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『ワンオペ営業』でもスムーズに店を回すためのポイント

25.08.05
業種別【飲食業】
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オーナーだけで仕入れから調理、接客、会計、清掃までのすべてを行う飲食店の営業形態を「ワンオペ営業」と呼びます。
一人で店を切り盛りするのは一見大変そうですが、適切な準備と工夫次第でスムーズな営業も可能です。
また、ワンオペ営業は人件費を大幅に削減できるという大きなメリットがあります。
しかし、同時に、時間管理や体力的な負担などの課題も伴います。
こうしたワンオペ営業のメリットとデメリットを掘り下げ、ワンオペでもスムーズに店を回すためのポイントを紹介します。

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人件費の削減や裁量の最大化などがメリット

「ワンオペ営業」とは、文字通り一人(ワン)のオペレーター(オペ)が店舗のすべての業務を担う営業形態のことで、飲食店においては、主にオーナーだけであらゆる業務を行う個人店のことを指します。
小規模なカフェ、バー、ラーメン店など、個人店のワンオペ営業は初期投資を抑えたい店や新規開業したばかりの店、特定の時間帯のみ客足が集中する店などでよく見られます。

ワンオペ営業の最大のメリットは、複数のスタッフを雇うことによるコストや手間を大幅に削減できる点にあります。
固定費の大部分を占める人件費を減らすことができれば、経営安定化の大きな強みとなりますし、削減できた分は食材のグレードアップや内装への投資など、経営の柔軟性を高めることに使うことも可能です。

また、自身の裁量を最大限に活かせるというのもメリットの一つです。
すべての業務を一人で行うため、自分のこだわりやビジョンを直接お客に伝えることができます。
調理から接客、店の雰囲気づくりまで、他者の意図を挟むことなく、すべてを思い通りにコントロールできるのは、飲食店経営の醍醐味の一つといえるでしょう。

さらに、従業員の教育やマネジメントの手間がなくなることも大きな利点です。
スタッフの採用、研修、シフト管理、トラブル対応など、多人数雇用で発生する複雑な業務から解放されることにより、メニュー開発やマーケティング、お客へのサービス提供に注力することができます。

ワンオペ営業で生じるリスクを回避するには

一方で、ワンオペ営業によるデメリットも決して無視できません。
ワンオペ営業はオーナーだけで調理、配膳、接客、会計、清掃といった肉体労働をこなし、さらには仕入れ、在庫管理、メニュー開発、SNS運用といった事務作業も一人で行う必要があります。
すべてを一人で行うため、その肉体的、精神的な負担は計り知れません。
どうしても長時間労働になりやすく、疲労が蓄積し、体調を崩すリスクも高まります。

また、お客が集中するピーク時には、料理の提供が遅れたり、接客がおろそかになったりするなど、サービスの維持がむずかしくなる可能性もあります。
一人で同時に複数の作業を完璧に行なうことは容易ではなく、お客を待たせたり、十分なコミュニケーションが取れなかったりすることで、顧客満足度が低下するおそれがあります。
店内トラブルなど、緊急時の対応も一人ではむずかしいでしょう。

こうしたリスクを最大限減らすには、徹底した事前準備と効率化が必要になります。
特にワンオペ営業では、効率的な店舗レイアウトがとても重要です。
キッチンと客席の距離をできるだけ近づけ、動線を最短にすることを意識しましょう。
カウンター席をメインにし、料理の提供や片づけをスムーズに行える設計が理想です。
食器や調理器具も、手を伸ばせばすぐに取れる位置に収納します。
客席数は、一人で管理できる範囲に絞り込みます。
欲張って席数を増やしすぎると、ピーク時に対応しきれなくなるため注意が必要です。
このような効率的な店舗レイアウトは無駄な動きをなくし、時間と体力の消耗を抑えます。

また、セルフサービスの導入もおすすめします。
水やおしぼり、調味料などはセルフサービスとしてお客にお任せしたり、返却口を設置したりすれば、配膳や片づけの手間を減らすことができます。
注文システムは、口頭よりもタブレットオーダーやQRコードオーダーなど、お客自身が操作できるものを導入しましょう。
これにより、注文を聞きに行く手間やオーダーミスのリスクを減らせます。

何よりワンオペ営業では、メニュー設計が店舗運営の効率を大きく左右します。
複雑なメニューや調理に時間のかかるメニューは避けるべきです。
調理工程がシンプルで提供時間が短いメニューを中心に構成し、できれば注文後に温めるだけ、盛りつけるだけで完成するようなメニューが理想です。
そのためには、調理の事前準備(仕込み)を徹底的に行いましょう。
営業中に提供する料理のほとんどを営業前に仕込んでおくことで、一人でもスムーズに店を切り盛りすることが可能です。

ワンオペ営業はリスクが大きい一方で、自身のこだわりが凝縮された唯一無二の店をつくりあげるチャンスでもあります。
これから新規開業するのであれば、メリットとデメリットをよく理解し、十分に検討したうえで判断しましょう。


※本記事の記載内容は、2025年8月現在の法令・情報等に基づいています。