカギとなるのが、口コミサイトやSNSです。
直面する厳しい現状を乗り越えながら、口コミやSNSを活用して集患するための戦略を解説します。

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倒産件数増加の背景と口コミ&SNSの有用性

2024年における歯科医院の倒産は、過去最多となる27件でした。
さらに、2025年は昨年の倒産件数を上回るペースともいわれています。

この背景には、全国的に歯科医院が多すぎるという問題があります。
全国に約6万7,000軒と、コンビニエンスストアの数よりも多いといわれる歯科医院は、まさに「飽和状態」です。
多くの地域で患者の数が頭打ちになる一方で、新しい医院が開業し、既存の医院との間で激しい競争が繰り広げられています。

厳しい経営環境のなかで、ただ漫然と診療を続けているだけでは、いずれ経営に行き詰まってしまうリスクが高まっていきます。
飽和状態の歯科業界で生き残るためには、患者から選ばれる「魅力的な医院」になることが不可欠であり、そのための強力なツールが口コミサイトやSNSだといえるでしょう。

患者が歯科医院を選ぶ際、多くの人がインターネットで検索し、いくつかの候補を比較検討します。
このとき、GoogleマップやEPARK歯科などの口コミサイトに書かれた内容は、患者の意思決定に大きな影響を与えます。
ポジティブな口コミが多ければ多いほど、その医院に対する信頼感は高まり、新規の患者を引き寄せる力になります。

また、SNSは医院の日常やスタッフの人柄、院内の雰囲気を伝えるための絶好のツールとなります。
たとえば、スタッフの笑顔や、治療機器の説明、日々の出来事を写真や動画で投稿することで、患者は医院に対して親近感を抱き、安心感を覚えます。
歯の健康に関する有益な情報を発信することで、「この医院は専門知識が豊富で信頼できる」という印象を与えることもできるでしょう。

ステマに注意! 合法的に口コミを増やす方法

口コミの重要性を理解すると、つい「患者さんによい口コミを書いてもらいたい」と願う気持ちが強くなるかもしれません。
しかし、安易に「よい口コミを書いてくれたら割引します」といった特典をつけたり、「口コミ投稿をお願いします」と直接的に依頼したりすることは、いわゆる「ステルスマーケティング(ステマ)」に該当する可能性があります。
ステマとは、広告であるにもかかわらず、広告であることを隠して宣伝や口コミを発信する行為のことです。
このステマは、2023年10月1日から、景品表示法により規制され、事業者が対価を払ってよい口コミを書かせた場合、その事実を明示していないと違反となります。
違反時は、消費者庁から措置命令の対象になる可能性もあります。

実際に、2025年3月には都内の歯科医院が患者に対し、割引などと引き換えに、高評価の口コミを書き込むよう依頼して、消費者庁から措置命令を受けました。
ステマの事実が明らかになれば、当然、医院の信用を大きく損なうことになります。

では、ステマにならずに、自然な形でポジティブな口コミやSNS投稿を増やすにはどうすればよいのでしょうか。
まず、大前提として、質の高い治療とホスピタリティあふれる接遇を心がけましょう。
患者はただ治療を受けるだけでなく、「どれだけ快適に、安心して過ごせたか」という体験を重視します。
丁寧なカウンセリング、痛みの少ない治療、清潔感のある院内、そしてスタッフ一人ひとりの温かい対応が、患者の満足度を高めます。

そのうえで「ありがとう」という気持ちを抱いてもらうための工夫を凝らしましょう。
たとえば、治療後に「今日はありがとうございました。何かご不明な点はありませんか?」と声をかけたり、定期検診の案内を郵送したり、些細なことでも気遣う姿勢を見せることで、相手にはポジティブな感情が生まれ、自然と「誰かにこのことを伝えたい」という行動につながります。

ほかにも、医院の公式SNSで、患者から寄せられた感謝のメッセージやエピソードを紹介することで、ほかの患者の投稿を促すことができます。
また、院内にフォトスポットを設置したり、オリジナルのハッシュタグをつくって掲示したりすることも、投稿のきっかけになります。

患者からの信頼と共感を得ることのできた歯科医院は、競合が近くに増えたとしても、揺るぎないファン層に支えられ、長期的に安定した経営を実現できます。
歯科医院にとって厳しい時代を乗り越えるために、口コミサイトやSNSの活用を検討してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2025年11月現在の法令・情報等に基づいています。