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『小児矯正』の重要性を保護者に理解してもらう方法

25.08.05
業種別【歯科医業】
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一般的に、6歳から12歳頃までの永久歯が生えそろうまでの期間に行われる「小児矯正」は、成長期にある子どもの歯並びや顎骨のバランスを整えるためのものです。
早期から歯科医師が介入することにより、単に歯並びをきれいにするだけでなく、子どもの将来的な虫歯や歯周病のリスクを低減する効果もあります。
しかし、「もう少し大きくなってからでもよいのでは?」と考える保護者は少なくありません。
小児矯正のメリットと、早期介入の必要性を保護者に伝えるためのポイントについて解説します。

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小児矯正のメリットを保護者にアピールする

子どもの歯科矯正は、主に乳歯と永久歯が混在する「混合歯列期」に行われる「1期治療」と、永久歯が生えそろってから行われる「2期治療」があります。
症状にもよりますが、1期治療では骨の成長を利用してベースとなる治療を、2期治療で最終的な治療を行い、歯並びを整えていきます。
つまり、1期治療は、将来的な正しい噛み合わせの土台を築くための治療といえるでしょう。

永久歯が生えそろってから初めて行う矯正治療(成人矯正)では、抜歯が必要になったり、外科手術を伴うような大がかりな治療が必要になったりするケースもあり、患者への負担が増す懸念があります。
子どもの成長の力を利用し、最小限の負担で治療が進められる小児矯正は、歯科医師が積極的に推奨すべき治療といえます。

また、小児矯正には将来的な抜歯のリスクを減らす以外にも、不正咬合の悪化を防ぐというメリットもあります。
たとえば、受け口(下顎前突)や出っ歯(上顎前突)など、上下の顎骨のバランスが悪いままで放置すると、成長と共にさらに不正咬合が悪化するかもしれません。
小児矯正では、不正咬合の進行を食い止め、軽度な状態で改善を図ることができます。

ほかにも、小児矯正には子どもの口腔機能の改善や、虫歯および歯周病のリスクの低減などのメリットもあります。
小児矯正を行うことで得られるこうしたさまざまなメリットについては、歯科医師側から治療の必要な子どもを持つ保護者にアピールしていかなければなりません。

保護者と連携しながら治療計画を進めていく

小児矯正は、歯科医師と保護者が連携しながら、粘り強く子どもと向き合っていく必要があります。
そのためには、保護者に自身の役割を把握してもらうことが重要になります。

子どもにとって、矯正装置をつけることや定期的に通院することは、少なからず負担になります。
保護者が子どもに治療の目的や効果を繰り返し伝え、励ますことで、子どものモチベーションを高く保つことができます。

また、装置の管理と口腔ケアの徹底も保護者の役目です。
取り外し式の装置の場合、毎日きちんと装着しているか、清潔に保てているかの確認が必要となります。
固定式の装置の場合でも、装置の周りは食べかすが残りやすく、虫歯になりやすいので、普段以上に丁寧な歯磨きが必要です。
保護者が子どもと一緒に正しい歯磨き方法を確認したり、仕上げ磨きをしてあげたりすることが重要です。

さらに、定期的な通院の継続も大切です。
小児矯正は短期間で終わるものではなく、数カ月に一度のペースで、数年間にわたって通院が必要になります。
治療計画通りに進めるためには、決められた日時に通院できるよう、保護者が計画を把握しておかなければなりません。

こうした保護者によるサポート体制を構築するには、歯科医師がしっかりと保護者に役割を伝え、理解と協力を求める必要があります。
そもそも保護者が小児矯正に疑問を持っているのであれば、「今なら抜歯せずに済む可能性が高まります」「将来的な大がかりな治療を回避できます」といった具体的なメリットを丁寧に説明し、具体的な治療のプロセスもわかりやすく伝えましょう。

保護者のなかには、矯正治療に対して漠然とした不安を抱いている人も少なくありません。
「どのような装置を使うのか」「治療期間はどのくらいか」「費用はどのくらいかかるのか」といった具体的な情報を、専門用語を避け、かみ砕いた言葉で説明することで、安心してもらえますし、写真や模型などの視覚的な資料を用いて説明すると、より理解を深めてもらえるでしょう。

小児矯正は、子どもの健やかな成長と口腔内の健康にとって、非常に重要な役割を担っており、歯科医師と保護者が協力し合うことで、初めて最大限の効果を発揮します。
そのためには、丁寧な説明と保護者の気持ちに寄り添う姿勢が何よりも大切です。


※本記事の記載内容は、2025年8月現在の法令・情報等に基づいています。