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悪質な投稿に損害賠償は請求できる? 発信者情報開示のやり方

24.10.08
ビジネス【企業法務】
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インターネット上でユーザーがクチコミを自由に投稿できるサービスが普及し、日々の生活に欠かせなくなっている一方、悪質なクチコミ投稿をめぐるトラブルが増加しています。
とりわけ昨今はクチコミを頼りにお店を選ぶ人も多く、悪質な投稿が与える影響はこれまで以上に大きくなっています。
今回は、どのような投稿が名誉毀損にあたるのか、また名誉毀損にあたる投稿があったときの対応方法を説明します。

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名誉毀損的投稿に該当する内容とは

2024年5月、「Google Map(グーグルマップ)」に投稿されたクチコミによって名誉を毀損されたとして、兵庫県の眼科医院の院長が投稿者に賠償などを求め、大阪地方裁判所が投稿者に記事の削除と200万円の支払いを命じる判決を下しました。
報道によると、投稿者は約3年前に「グーグルマップ」上で、当該の眼科医院に対して「勝手に目にレンズを入れられた」「勝手に一重まぶたにされた」などと書き込んだとされています。
この眼科医院以外にも同様の事例は発生しており、2024年4月には、「グーグルマップ」のクチコミに不当な内容が投稿されても削除してもらえなかったとして、都内の医師などがグーグル合同会社に損害賠償を求める訴えを起こすなど、悪質なクチコミ投稿への対応が定期的に話題になっています。

兵庫県の眼科医院の例は、クチコミの内容が名誉毀損にあたると判断されたケースでした。
では、どのような投稿が名誉毀損にあたるのでしょうか?
刑法230条には、名誉毀損について「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する」と規定されています。
つまり、真実かどうかにかかわらず、具体的な内容を含んだコメントで、その内容が他者の社会的な評価を低下させる場合には、名誉毀損が認められる可能性が高いといえます。
「具体的な内容」は、今回の例でいうと「勝手に目にレンズを入れられた」「勝手に一重まぶたにされた」といった箇所が該当し、ほかのケースでは「不倫をしている」「逮捕されたことがある」といった内容が該当します。
なお、具体的な内容を伴わない暴言などは、名誉毀損ではなく、侮辱罪に該当すると考えられます。

インターネット上のクチコミサイトやSNSは、実名ではなく、ニックネームや匿名で投稿できることがほとんどです。
しかし、実名以外の投稿であっても、名誉毀損罪や侮辱罪に該当する場合は損害賠償を請求できる可能性があり、そのためには「発信者情報開示請求」の手続が必要になります。

発信者を特定する発信者情報開示請求

「発信者情報開示請求」とは、インターネット上の誹謗中傷などによって権利侵害を受けた場合、被害者がサイトの運営者やインターネットサービスプロバイダに対して、発信者の情報開示を求めることができる手続のことです。
開示対象となる情報には、氏名や住所、メールアドレスなど、発信者の特定につながるものが含まれます。
被害者は、これらの情報を基にして発信者を特定した後で、発信者への対応を検討します。
なお、「発信者情報開示請求」を行うにあたっては、情報開示を求める正当な理由が必要です。
「損害賠償請求をする」など法的手段をとるために本人を特定する場合は問題ありませんが、私的制裁などが目的で「単に発信者を特定したい」といった理由では認められない可能性が高いので、注意しましょう。

多くの場合、「発信者情報開示請求」には、(1)サイト運営者に対する発信者情報開示の仮処分の申し立て、そして(2)インターネットサービスプロバイダに対する情報開示請求という2つの手続があります。
(1)は、悪質な内容が投稿されたWebサイトなどの管理者に対して行うもので、仮処分が出たら、発信者のIPアドレスなどの情報が開示されます。
そして、開示されたIPアドレスから発信者が利用しているインターネットサービスプロバイダを特定し、(2)でインターネットサービスプロバイダに対して、発信者の契約者情報(氏名や住所など)の開示を求めるという流れになります。
2022年10月には「改正プロバイダ責任制限法」が施行され、「発信者情報開示請求」に代わる「発信者情報開示命令」という非訟手続が新設されました。
これは、(1)(2)の手続を同時に行うことができるもので、発信者の特定に至るまでの時間を大きく短縮する効果が期待されています。
いずれの手段でも、被害者は発信者を特定した後、最終的には発信者に対して損害賠償請求や刑事告訴などの法的措置を検討することになります。

冒頭でも述べた通り、インターネット上でのクチコミの存在感が増している昨今、悪質な投稿を放置することは事業に悪影響を及ぼしかねません。
しかし、個人や一企業で対応できる範囲には限度もあります。
もし名誉毀損に該当するような投稿を発見した場合は、その分野に詳しい専門家に相談のうえ、しかるべき対応を検討することをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2024年10月現在の法令・情報等に基づいています。